最近気になる放送用語

「5時ころ」?「5時ごろ」?

「頃」という漢字は字幕スーパーでは使わないことになっていますが、ではひらがなで「ころ」と書けばよいのでしょうか。

「その頃」は「そのころ」と書きますが、「5時頃」は「5時ごろ」と濁点を付けることになっています。その部分を[コロ]と発音するのか、[コ゚ロ]と発音するのかによって、きちんと書き分けるようにしてください。

解説

あることばとことばが複合したときに、一部が濁った音(濁音)に変わることがあります。これを「連濁」と言います。たとえば次のようなものです。

  • ヒナン(避難)+ハシゴ(梯子)=ヒナンシゴ
  • タチ(裁ち) +ハサミ(鋏) =タチサミ
  • カイテン(回転)+スシ(寿司)=カイテン
  • ナマ(生)  +カキ(牡蠣) =ナマカ゚

そしてこれらを文字で書く場合には、放送では「梯子」「鋏」「寿司」「牡蠣」という漢字は使わないことになっているので、

  • 避難ばしご
  • 裁ちばさみ
  • 回転ずし
  • 生がき

となります。発音に従って書き表すのが基本です。

『NHK新用字用語辞典(第3版)』で「ハシゴ」「ハサミ(鋏)」「スシ」「カキ(牡蠣)」を引くと、漢字ではなくひらがなで「はしご」「はさみ」「すし」「かき」と書くように示されています。これはあくまでこれらのことばを単独で使う場合のことであって、複合語で「避難はしご」「裁ちはさみ」「回転すし」「生かき」のように書くのは、好ましくありません。

「頃」については、『NHK新用字用語辞典』に「ころ」と「ごろ」の両方の項目を立ててあります。「5時頃」を[ゴジコロ]と発音する人もいるようですが、少なくとも現時点では[ゴジコ゚ロ]という発音が最も一般的なものと考えられるので、字幕スーパーで書く場合にも「5時ごろ」と書くことをおすすめします。「5日(いつか)ごろ」「5月ごろ」「平成5年ごろ」なども同じです。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)