最近気になる放送用語

「鶏肉」はケイニク? トリニク?

「鶏肉」ということばは、ケイニクと読むのでしょうか、あるいはトリニクと読むのでしょうか。

やや厳しい基準で言えば、ケイニクと読むことになります。しかし現実にはトリニクと読む人も多く、この読み方も放送で用いてよいことになっています。

解説

漢字の使い方の基準・目安として、「常用漢字表」というものが国で定められています。これによると、「鶏」という漢字の読み方としては、「ケイ」という音読みと、「にわとり」という訓読みの2つしか認められていません。そのため、「鶏肉」を読む場合には「ケイニク」となるのです(「にわとりニク」ということばはないですよね)。

放送では、つい最近までこの方針を忠実に守り、トリニクを漢字で書く場合には「鳥肉」とすることになっていました。

しかし実際の店頭では、「鶏肉」と表示されてそれを多くの人がトリニクと読んでいるのではないでしょうか。

そのため、マスコミ各社(新聞・放送)では平成13年から14年にかけて、漢字「鶏」に新たに「とり」という読みを加えることにしました(『放送研究と調査』2002年2月号参照)。これによって、トリニクということばを書くときに「鶏肉」という漢字で書くこともできるようになりました。

なお、トリニクということばは東日本ではよく使われていますが、西日本ではカシワという言い方が優勢です。トリニク地帯(東日本)では「鶏肉」という文字を「トリニク」と読む人が大半ですが、カシワ地帯(西日本)では「ケイニク」と読む人もかなり多いことが、インターネットを用いた調査で明らかになっています(『NHK放送文化研究所年報2006』参照)。これは、トリニクということばをふだん使う人は、「鶏肉」という漢字を見ても(ケイニクではなく)トリニクと読む割合が高い、ということによるものでしょう。

「鶏肉」をトリニクと読んでもかまわないのは、あくまでもマスコミでの取り決めです。一般的に試験問題の採点基準というのは国の定めたものに従うことも多く、漢字の「読み」の試験で「鶏肉」が出た場合には、注意が必要です。「トリニク」と回答してバツになっても、われわれとしては責任をトリニクいので、くれぐれもお気を付けください。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)