最近気になる放送用語

「~ざるをえない」

「行かざるえない」と「行かざるえない」のどちらが正しいのでしょうか。

「行かざるえない」です。

解説

これは、知っている人にとっては「そんなことは当たり前だ」と感じることでしょう。しかし、放送の字幕でも間違いが見受けられることがあるようなので、今回あえて取りあげてみました。

「行かざるをえない」は、

○ 行かざる - を / 得(え)ない

というように成り立っています。「行かないということをできない」つまり「行かないわけにはいかない」という意味です。

しかし、このように分解せずに、

× 行かざる  / おえない

という形で誤解してしまっている人がいるようです(この場合の「おえない」は、「負えない」あるいは「終えない」ということばだと解釈しているのでしょうか? よくわかりません)。

よく似たものとして、「しかたがない」という意味の「やむをえない(止(や)むを得(え)ない)」を、誤って「やむおえない」と書いてしまう例があります。

○ やむ - を / えない
× やむ  /  おえない

なお放送では、「土地を得る・地位を得る」などのように「実際に入手する」という場合には「得る」という漢字表記を用いますが、このように「~できる/できない」という意味の場合には、なるべくひらがな書きすることになっています。そのため「~ざるをえない」「やむをえない」という書き表し方になります。

「忙しいから間違えてもやむおえない」などと言わずに、ふだんから気を付けてみてください。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)