発掘ニュース

No.234

2019.06.07

スポーツ

『くらし☆解説』に発掘登場!「ラグビー名勝負」

新たに『発掘』が番組で取り上げられました!総合テレビ 毎週火曜~金曜まで午前10時5分から放送している『くらし☆解説』(くらし キラリ かいせつ)です。

この番組のコンセプトは、10分間でニュースをわかりやすく、暮らしが“きらり”と輝く解説番組。この日のテーマは…

発掘ニュースでもご紹介した「新日鉄釜石7連覇の中継映像」をはじめ、ラグビーの名勝負が続々と発掘されているというニュースです。

解説したのは西川龍一(にしがわ りゅういち)解説委員。社会部の記者出身で解説委員としての担当分野は、教育・地方自治・社会。…あれ、スポーツが入っていません。

実はこちら!

西川解説委員はラガーマン!しかもレフリーの資格(関東ラグビー協会公認B級レフリー)を持ち、週末はジュニアから学生や社会人の試合までレフリーとして活躍しています。
これまでも「ラグビーW杯イヤー ラグビー通じ障害者スポーツを」「ラグビーでアジアの支援を」などラグビーに関する解説を担当しています。

その西川解説委員による『くらし☆解説』、ご紹介しましょう!

「日本選手権7連覇を達成した新日鉄釜石。岩手県釜石市が本拠地で、北の鉄人といわれました。当時ラグビーの日本選手権は、成人の日だった1月15日に社会人と学生が日本一をかけて対戦する方式で、成人の日の風物詩でした。新日鉄釜石は、1979年から85年まで前人未到の7連覇、すべてNHKが生中継で放送しました。ところがこの試合の中継映像、いずれもNHKに残っていなかったのです。その映像を今回、NHKの過去の番組映像を探そうという『NHK番組発掘プロジェクト』が探し出しました。」

★発掘映像を、西川解説委員の視点で解説!

「連覇の始まりは、1979年の大会から。ボールは今と違って革製。国立競技場は芝のグラウンドですが、この時期になると芝が傷んでほとんど土のようでした。」

「新日鉄釜石の相手は学生王者の日本体育大学。日体大には、今の帝京大学監督、大学選手権9連覇の岩出雅之さんが選手として出場していました。」

随所に西川解説委員ならではの、映像から読み解く“ラグビーお宝情報”が盛り込まれます。

「こちらは4連覇を達成した1982年の明治大学との試合。国立競技場のスタンドの様子を見てください。当時は消防法の規制が緩かったこともあって、通路までぎっしり。この試合の入場者は6万5千人ほどに達したといわれています。」

「釜石ファンにとっては、日本代表としても活躍した“ひげ森”こと森重隆選手兼監督の引退試合となったことで印象深い試合です。」

「そして7連覇を達成した1985年の対同志社大学戦。フォワード・バックス一体となってボールをつなぎ続ける釜石らしいプレイスタイルが随所に見られる好ゲーム。ラグビー界のスター選手としてチームを引っ張り続けた松尾雄治さんは、この試合で引退しました。」

★『番組発掘』を“きらり”解説!

「ところで、中継したテレビ局に映像が残ってないというのは何故なのでしょう?」
「残念ながら、当時はまだ番組を保存することの重要性があまり認識されていませんでした。NHKが番組の保存に体系的に取り組み始めたのは、1981年からのことです。さらにスポーツの中継は、基本的に生放送。ニュース映像を残しても試合の様子をまるごと保存するということは1990年ごろまでほとんど行われていなかったということです。」


ベータ方式のビデオテープで発掘された「7連覇」

「そこで頼ったのが、ご家庭に残されているビデオテープです。1975年にベータ方式の家庭用ビデオデッキが発売されたのをきっかけに、個人が番組を録画して楽しむことが広がりました。こうした録画の中に、NHKに残されていない貴重なものがあるのではと考えたわけです。過去の番組を見つける『NHK番組発掘プロジェクト』は、視聴者や出演者、番組関係者の協力によってこれまで大河ドラマや人形劇などの録画の提供を受けてきました。間近に迫ったラグビーワールドカップの開催などを機に、スポーツにも裾野を広げようというわけです。」

ラグビーの他にもテニス、サッカー、体操、柔道、さらには聖火リレーの映像まで、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けてもスポーツ関連の発掘に力を入れています。

★伝説の7連覇の軌跡、そのビデオを持っていたのは…?

「7連覇の全試合に出場した千田美智仁さんです。日本代表のフォワードとして数々のテストマッチに出場、ラグビーワールドカップ第1回大会にも呼ばれた名選手です。千田さんのお父さんが録画したものが、自宅のタンスの上に置かれたままになっていたそうです。」

西川解説委員はNHK仙台放送局勤務時代、地元のラグビーチームに所属。なんとそのチームには千田さんが!同じグラウンドで、チームメイトとして一緒にプレーしたそうです。

★国内最古のラグビー中継映像?!

今回見つかったラグビーの中継映像の中には、さらに貴重なものがありました。

「白黒の随分古い映像ですね?」
「テレビの本放送が始まって5年後の1958年2月、秩父宮ラグビー場で行われたニュージーランド対オール早稲田大学の試合の中継映像です。」
「そんなに前からラグビーの中継って行われていたんですね?」
「記録では、テレビの実験放送が行われた1952年の大学ラグビーの早稲田対明治の試合がラグビー中継の始まりとみられています。もちろんビデオなどありませんから映像は残っていません。」

「この映像は、放送画面を16ミリフィルムで撮影する方法で保存していたということです。国内の試合で現存するもっとも古いラグビー中継映像の可能性が高いんです。」

実況を聞いてみると…

“18番はミーズであります。ニュージーランドでも一番大柄な選手でありまして、6尺3寸4分、26貫900、たまったものではありません”
「紹介されている選手は、ニュージーランドで最も尊敬されるレジェンドのコリン・ミーズですが、体重や身長を尺貫法で実況しているんです。」
「時代を感じますね!」

★今も昔も、映像は貴重な研究材料!

「映像を提供してくださったのは、この試合に出場し、2トライをあげた元日本代表監督で、早稲田大学名誉教授の日比野弘さんです。当時は、テレビ中継があっても自分のプレーを映像で見る機会はなかったそうです。フィルムはニュージーランドの戦術を研究したり指導の参考にしたりするため多くのチームに貸し出されたといいます。日比野さんは、こうした過去の試合の映像は、歴史の中でラグビーの戦術がどう変遷してきたかを知る上で大変貴重なものだと話していました。放送面でもスポーツ中継が当時どのような工夫をしながら発展してきたのかを垣間見ることができると思います。」

2トライをあげた日比野さん、しかし映像には1度目のトライしか残されていません。フィルムでの上映中に2度目のトライのシーンが焼き切れてしまったのだそうです…残念!

★AV機器の進歩で貴重な映像が失われる?

「こうした貴重な映像が失われていく一因として、家庭用AV機器の代替わりがあります。先ほど千田さんのビデオはタンスの上に置かれたままだったと言いましたが、自宅にはすでにベータ形式のビデオを再生するデッキはなく、見たくても見られない状態だったということです。日比野さんが持っていた映像も、もとのフィルムを有志がお金を出し合ってVHSにダビングしていたため、ある意味奇跡的に残されたものでした。ものを捨ててすっきり暮らすブームもあって発掘の機会は急激に失われつつあります。」

番組発掘プロジェクトで出演者や番組関係者に問い合わせる時も、「もう再生する機会がないので捨てました」「引っ越しの際に処分しました」といった声をよく聞きます。
番組発掘は時間との戦いでもあるのです!

「こうして発掘・提供された映像はNHKが最新のデジタルシステムで保管して、後世に伝えることになります。またワールドカップを前に、上映イベントなども企画されています。7連覇の試合の映像がそろった新日鉄釜石は、クラブチームの釜石シーウェイブスとして活動を続け、その地元釜石市は、ワールドカップ会場の一つとして2試合が行われます。釜石のチームが繰り広げた伝説の名試合が、アジア初のラグビーワールドカップの盛り上げに一役買うことになりそうです。」

9月に日本で行われるラグビーワールドカップに向けて、番組発掘プロジェクトもラグビー発掘に力を入れていきます!皆さんのご家庭に残されているビデオテープも、もう一度チェックしてくださいね!

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