発掘ニュース

No.235

2019.06.14

情報番組

半世紀前、テレビはどんな風に見られていたの??

今回の発掘番組は1966(昭和41)年放送の『テレビと生活時間』です。
テレビ画面を“キネコ”と呼ばれる方法で撮影したフィルムの状態で残されていたこの番組、
テレビが世の中に登場してまだ10年あまりの頃、どんな風にテレビが見られていたのかを特集しています

番組は視聴者から寄せられた写真から始まります。「暮らしの中の放送」をテーマにした写真、老若男女問わず皆さんテレビが大好きな様子が伝わってきますね!

「こうした写真を見ると、テレビが非常に増えたとともに、テレビジョンが日常の生活に強く結びついているということが分かります。これはどこのご家庭でも見られるのではないかと思いますが、食事風景でございます。」

「ところでちょっと思い出してほしいのですが、テレビがお宅にまだ無かったころの食事の風景はいかがでございますでしょうか?ラジオをお聞きになりながら、あるいはラジオのスイッチを切ってという風景があったのではないかと思います。食事の時間を一家のコミュニケーションの場として、いわゆる団らんという形でお過ごしになった方が多かったかと思います。善悪は別といたしまして、今の写真のような風景が現実に非常に増えてまいりました。形だけではなく、生活の内容にまで変化をきたしているということも言えるのではないでしょうか。」

どうやらテレビが急激に普及したことによる弊害がテーマのような雰囲気ですね…。

★戦前に始まった国民生活時間調査

「そうした国民の生活の変化、実態につきましてNHKでは国民生活時間調査というものを行いました。」

「実は戦前、昭和16年に第1回を行いまして、これが調査結果でございます。ここにマル秘と書かれています。こういったデータは公表されなかった。昭和16年、太平洋戦争が始まる年ですから時代を反映しております。この第1回の調査をはじめといたしまして、昭和35年、そして去年昭和40年と国民生活時間の調査が行われました。」

番組では第1回:昭和16年、第2回:昭和35年、第3回:昭和40年、この3回の調査によって得られたデータの移り変わりを“電子計算機”を使って分析しています。
そして実際に世論調査を担当したNHKの職員が調査結果を紹介します。

「昭和40年の調査は、全国の10歳以上の国民を対象に延べ2万4千人の方々に、全国で900人の面接員が一人一人お会いして調査しました。なにぶんにも全国民の縮図になるように調査相手を選んでおりますので山間部などにも足を運ぶ大変な調査でした。」

★農家の生活を変えたテレビ!

「戦前と戦後、またテレビの普及の前と後とで日本人の生活はかなり変わってきているわけですが、農村を例にとってグラフで説明いたします。」

「農業従事者が、朝の5時にどのくらい起きているか?朝の6時になるとどのくらい起きるか?16年、35年、40年と比べました。

戦前(16年)は、朝5時に既に半数以上の人が起きていたのですが、35年、40年と少なくなってきています。いわば朝寝坊の人が増えたということです。」

一方、農家の皆さんの夜、寝る時刻です。注目点は、テレビが農村にはまだあまり普及していない昭和35年と、農村にもテレビが非常に普及した昭和40年での変化です。夜9時に寝ている人を比べてみると16年から35年の変化と比べて大きく減っているのが分かります。つまりテレビを見るために夜更かしする農家の方が増えたという分析です。

また労働時間の変化を見ると、戦前と戦後で2時間ほど減少しています。このことは余暇時間が戦後は増えていると分析しています。これは商店主なども同じ傾向で、勤め人はあまり変わっていないそうです。

★5年間でテレビの影響が増大!

続いては、何時ころどれくらいの人がテレビを見ているか?を表したグラフです。

どの時刻をみても昭和40年はテレビを見る人が著しく増加しています。例えば、一番多くの人がテレビを見ている時間帯(夜8時~9時)。昭和35年には約1700万人、昭和40年にはぐっと伸びて全国で約4500万人の人がテレビを見ています。朝についても35年はあまり見られていませんでしたが、40年には1500万人に増加!

★全国、津々浦々に急増するテレビ視聴者!

では、区部、市部、郡部に分けて昭和35年と40年でどれくらいの人がテレビを見ていたか?区部では昭和35年すでに58%、郡部では20%くらいでしたが、わずか5年間で区部、市部、郡部を問わず90%の人たちがテレビを見るように!ものすごい伸びです!

さらに、何か他のことをしながらテレビを見る人がどれくらいいるか?このころから既に“ながら視聴”という言葉があったのも驚きです。朝は忙しい時間帯でもともと“ながら視聴”が多かったのですが、お昼と夜は5年間でその数が伸びています。これはテレビが生活の中に入り込んで、テレビの見方が変わってきたことを示していると分析。

★子供はテレビで勉強しなくなったのか?!

次は子供とテレビです。テレビを見るようになって子供が勉強をしなくなったというのは本当か?まずどれくらいの子供が外で遊んでいるか、4時から5時頃を見ると昭和35年は20%くらい、昭和40年は半分に減って10%ほど。一方5時ころからテレビを見る子供の数が著しく増加。テレビを見るために外で遊ぶ子供が少なくなったのではないか?すでにこの頃から言われていました。

午後8時を境に5年間ではっきり分かれています。8時まではテレビを見ている子供が多く、勉強をする時間が遅い時刻にずれている。ところが勉強時間の量は5年間でほとんど変わっていません。勉強が遅い時間帯にずれて子供の寝る時刻が遅くなっているという分析結果です。

★テレビは、はたして善か?悪か?

このあとスタジオでは「国民生活時間調査」をもとに、大学教授や評論家、農業研究の専門家、新聞社の論説委員などが議論を交わします。

ポイントは、あまりにも急速に国民のあいだに浸透した『テレビ』との接し方、時間の過ごし方はこのままで良いのだろうかという問題提起です。

▼高度経済成長で豊かになり時間にも余裕が出来たが、テレビばかり見ていて大丈夫?
▼一日のテレビ視聴時間の国民平均が2時間50分、家庭婦人はそれより1時間長い3時間50分。一方で新聞など活字を読む時間は29分、これで良い?
▼子供は外で遊ばず、テレビを見て勉強時間が夜遅くなっている。
▼都市部だけでなく農村も含め日本中にテレビが浸透し、夜更かし朝寝坊になっている。
▼一家の団らんが「会話」から「テレビ」に代わってしまった。

同時に、プラスの考え方でテレビと付き合っていくべきだという提言も…
〇テレビを受け身ではなく積極的な見方をすることで、知識を得たり、社会問題を考える手段にすべき。
〇閉ざされがちな農村の社会を、テレビは開かれたものに変えてくれた。
〇家族でテレビを見たあと話し合ったり、親が思い出を語ることで「テレビ」を団らんの手段として利用する主体性が必要。
〇家事の負担が減り自由な時間が増えた家庭婦人は、流されるままテレビを見るのではなく、主体的にテレビを見て得た知識を広く社会に普及してオピニオンリーダーとなるべき。

あっという間に国民生活の中に浸透したテレビの存在に戸惑い試行錯誤する様子は、
今のスマートフォンの登場にも重なる気がいたします。

この「国民生活時間調査」、現在もNHK放送文化研究所が5年おきに行っています。NHKの番組編成だけではなく、日本人の生活実態を明らかにする基本データとして広く活用されています。最新は2015年の調査、参考までにポイントとなったのは…

1.減少が止まった睡眠時間~一層進む『早起き』、そして『早寝』の増加~
2.テレビの視聴時間が高年層まで減少
3.広がるビデオ・インターネットの利用
4.続く長時間労働と働く時間の『早朝化』
5.急速には縮まらない家事の男女差
6.自由行動(レジャー活動・マスメディア接触など)の増加が止まり、必需行動(睡眠や食事など)が増加

いかがですか?テレビの視聴時間の減少、インターネットの利用など、当時は想像もつかなかった“未来”の姿です。50年あまりの間に私たちの生活がどれだけ大きく変化したのかを実感した『テレビと生活時間』の発掘でした。

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