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  • 2022年4月1日
 

卒業式で宣言「将来は、アナウンサーになる!」

嫌なことがあると、すぐ逃げていた学生時代。中学と高校は陸上部に入っていましたが目標の全国大会に行けず、心がくじけて練習は手を抜くように。記録が伸びないだけでなく怪我で入院したことも重なり、最後は受験を建前にして逃げるように部活を辞めてしまいました。

「もし受験で失敗したら仲間に合わせる顔がない…」と、焦りでいっぱいだった受験直前。ふと見たのがテレビの大学駅伝中継でした。

映っていたのは、高校の陸上部の大先輩。エースでしたが怪我で全国大会に行けず、人目をはばからずに泣く姿を覚えていました。その先輩が、いまは大舞台で躍動している。私の心の鼓動が速くなりました。スタート時は最下位。それでも必死に前の選手との差を少しずつ詰め、1人、2人と懸命に抜いていきます。表情にはこれまでの苦労とレースにかける思いが表れているように見えました。実況アナウンサーがその先輩の名前を呼ぶたびに私も拳を強く握りしめ、たすきを渡し終えた瞬間は涙が止まりませんでした。選手それぞれにドラマがある。スポーツ放送で人生が変わった瞬間です。

そこから受験を必死で乗り越え、卒業式では「将来はアナウンサーになってスポーツ実況をする!」と宣言。なんと大胆な…。恥ずかしい限りです(笑)。

<高校時代>陸上部の同期と

面接は、相手との「会話」

とは言え、大学時代はアナウンススクールに通っていません。
高校の部活を途中で逃げた経験から、大学では1つのことをやり抜くと決めていました。選んだのはストリートダンスサークル。新入生歓迎会で心から楽しそうに踊る人たちが輝いて見え、真似したいと思ったのが理由です。

<大学時代>ストリートダンスサークルの仲間と

就職活動の直前までダンスを続けていたため、アナウンサー試験に向けて特別なことはしていません。初めて受けた民放局は1次面接で不合格。全力でダンスの話をしましたが面接官の反応は正直悪く、自分の存在を否定された気がして、かなり落ち込みました(笑)それでもダンスは高校の陸上部とは違い、最後まで必死に取り組んだので強い思い入れがあります。

「なんとかして、相手に伝えたい」。
その思いを胸に、心がくじけそうになりながらも、面接の質疑応答や、相手の表情・反応を思い返して全てメモ。どこで自分の話が伝わらなかったのか、どうすれば興味を持ってもらえるかを考え、OBOG訪問を繰り返しました。

気が付いたのは、私の話し方が一方通行だったこと。相手に言いたいことを伝えるには、「相手の反応を見ながら会話する」ことが大事だと学びました。

「カッコ悪いね」とグサリ

内定をもらったのは、NHKと総合商社でした。正直、すごく悩みました。と言いますか、はじめはNHKの内定を断り、総合商社を選びました。「海外転勤」や、扱う金額の大きさなどの「規模感」に魅力を感じたからです。

ところが、その決断を親友に話したら「カッコ悪いね!」とグサリ。
「アナウンサーになってやりたいことがあるんじゃないの?」と。長年、その親友には自分の夢を話していたので違和感があったそうです。話すときの目がキラキラしていなかったよ、と。そのことばがきっかけで、やっぱり心がワクワクするのはアナウンサーだなと思い、NHKに決め直しました。

入局式

何を伝え、どう感じて欲しいか

ことし、念願だった陸上競技の実況を初めて担当できました。徳島で行われたインターハイの、男女100メートルと1500メートルです。実況資料を作る段階からソワソワして、正直、地に足がついていませんでした。(笑)

一番力を入れたのが紹介コメントです。レース前には、会場のMCが選手の名前を呼び、選手は手をあげて挨拶します。放送ではその姿にコメントをつけますが、時間はわずか5秒ほど。高校生活が全てコロナ禍だった選手の思いをくみ取るには、どんなコメントがいいのか…。とても悩みました。

いざ、レース直前。決勝のファンファーレが響き渡ると、会場は独特な雰囲気に包まれました。3年ぶりに有観客ということもあり、選手や観客の心には、緊張と喜び、引退が近づく寂しさが入り混じります。そうした選手の表情や仕草を感じながら、アドリブでコメントを変えて紹介をしました。
そしてレースが始まり、台本のないドラマがスタート。高校生の全力の走りを、1人でも多くの名前を伝えたいと思いながら実況しました。

目指すのは試合の結果だけでなく、そこまでのドラマや舞台裏もできる限り伝え、多くの人にスポーツの魅力を感じてもらえる放送です。その放送がきっかけで、誰かの人生が変わるかもしれない。そんな思いを持っています。

もしスポーツキャスターや実況アナウンサーを目指すなら、スポーツを現地で数多く観戦して、そうしたさまざまな人の思いを感じてみてください。スポーツに限らないお話ですが、アナウンサーを志すみなさんには「アナウンサーになりたい」だけではなく、「何を伝えたいか。伝える相手に何を感じてほしいか」ということまで考えてみてほしいなと思います。

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