等身大の自分で伝える
- 2022年4月1日
希望は、メディアと総合商社でした
新潟県出身の私は、2004年の新潟県中越地震を経験しました。まだ小学校4年生でしたが、震災後、新潟の街がどんよりとして人々が大きな不安とともに暮らしているのを感じました。街がどんな状況で、この先どうなるのか分からないとき、家族で見ていたNHKのニュースでアナウンサーがいろいろな情報を伝え、励ましてくれました。幼心に、「アナウンサーってカッコいいな」と思ったのを覚えています。
大学では「メディア・コミュニケーション研究所」に入所して、主にテレビや新聞などのマスメディアの役割を勉強しました。実際に現場で働いている方々の話を聞く機会もあり、自分も伝え手になりたいという思いが強くなりました。
一方で総合商社にも興味があったので、メディア業界と商社に絞って就職活動をしました。
誰かのためにことばを届けたい
就職活動では自分が「ここで働きたい」と心から思える会社しか受けませんでした。なかなか内定をもらえず焦ったこともありましたが、それは最後まで貫き、NHKと第一志望の総合商社から内定をもらうことができました。悩んだ末にNHKに決めたのは、もちろん大学でメディアが果たす役割や面白さを学んだこともありましたが、最終的な決め手は小学4年生のときに見た災害報道だったように思います。
一番つらいときに、手を差し伸べてくれるようなことばをかけてくれたアナウンサー。そのことが10年以上経っても忘れられず、今度は自分が誰かのために情報やことばを届ける側になりたいと思い、NHKを選びました。
“等身大の自分”でことばにする
不採用通知を受け取ると、自分が否定されたような気持ちになります…。それでも私は「自分はこういう人間で、これをやってみたい、知りたい、伝えたい」ということを等身大で言葉にすることを心がけました。面接では自分のいいところをアピールすることに一生懸命になりがちですが、ありのままの自分で面接官と会話することを意識してみてほしいです。面接官と気持ちのいい言葉のキャッチボールが出来たと感じた面接は、結果もついてきたように思います。
「等身大の自分で言葉にする」ことは、アナウンサーになった今も同じように心がけています。背伸びせずに、今の自分が考えていることを言葉にしてみる。きれいな言葉でまとめられないかもしれないけれど、実感のこもった自分の言葉で伝えたい。とても勇気がいることですが、視聴者の皆さんに正直でいたいという気持ちで放送に向き合っています。
最終面接でスベった!
私は大のかき好きで、専門の資格『ジュニア・オイスター・マイスター』を取得していることをエントリーシートに書いていました。すると、NHKの最終面接で面接官に「ここにあなたの一番好きなかきがあると思って、食レポしてみてください」と。食レポなんてしたことありません。でも開き直って「身がぷりっぷりで濃厚!う~ん、おいしい~!!」とやったのですが…スベリました(笑)。面接会場がシーン…となったんです。「もうこれは落ちたかもしれない」と思いました(笑)。
入局後、当時の面接官にその話をしたら、「思いきりの良さに好感がもてたよ」と言ってもらえました。 面接では、かっこつけず思い切り自分を表現してみてほしいです。とっさの瞬発力や、相手を楽しませたいというサービス精神は、アナウンサーにとって大切なことのように思います。
自分の世界を広げる
アナウンサーの仕事は、学生時代に想像していたよりも大変で難しいなと実感していますが、それでも毎日が楽しい。ニュース、情報番組、エンターテインメント…。この仕事をしていなかったら触れなかったであろう世界、出会えなかった人。ひとつひとつに縁を感じながら真摯(しんし)に向き合い、自分の世界を広げる。とても刺激的で、幸せです。
そして、自分がNHKのアナウンサーを目指すきっかけにもなった災害時などにも視聴者の皆さんの力になれるように、これからも勉強し続けていきます。