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『自分のことば』を 追い求めて

  • 2022年4月1日
 

自分と向き合った時間

2020年4月。大学4年生。コロナ禍。 世の中では外出自粛が叫ばれ、多くの人がこれまでの日常から切り離され、ほとんどの時間を家で過ごしていたころ。私の日常も大きく変わりました。
硬式野球部に所属し、朝昼晩と野球にささげていた毎日が一変。部活動は停止となり、春のリーグ戦も中止に。本来であれば、リーグ優勝を目指して、グラウンドでボールを追いかけていたはずの時間が、ぽっかりと空きました。
チームメイトや友だちとも自由に会えず、できる限りの自主練習をしたら、後は部屋でぽつんと一人。自分の将来について考える時間が増えました。
「ほんまにこのままでいいんやろか」。
部活動を最優先にして行っていた就職活動。外出自粛が叫ばれる前の3月に、様々な業界の企業のエントリーシートを提出し終えていました。その中には、放送関係の企業は一社もありませんでした。
『誰かを元気にする仕事がしたい』という基準で、就職活動を行っていましたが、具体的に何をやって人を元気にするのか?というところまでは定まっていませんでした。
新型コロナで生まれた孤独な時間は、自分と向き合い、将来についてより深く考えるきっかけになりました。

コロナ禍でも何とか開催された4年生秋のリーグ戦。
このあと左足にデッドボール。

最後のエントリーシート

夜の9時。本来であれば、夜空のもとでひたすらにグラウンドでバットを振っていた時間は、外出自粛要請のもとで不安とともにニュースを見る時間へと変わりました。
何年ぶりかにつけたNHKの『ニュースウオッチ9』。
新型コロナに関するニュースが続くなか、いろんな考えが頭をよぎりました。
(自分の野球人生はこのまま終わってしまうんだろうか…)
(最後の大学生活はずっと家で過ごすことになるのだろうか…)
(採用活動はちゃんと行われるのだろうか…)
先行きへの不安が大きくなるなか、ニュースとニュースの間にアナウンサーがひと言、言葉を添えました。正直、なんと言っていたか具体的な言葉は、もう覚えていません。でも、なんだかちょっと元気になったことは覚えています。
新型コロナで不安な私に、そっと寄り添ってくれる、やさしい一言だったと思います。そのとき、はっきりと思いました。
「これだ!」
ことば一つ、表情一つ、しぐさ一つで、見た人、聞いた人、出会った人に、ちょっとでも元気になってもらえる仕事。ちょっとでもあす頑張ろうと思ってもらえる仕事。そんな仕事を私はしたい。 慌てて、アナウンサーの募集を探しましたが、もう4月。ほとんどの放送局は締め切っていました。でも、そんななかでNHKはまだアナウンサーの募集をしていたんです。そして私は、自分にとって最後のエントリーシートを出しました。

コロナ禍の研修
フルリモートで行われました。

ありのままの自分を素直に

大学4年生の4月まで、アナウンサーになりたいと思ったことがなかった私は、アナウンス技術はもちろん、アナウンサーの仕事についても、しっかりと理解していませんでした。だから面接では開き直って、ありのままの自分を素直に話すことにしました。というよりも、それしかできませんでした。笑
NHKの面接官の人たちは「聞くプロ」。私がどんなにつたない言葉で話しても、じっと聞いて、私のことを上手に引き出してくれました。言葉に窮する質問も多々ありましたが、うわべだけで取り繕うようなことはしませんでした。面接で話したことばは全て『自分のことば』。これだけは、自信をもって言えます。

ことばがもつエネルギー

アナウンサーは視聴者の方々に何かを伝えるのが仕事。そのためには、そのことについてどれだけ自分が深く理解しているかで、伝わり方が大きく違うと思うんです。たとえば、自分がニュース原稿を読んでいるところを見返してみると、自分の理解がしっかり及んでいるときと、それほどでもないときでは画面からの伝わり方が違うように感じるんです。
伝えたい、知ってほしい、という強い思いとともに、どれだけ自分がそのニュースや出来事に向き合っているか、考えているか。それによって、ことばがもつエネルギーが違ってくるように思います。同じことを言っても、伝わり方が違う。私はそこに、人に何かを伝えることの難しさと、おもしろさを感じています。

伊勢えび漁の生中継。
おいしすぎて悶(もん)絶! テレビで見せる顔ではない。

『自分のことば』だけが、誰かに届く

現在、アナウンサーを目指している人たちに言えることがあるとすれば、自分がどういう人間なのかをとことん考えて、それを『自分のことば』で、熱量をもって伝えてほしいです。簡単なことではありません。私もそれと闘う毎日です。
・今日の放送で発したのは本当に『自分のことば』だったのか。
・原稿をただ読んだだけのうわべのことばになっていなかったか。
・そもそも、伝える内容について自分は理解できていたのだろうか。
なんて、日々考えています。
私がアナウンサーを目指すきっかけになった『ニュースウオッチ9』のアナウンサーがニュースに添えたひと言は、原稿に書かれていた物かもしれません。けれども、たしかに心のこもった『自分のことば』であったはずです。だからこそ、私の胸に突き刺さったのだと思います。 みなさんも自分と向き合いながら、『自分のことば』を追い求めてみてください。それは、面接時だけでなく、アナウンサーになってからも役に立つと思いますよ。

徳島局での1枚
潜水する私とわかめ役の先輩藤原アナ
素敵な職場です。
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先輩坂本アナと県内をくまなく探検

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