高齢化進む犬と飼い主に寄り添う「老犬ホーム」
- 2024年02月19日
医療の進歩やエサの改良など、飼育環境の改善で進む飼い犬の高齢化。介護が必要になる犬も増える中、飼い主に代わって有償で犬の世話をする山口市の「老犬ホーム」を取材しました。
(山口放送局カメラマン 桝永元気)
進む飼い犬の高齢化
ペットとして私たちに身近な存在の犬。近年、飼い犬の寿命が年々伸びています。
平成22年は13.87歳だった飼い犬の平均寿命。令和4年は14.76歳になり、この10年ほどで約1歳、人間に換算して4歳ほど長生きするようになりました。
(網本昭輝獣医師)
飼い犬の高齢化の要因として、高度な医療が受けられるようになったことが一つあります。例えばCTやMRI、放射線などの検査。それに犬の栄養要求量に応じたような食べ物や病気専用の処方食というようなものが出てきたことも挙げられます。
老犬ホーム
高齢化によって介護が必要な犬も増える中、飼い主に代わって有償で犬の世話をする施設があります。
老犬ホームです。
山口市の老犬ホームには、高齢で足腰が弱くなったり認知機能が衰えたりして介護が必要になった犬などおよそ15匹が預けられています。
飼い主自身も高齢になり、育て続けることが出来ずに施設に預けざるを得なくなった犬もいます。
代表の郡真美(こおり・まなみ)さんです。飼い主の事情で手放される犬の存在を知り、命を救うと共に飼い主にも寄り添いたいと6年前に施設を立ち上げました。
(郡真美さん)
「余生を誰かに預けることにはなるけれど、自分が最期まで飼い主として責任を持てるような選択肢がないかと思い、施設を立ち上げました」
施設では、犬の状態に合わせた世話を心がけています。
散歩は1日に4回行います。外に出ることで、匂いや音などの刺激を感じさせます。
足腰が弱り、自力で歩くことが出来ない犬にはハーネスをつけて介助します。
えさの準備は気の抜けない大事な作業です。
(郡真美さん)
「多くてこれくらいの薬を一度に飲む犬もいます。これは抗生剤と、肝臓が悪いので肝臓のお薬など…」
獣医師に処方された薬を確実に飲ませるために、一錠ずつえさに混ぜて与えることもあります。消化機能やのどの動きが弱くなった犬には、ドッグフードをふやかしたものを食べさせます。
(郡真美さん)
「状態は日々変化します。きのうはすごく元気だったのにきょうはご飯を食べられず、呼吸も弱いという犬も。施設に来たばかりでまだ状況がつかめない犬がいる場合は、泊まって夜間も見ることにしています」
懸命の介護の末に
令和4年10月からこの施設で過ごしている「ちび」です。足腰が弱り、自力で立つことや排せつ、食事ができません。ちびはこの施設に入る前まで下関市内で過ごしていました。
ちびの飼い主の桝本則雄(ますもと・のりお)さんです。
(桝本則雄さん)
「ちびはおとなしい性格でしたね。散歩中はみんなからかわいがられて。大切な家族です」
「最後まで家で世話をしようと格闘していたのですが、もうどうしようもなくなって。家族で話し合って老犬ホームに預けることを決めました」
庭で走り回ったりボールで遊んだりするのが大好きだったというちび。15歳を迎える頃から「ある変化」があったといいます。
(桝本則雄さん)
「狭いところに入って出られなくなったり、いろいろな所に排せつしたり。『ぎゃああ』という声で夜中じゅう叫ぶようになりました。近所みんなに迷惑をかけて」
「睡眠不足になって昼間でもぼーっととしたり、ノイローゼ気味になったりしました」
およそ1年間、懸命の介護を続けましたが、悩んだ末に老犬ホームに預けることを決めました。
今では月に1回ほど、ちびに会うために施設に足を運んでいます。桝本さんは、施設に預けたことで精神的な負担が減り、ちびの大切さを改めて感じることができたといいます。
最後まで 穏やかに
施設に入ってからもちびの足腰は衰え、今は自力で歩けませんが、好きだった散歩は郡さんに介助されて行くようになりました。
(郡真美さん)
「外に出るとぱっと顔が明るくなります。自由に走りたいんだよね本当は。気持ちは走っているね」
郡さんは、預けられた犬に最後まで穏やかな日々を送ってほしいと話します。
(郡真美さん)
「犬が犬らしく。その子の尊厳というか、きっとこの子がそうしたいであろうということを大事にしながらお世話していきたいなと思っています」
(取材を終えて)
これから犬を飼う人は、飼い犬の体の衰えや介護の大変さについて飼う前からしっかりと調べておくことが大切です。ペットとしてかわいいだけではなく、命を預かるという覚悟と責任を持って飼う必要があると感じました。