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山形県高畠町で考えた!災害時の高齢者や障害者の避難

  • 2023年10月20日

 

NHKが自治体と連携して各地で開催している「地域ミーティング」。
災害時の避難の際に支援が必要な、‟お年寄り”や‟障害のある人”を地域でどうサポートしていくのか、当事者や地域住民が集って意見を出し合うものです。
10月7日、東北では初めて山形県高畠町で開催されました。当事者の皆さんはどんなことに不安を感じ、どんな支援が必要なのか。
それぞれの立場で意見が交わされました。

自力での避難が難しい「要支援者」の支援

 

災害時に自力での避難が難しいお年寄りや障害のある人のことを、「要支援者」といいます。
過去の災害では、高齢者や障害者が犠牲になるケースが相次いでいます。

こうした方たちの避難をサポートするものが、「個別避難計画」と呼ばれるもの。
要支援者1人ひとりに対して、誰が避難をサポートするか、どこに避難するかなどを事前に決めておくものです。全国の自治体では策定することが努力義務になっています。

山形県内では、今年1月時点で8つの自治体が策定済みとしています。
県によると、個人情報の共有をためらったり、避難を支援する人がなかなか見つからなかったりという課題があり、なかなか進んでないというのが現状だといいます。

 

NHK×自治体 「地域ミーティングin高畠」開催!

 

ミーティングの様子

そこでNHKでは、自治体と連携して「地域ミーティング」を各地で開催しています。

「地域ミーティング」とは、地域の要支援者や住民が集って意見を交わす場をつくり、より実効性のある個別避難計画の策定を目指すものです。

10月7日には、東北で初めて山形県高畠町で開催されました。
高畠町では個別避難計画を「策定済み」としていますが、実際は‟支援者”や‟避難所”の欄は空欄が目立っているといい、より実践に近い計画の策定を目指しています。
 

当日、会場には、要支援者やその家族、そして、行政の担当者や自治会のメンバー、民生委員などおよそ30人が集まりました。

 

高畠町を流れる屋代川

参加した人の多くは、町内を流れる屋代川沿いに住んでいます。
大雨の際、避難に大きな不安を抱えているといいます。まずはその不安を共有しました。

<要支援者の家族>
4年前の台風19号のときに、ごーという川の流れる音やサイレンが聞こえて気がもめていたけど、足も悪いし、娘にも障害があるし、逃げ方どこに避難したらいいかも全然分からなかった。

<相談支援専門員>
(警戒)レベル3になって声掛けされました。でもそこから自分たちがどう逃げるのか。歩いては無理なので、誰が手助けしてくれるのかが分からない。

また、避難所での生活が不安で避難をためらうという声も上がりました。

<要支援者の家族>
健常者の人と避難してしまうと、トイレの時に迷惑をかけるというのもあるし、そんな中で避難するのもなあ…と思ってしまいます。

<介護施設の職員>
その気持ちも分かるので、避難場所でどういうしつらえがあればいいのか、というのも吸い上げないと、避難までは結びつかないですよね。

当事者からは、
自力で避難できない不安、避難するタイミングが分からない、周りの人に迷惑をかけるのではないかと避難をためらう気持ちなどがあることが分かりました

 

要支援者の不安、どう解消する?

 

次に、要支援者が抱える不安をどう解消するのかを話し合いました。

避難所での生活が不安という声に対しては、「地域の介護施設に避難できないか」という意見が出されました。

ただ、受け入れ側からはこんな声も。

<介護施設の職員>
どの時点で私たちは待機をして避難所として開設するか取り決めがない。施設に入居している人もいるので、「レベル1の段階でひとまず来ていただく」など細かい取り決めがあれば、ベッドの準備などもできると思います。

災害時にすぐ対応できるように、細かな取り決めが必要だと分かりました。

他にも、「支援する側、支援される側、お互いが顔を合わせておくことが大切」という意見など、初めて顔を合わせることで新たな気づきが生まれました

 

ジャーナリスト 迫田朋子さん

当日、専門家として助言をしていただいたジャーナリストの迫田朋子(さこた・ともこ)さんは、次のように話していました。

1人ひとりの当事者が何に困るのか、どういう支援が必要なのかということが分かれば、「私は何が手伝えるのか」と具体的に考えることができます。

地域の人たちも、「何かしたい」となんとなく気にかけているけど、「わざわざおせっかいする必要はないな」と思っている人が結構います。こうして、顔を合わせて話をする場をつくっていくということがとても大切だと思います。

 

<取材後記>

当日、私は進行を務め、みなさんの話し合いを聞いていました。当事者の皆さんが率直に不安な気持ちを話されている姿を見て、不安はあっても、こうした場がないとなかなか自分からは話せないですし、各方面の課題も見えてこないと感じました。
同じ地域に住んでいる人同士が、普段から顔の見える関係を作っておくことの大切さを私自身も実感しました。
このミーティングを受けて、地域が具体的にどう動いていくのか、取材を続けていきます。

 

動画はこちらから👇


 

  • 山田 真夕

    アナウンサー

    山田 真夕

    山形局3年目。
    山形の夕方のニュース「やままる」キャスター

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