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学校跡地にキャンプ場?富山県の空き家・過疎化改善のカギは?

  • 2023年07月04日

    27世帯38人が暮らす集落に、2日間で約200人が集まった?

    全国各地で課題となっている空き家や過疎化の問題。同じ悩みを抱える富山県小矢部市の地区では、ある取り組みがきっかけとなって、訪れる人が増えてきているといいます。

    いったいどういうことなのか?取材しました。
    (富山放送局記者 櫻井里沙)

    2日間で約200人が集まった集落は?

    その集落は、富山県小矢部市の中心部から車で約20分離れた所にありました。

    石川県との県境の山あいにある内山地区です。27世帯38人が暮らしていて、その多くが高齢者です。

    この地区に、約200人も集まった?

    どういうことなのか、教えてくれたのは、竹田尚弘さんです。

    竹田尚弘さん

    実は竹田さん、去年(2022年)この地区にある学校跡地をキャンプ場にしようと、たった1人で整備を始めたといいます。

    「内山という土地が本当に魅力的だと思っていて。上下水道も来ていない山の中という環境が、本当に面白い土地だなと感じていて、可能性があると思ったんです」

    キャンプ場整備がきっかけに…

    竹田さんが整備を始めると、内山地区に住む人たちが声をかけてくれるようになり、学校の修理や草刈りなどを手伝ってくれたのだそうです。

    竹田さん(下の列中央)と地域の人たち

    そして去年5月にキャンプ場をオープンすると、金沢市や富山市からも比較的アクセスがよいこともあり、これまでに200組以上が利用してくれました。

    竹田さんは地区に住む人たちとの出会いを通じて、地区ににぎわいを作って、恩返しをしたいと思うようになったといいます。

    1人でも多くの人にキャンプ場を利用してもらおうと、動画投稿サイトやSNSで情報を積極的に発信しています。

    「お店とか、たくさんできてほしいですよね。このキャンプ場を拠点に、移住する人も含めて県外から来てもらえるような魅力的な土地にしたいと思っています」

    広がる地域の活性化を目指す輪

    内山地区では、キャンプ場のオープンをきっかけに、地域の活性化を目指す人たちの輪が広がっていました。次に話を聞かせてくれたのは、奥田隆行さんです。

    奥田隆行さん

    奥田さんは、祖父母の家がこの地区にあった縁で、7年前に金沢市から家族4人で移住してきました。

    奥田さんは、竹田さんの活動に刺激を受けて、ほとんど利用されなくなった古民家などに移住してくれる人を呼び込む取り組みを始めています。

    建物の所有者に連絡を取って、手放す意思がある所有者がいれば、移住を希望する人を募集して、地区や古民家を案内しています。

    工務店を営む奥田さんは、自分の知識を生かして、古民家をどのように改修すれば住みやすくなるかどうかのアドバイスもしているといいます。

    こうした取り組みの結果、ウェブサイトに掲載した古民家には多くの問い合わせがあり、今年(2023年)4月には首都圏から1世帯の家族が移り住みました。

    「家の所有者の皆さんも、『何かしなくちゃいけない』って必ず思っているんです。そのきっかけ作りを、私ができたらいいのかなと思っています」

    耕作放棄地も活用へ

    さらに奥田さんは、内山地区にある耕作放棄地を整備する取り組みも始めています。

    地区にはかつて、美しい棚田が広がっていましたが、過疎化が進んで担い手がいなくなり、荒れ果てていました。

    地区のことを知ってもらって、移住や農業に興味を持ってもらうきっかけになればー。

    現在、奥田さんは整備した土地を友人に無料で貸し出していて、今後は、さらに多くの人に貸し出したいと考えているということです。

    こうした内山地区での新たな取り組みに、区長の齊藤清さんも期待を寄せていました。

    区長の齊藤清さん

    「奥田さんは、『何もないところが魅力だ』なんて言っていて、頼もしいなぁと感じています。こういう人たちが少しずつ増えて、これまで自分が生きてきた80年間とは違った歴史を刻んでいってくれるのかなと思っています」

    取材を終えて

    過疎化の集落に多くの人が集まっていると聞いて、いったいどういうことなんだろうと思って取材を始めてみると、内山地区には、その土地に魅力を感じている人たちの輪が、少しずつ広がっていることを実感しました。

    キャンプ場を整備した竹田さんは奥田さんと一緒に、8月にもイベントを開くことにしているということです。

    キャンプをしたり、カブトムシを捕まえに行ったりしながら、地区の魅力に触れてもらえるようなイベントにしたいと話していました。

    竹田さんや奥田さんたちの取り組みが、今後どう広がっていくのか?取材を続けたいと思います。

      • 櫻井里沙

        記者

        櫻井里沙

        2020年(令和2年)入局 富山局が初任地
        これまで警察・富山市政を担当
        現在は県内の幅広い話題を取材

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