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ゴミ袋に名前 書きますか?

県内のゴミ事情、全部調べてみました
  • 2023年10月19日

「鳥取県ではゴミ袋に名前を書かなくても良いのでしょうか」

県外から鳥取市に引っ越してきた男性からNHKに質問が寄せられました。鳥取県のゴミ袋事情を調べてみると、地域によってかなりルールに違いがありました。

ゴミ袋に名前書く? 書かない?

視聴者の素朴な疑問に答える「疑問リサーチ」。今回の疑問は、この夏、長野県から鳥取市に引っ越してきた男性から寄せられました。

「以前住んでいた長野県では、ゴミ出しの時に袋に名前を書いていました。鳥取県ではどうなっているのでしょうか」

長野県では多くの自治体でゴミ袋に名前を書いて出すルールがあるそうです。鳥取県はどうなっているのか。県内すべての自治体のゴミ袋事情を調べました。

すると県内19自治体のうち、12の自治体では指定のゴミ袋に名前を書く欄があり、そのうち日野町と江府町では住民に名前を書くことを求めていました。

なぜこういったルールを導入することになったのか。 住民はどう受け止めているのか。記名式を導入している日野町を訪ねました。

分別の意識を高めるため 記名式を導入した日野町

可燃ゴミの収集日の朝、日野町のゴミ収集場を訪ねると、たしかに名前が書かれたゴミ袋が置かれていました。しかもフルネームで名前が記されています。

日野町によると、1996年にこの記名のルールは導入されました。当時、環境整備課の係長として関わった柴田孝志さんに話を聞くことができました。

記名式の導入に関わった柴田孝志さん

柴田孝志さん

「住民のゴミの分別意識を高めるため導入しました。当時、不燃ゴミが可燃ゴミに混ざって出されることがあり、可燃ゴミに入ったガスボンベが爆発し焼却炉が壊れる事態も起きていました」

当時、新たに建設されたリサイクル施設

さらに、それまで不燃ゴミは埋め立てていましたが、資源として再利用するため新たにリサイクル施設が建設されることになりました。不燃ゴミの中でも細かく種類ごとに分ける必要が生まれたのです。

記名式を導入することで、責任を持ってゴミを分別してもらうとともに、分別に間違いがあった時に本人に伝えて、やり直してもらうことができるという狙いがあったといいます。

柴田孝志さん

「ゴミ袋に名前を書くことで変なものは入れられないという意識になります。分別の大事さを住民の皆様に分かっていただけて、不十分な分別による事故も減りました」

日野町では記名式はゴミの削減につながっていると考えています。名前を書くことで正しい分別方法が広がり、リサイクルできるものが増えたといいます。

日野町建設水道課 小野田麻美さん 

小野田麻美さん 

「日野町は一般家庭からのゴミの量が県下でもかなり少ない方です。町をよくしようという思いが住民に強く、好意的に協力してくれています。分別が不十分なゴミはほとんどありません」

2021年度のデータでは、日野町の生活ゴミの排出量は1日平均534グラム(1人当たり)で、県内で4番目の少なさとなっています。

記名式のルール 町の人の意見は?

では、このルールに戸惑いはなかったのか。町の人にも話を聞きました。

「誰のゴミか分かるのでよい。私も以前、分別が正しくなくてゴミが返ってきたことがあった。それ以来、きっちりと仕分けして出している」(80代男性)

「別になんとも思っていない。(生活に)当たり前なことだと受け止めている」(70代男性)

町外から引っ越してきた人にも話を聞きました。

「可燃ゴミにバッテリーなどが入って火災が起きることもあるので、誰が出したゴミか明確にすることは大事だと感じています」(20代男性)

今回の取材で話を聞いた住民は、全員が記名式を肯定的に受け止めていました。

ただ住民の中には、他人に見られたくないゴミは有色の袋で包んで指定袋に入れるという人もいました。実際に日野町では記名式を導入する際にプライバシーが一番の課題で、不安に思う人の家まで、町の担当者が説明に行くこともあったといいます。

プライバシー問題 乗り越えるようと工夫する地区も

プライバシーの問題を乗り越えようと、記名式とは別の取り組みをしている地区もあります。日吉津村にある日吉津上一(かみいち)地区では、自治会長の青山高志さんがある工夫を教えてくれました。

日吉津上一自治会長 青山高志さん

青山高志さん

「私たちの地区ではゴミ袋に番号を書いています。誰のゴミか分からないと違反があったときに責任の追及ができない。一方で名前を書くのはプライバシーを考えると嫌だなと思い、この番号式を導入しました」

この地区では世帯ごとに番号を割り振り、ゴミ袋に番号を記入しています。番号から世帯を特定できるのは自治会長の青山さんのみで、プライバシーは守られていると考えています。

番号式の導入で住民の分別意識が高まったと青山さんは実感しています。その一方で、今でも分別が不十分なゴミが番号も書かれず、収集場に置かれていることがあります。そのゴミを分別し直すのは、青山さんたち自治会のメンバーです。

青山高志さん

「番号が書いていないゴミは違う地区から持ち込まれたのかなと。最初の数年は『なんで俺が分別しないといけないんだ』と思っていましたが、最近は(住民を)家族のように思うようになって、仕方がないなと」

番号登録ができるのは自治会に入っている人だけで、青山さんは「マンションが増えて自治会に入らない人が増えると、(制度の維持は)ちょっと無理かな」と憂えていました。

私たちにできることは? 専門家に聞く

取材を通じて、記名式や番号式の導入には地域での人と人との結びつきが不可欠だということが見えてきました。家庭ごみ事情に詳しい東洋大学の山谷修作名誉教授も「こうした制度の定着には、自治会組織がしっかりしていることが重要だ」と話します。

東洋大学 山谷修作名誉教授

山谷修作名誉教授

「住民の価値観が多様化し、プライバシーを気にする人も多い中で、人と人との結びつきが薄い記名式の導入は進んでいません。人口15万人以上の都市では、千葉県野田市など3つほどにとどまっています」

その上で、記名式を導入するかどうかにかかわらず、もっとも大切なのは住民一人ひとりの意識だといいます。

山谷修作名誉教授

「やはり重要なのは、納得感です。 狙いを住民にきちんと説明し、理解してもらうことが欠かせません。  根本にあるのは、住民一人ひとりの『排出者責任』です。分別をきちんとする、決められた時間にゴミを出す。 自分が出すゴミに責任を持って、自分事として考えてほしいです」


  •  鶴颯人

    鳥取放送局カメラマン

     鶴颯人

     令和3年入局 広島局からことし8月に鳥取局に赴任鳥取の皆さま よろしく お願いします! 

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