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鳥取 ジュニアドクター育成塾 米子高専で学ぶ未来の科学者たち

  • 2023年07月11日

将来ノーベル賞を受賞できるような科学者を育てるプログラム「ジュニアドクター育成塾」。米子市にある米子工業高等専門学校で、去年から行われています。科学が好きな小中学生が高いレベルの実験や研究をすることで、才能を開花させる取り組みです。鳥取から世界を目指す子どもたちの熱い思いを取材しました。

小5から中3の50人が参加

6月17日、米子高専に科学が好きな山陰の小学5年生から中学3年生およそ50人が集まりました。ジュニアドクター育成塾、今年度の開講式です。

米子高専  寺西恒宣校長
みなさんの中からノーベル賞、あるいはいろんな科学技術者、そういう方々を見いだしていこう。

参加する子どもたちは、来年2月まで、土日を中心に20回ほど高専に通い、教授や学生の指導を受けて、高専レベルの科学の知識を身につけます。

小学5年生

将来の夢は、まだはっきり決まってないけど世界で活躍したい。ロボットをつくってみたりしたいです。

小学5年生

僕は昔から宇宙飛行士になるという夢があったので、いろんな能力を身につけるために、この塾に応募しました。これからいろんなことをいろんな人とできるワクワクもあります。

7月には三朝町にある岡山大学惑星物質研究所を訪れて、小惑星「リュウグウ」について学ぶほか、8月には大山で合宿を行い、県外の研究者と交流する予定です。

開講の背景に“教育の地方格差”

プログラムの特徴は「選抜制」です。1年目は、参加希望者の中から意欲と能力をもとに「1次選抜」されたおよそ40人が基礎的な実験などを経験します。そして1年目が終わった時点で、評価が特に高い10人が「2次選抜」され、2年目に進み、専門的な研究を行って才能を開花させます。
厳しい選抜がありますが、仮に2年目に進めなかったとしても参加した子どもの満足度は高く、米子高専が昨年度行ったアンケート調査では、参加者の97%、つまりほぼ全員が「理科や数学に対する学習意欲が高まった」と答えています。

去年プログラムを始めた責任者の粳間由幸(うるま よしゆき)教授です。都市部に比べて、学習塾や博物館などが少ない山陰の子どもたちの学ぶ意欲に応えたいと考えています。

米子高専  化学・バイオ部門  粳間由幸教授
すごく科学に対する熱量が高い児童生徒のみなさんが集まってるなっていう印象を持ちます。科学教育においても地方格差というのが結構生じてますので、その地方格差というのをなんとかなくしたい。

プログラムは、2026年度末までの5年間行われることになっていて、交通費や通信費以外は無料です。

小学6年 目指すは山中伸弥さん!

去年、1期生として入塾し、2年目に進んだ米子市の小学6年生、西上翔太さんです。あこがれているのは、山中伸弥さん。体のさまざまな組織や臓器になるiPS細胞を作り出すことに成功し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本を代表する科学者です。

小学6年生 西上翔太さん
テレビで世界で難病を抱えている人を見たときにこういう人がいるんだなって思って、そういう人たちの希望となるような薬をつくりたい。山中伸弥教授と肩を並べるというか、その上に行くっていうか、細胞を研究して人を救ったり人を助けたりっていうのができるような人になりたいです。

西上さんが書いたジュニアドクター育成塾への応募書類

塾への応募書類では、患者本人のiPS細胞を作る技術を向上させて、今よりも素早く、少ない費用で、安全に、移植することを目指したいと訴えました。
1年目は、化学や機械工学などの実験を繰り返し、幅広い知識を学びました。毎回、自宅に帰ってから、手書きのレポートをつくり、教授に提出しました。特に面白かった分子結合の実験は、パソコンで結果や考察をまとめ、発表会でプレゼンテーションもしました。

小学6年生 西上翔太さん
レポートづくりは朝の6時ぐらいに起きて7時までやったり。それでも間に合わない時は、夜中まで、遅い時は12時ぐらいまでやってました。大変だけど調べて知ることができるから楽しい。高専に行くと、学校では絶対に知ることができないことを今の学年で知ることができるから楽しいです。

父親の光弥さんもサポートしました。西上さんが分からないことは、夜遅くまで、高校生向けの教材で一緒に調べたといいます。

父親
光弥さん

夢を目指してがんばってるところで、こういうチャンスを与えていただいた。「学びたい」というのをすごく感じますので、邪魔しない程度にしっかりと支えていければと思います。

研究テーマは“がん抑制”

1年目に科学への情熱と、物怖じせずに自分の考えを表現する積極性が評価された西上さん。2年目の今年度は、2人の中学生とともに粳間教授の研究室に配属されました。
挑むのは、がん細胞の増殖を抑える研究です。野菜や果物の捨てられている部分から成分を抽出して効果を調べます。医療の課題とフードロスの問題を同時に解決できる可能性があるテーマです。

西上翔太
さん

おばあちゃんちに行ったら、しそジュースを飲んでて健康になったみたいな話を聞いたことがあるけど、昔からの知恵がある野菜を使って実験してみたいです。

粳間由幸
教授

面白いですね。しその捨てられるところをちょっと頂戴するのもいいかもしれないね。

3人は協力して研究し、ことし秋ごろに同世代が集まる学会で、成果を発表する予定です。

米子高専 化学・バイオ部門 粳間由幸教授
努力をし続けられることが最も大事な才能かなと思ってますので、彼ら彼女たちのやる気スイッチを上手に見定めながら指導していきたい。

小学6年生 西上翔太さん
楽しみで早くやりたいというかワクワクする気持ちです。地道にがんばって、山中さんみたいになれるようにがんばります。

ジュニアドクター育成塾は、科学技術振興機構の支援で全国各地で行われていて、米子高専だけでなく、東京大学や島根大学などあわせて21の大学や高専などが実施しています。参加した子どもたちが、将来、ノーベル賞を受賞できるような革新的な技術を生み出すことに期待したいと思います。

  • 大山 雄介

    米子支局 記者

    大山 雄介

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