南海トラフ巨大地震想定 DMVで高知から徳島へ その狙いは?
- 2023年09月12日
「防災月間」の9月の初日、南海トラフの巨大地震の津波を想定し、隣接する高知県と連携し、住んでいる自治体をこえて避難する「広域避難」などの訓練が初めて行われました。その狙いを取材しました。
南海トラフ巨大地震の被害想定は?
南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけてのプレートの境界で発生します。
地震の規模を示すマグニチュードが8から9の巨大地震が、今後30年以内に「70%から80%」の確率で発生すると予測されていて、国は、11年前に公表した被害想定で、最悪の場合、死者が32万人を超えると推計しています。
徳島県では、特に「揺れ」と「津波」による被害が甚大と想定され、最悪の場合、死者は3万1300人、全壊する建物は11万6400棟にのぼり、避難者は36万人を超えると想定されています。
この想定について、国や県は、最新の研究結果などを反映させて見直す議論を進めています。
9月1日の県総合防災訓練は
徳島県は毎年9月1日の「防災の日」にあわせて、大規模な総合防災訓練を実施しています。ことしは県南部の海陽町で実施された訓練は、南海トラフ巨大地震の津波で道路が寸断され、孤立集落が相次いだと想定して行われ、徳島県と高知県、それに陸上自衛隊など138の団体からおよそ800人が参加しました。
高知県東洋町の住民が避難する訓練では、線路も道路も走ることができるDMV=デュアル・モード・ビークルなどで、県境を越えて隣接する徳島県海陽町の災害時救助活動拠点である屋外交流施設「まぜのおか」に移動したあと、自衛隊のヘリコプターで避難しました。
また、宍喰中学校では、高知県の防災ヘリコプターが校庭に着陸し、中学生らが避難所の体育館にビスケットなどの支援物資をリレー方式で運びました。参加した中学生は「近い将来、この地域で起きるかもしれない南海トラフ巨大地震を想定しながら、みんなで協力しながらしっかりできた」と話していました。
徳島県の後藤田知事はいつ起きてもおかしくない南海トラフ巨大地震に対する危機感が高まる中、今回の訓練が課題の洗い出しのきっかけになったと話していました。
「自助、共助、公助のさまざまな立場でやれることは何かを確認できてよかった。顔の見える訓練、連携を行っていきたい」
専門家「訓練で連携を」
地域防災が専門の徳島大学の中野晋特命教授は、広域災害において、自治体を越えた避難行動や避難所の運営が必要だと指摘しました。
「現在は、災害の時、各自治体が避難所を設置し、避難行動が自治体の中で完結すると想定していることが多く、自治体を越えた『広域避難』の考えはまだ整っていない」
また、中野特命教授は、東日本大震災の時に、被災者が宮城県気仙沼市から隣接する岩手県一関市に県境を越えて避難したケースもあったということで、起こりうる広域災害への対応を考える上で、訓練を重ねていく大切さを訴えました。
徳島大学 中野晋特命教授
「徳島県海陽町と高知県東洋町のように、病院や買い物など、生活圏が一体化した地域では、広域連携の取り組みをしっかりやっていくことが大事だ。訓練を通じて、問題点や連携に必要な部分を探るのが重要だ」