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1泊126万円!丸亀城を独占する『城泊』って何!?

  • 2024年05月23日
2024年5月21日放送

いよいよ始まる『城泊』

7月から丸亀城で世界の富裕層をターゲットにした「城泊」がいよいよ始まります。
丸亀城の天守、邸宅を独占し、ラグジュアリーな体験をすることができます。
基本パッケージが1泊2日朝夕2食付きの2人利用で、税込み126万5000円と、ちょっと手が出ない金額です。
城がある丸亀市は、私が18歳まで過ごした場所ですが、果たしてそんな桁違いに高額なプランが成立するのか、少し疑問を抱きました。
どんな狙いがあるのか、新人の山下遥香ディレクター(高松市出身)と一緒に取材しました。

「延寿閣別館」

ゲストが宿泊するのは延寿閣別館
元々は旧丸亀藩の藩主だった京極家の屋敷でした。
中学生の時、サッカー部に所属していた私は丸亀城で頻繁に走り込みをしていました。
この邸宅の横を何度も通っていましたが、当時はあまり使われている様子がなく、正直に言うと、くたびれた、寂しい建物という印象でした。

その延寿閣別館を、城泊の運営会社の代表・他力野淳さんに案内してもらいました。
壁やふすまなど、建てられた当時のものをなるべく残し、丸亀市が2億3000万円かけて改装しました。

漆原アナ

延寿閣から丸亀の城下町が一望でき、まさに殿様になった気分でした。
どんなことを大切に改装したんですか?

他力野さん

とにかく当時のものを大事に残していきました
経年変化したふすまや天井など、建物がもつ雰囲気を残しました。
1回手を入れてしまったら、元には戻らないですからね。

ベッドには讃岐のり染のクッションが

さらに、讃岐のり染のクッション庵治石のブックエンドなど、香川の伝統工芸品のインテリアが随所に使われています。

京極家の家紋入りの豪華な食器で、夕食が提供されます。
オリーブ牛や旬の野菜、瀬戸内海の希少な海産物など、地場産物をシェフが調理します。 
天守を貸し切ってお酒を飲むことができるなど、特別な体験を売りに世界の富裕層の集客を見込んでいます。

これまで神戸迎賓館や京都市の元老舗料理旅館などを手掛ける

他力野さんの企業は、全国各地で文化財などを改装し、レストランや結婚式場などとして活用してきました。
文化財の保全は、人口減少で税収が減る地方都市にとって負担になりつつありますが、その新たな収益源を確保するビジネスモデルを構築しています。

保全するだけでなく、これからは活用していくのも大事ですか?

必要性を生むもうかる建物になると、使う人がいればもうかるわけですから、
全部を税金でやらなくてもよくなります。

建物を修繕するのは投資になりますけど、
お金として取り戻せる形になるんですね。
その形を観光、まち作りに取り入れていくべきだと思います。

丸亀にはもうかる建物があるんですね?

あるんですよ!いっぱいあると思っています!
官と民が一緒になって、地元のかたがたを含めて地域を経営していくんです。
自分たちで、地域を守って、稼げる地域にしていけば、維持発展していきます。
それが、持続可能なまち作りにつながると思います。

城泊を地元の経済効果につなげる

訪ねたのは城泊に商品を提供する和菓子店。
創業100年を超える丸亀の老舗です。

出迎えてくれたのは和菓子職人桑田桃子さん
実は、私の妹の小学校の同級生です。
久しぶりの再会でした!

城泊のゲストを対象に企画しているのが和菓子作り体験です。
昔の柱や梁が当時のまま残されている店舗の2階で行います。

私も城泊の宿泊者のつもりで体験させてもらいました。
挑戦したのは、初心者でも作りやすい楓の葉。
和菓子を作るのは初めてでしたが、職人の桑田さんが丁寧に指導をしてくれました。
少しいびつではありますが、15分ほどでなんとか完成させることができました。

さらに、一対一で、職人の巧みな技を目の前で披露してくれます。

花びらを表現するために、
手作業でひとつひとつ切っているとは思いませんでした…
見事な職人技で、ずっとくぎ付けになって見ていました。
はさみの音も心地いいですね~

桑田さん

花鳥風月を表すものというのは、日本独特の文化かなと思います。
細かな作業、指先、手先から生み出されるひとつのお菓子
ぜひ海外のお客様に、間近でご覧頂ければと思います。

この体験ツアーは、和菓子を作るだけでは終わりません。
できあがった和菓子を特別な空間で食べることができます。
国の登録有形文化財にも指定されている茶室です。

城泊の運営会社と市が企画したこのツアーは2人1組で5万1000円
普段は一般には開放してない、この茶室を使えるのも最大の売りです。

贅沢な時間でした。
一流の職人の技を独占できて、
普通なら入れない場所を見ることができる特別感がありますね。
今回、ツアーの声がかかったことはどう感じていますか?

地方でおりますと、職人の技術に対する金額としては
ちょっと高いんじゃないの?と評価を受けることもあるんですよね。
今回、私たちが思っている以上の評価をしていただけたことに
驚きとうれしさを感じております。

訪れてくださる海外の方だけではなくて、
丸亀市民の方、香川県民の方が、丸亀って香川って
すごい町なんだなと再認識をしていただける
いいきっかけになるといいなと願っています。

この和菓子作り体験の他にも、讃岐のり染など伝統工芸を体験できるツアーを多数用意しています。
城泊の売り上げを地域に還元する仕掛けとしています。

キーワードは「没入感」

インバウンド戦略に詳しい専門家の村山慶輔さんに聞きました。
いま、日本を訪れる富裕層は、現地でしか味わえない体験を重視する傾向が高まっていると指摘します。

村山さん

キーワードでいうと「没入感」
リアルでしか体験できないもの
例えば匂いとかですね、空気感とか、あるいは食事もそうですよね。
その空間に自分自身が身を置くっていうことも、
リアルじゃないとできないことです。
SNS、ネットが発達すればするほど
逆にこのリアル、アナログな部分の価値というのが高まってきていると思います。

体験型観光は、富裕層にとどまらないトレンドです。
価格帯にかかわらず「その場所でしかできない体験」の価値が高まっています

城泊による地元への経済効果をどう見ていますか?

城泊はいま各地で増えてきているんですが、
済経効果は大きいと思います。
明らかに客層が変わると思うんですよね、
全く見たことがないような客層が、
国内外から来ると思うんですが
地域の魅力を地域の方が再発見する、
そんな副次的な効果もあると思います
特に富裕層の方々が見ているような雑誌に
取り上げられるというところも含めてですね、
地域のブランディング効果はあると思いますね。

取材を終えて…

山下遥香ディレクター

ゲストが宿泊する「延寿閣別館」は2億3000万円をかけて改装され、
1泊2日で約126万円(2人利用)。
これらの数字の大きさから、
城泊は大きく期待されている事業なのだと率直に感じました。
今回の取材を通して、地元の方が城泊について納得し、
丸亀を訪れる観光客の方をあたたかく迎え入れられるかという視点も
大切なのではと思いました。
城泊の取り組みが一般市民にはどんなメリットがもたらされるのかについて、
さらに取材を進めていきたいです。

インバウンド戦略に詳しい村山さんが、
保護されてきたものを観光資源として活用する動きは、
国立公園や自然遺産など、文化財以外にも広がっているとお話されていました。
円安の今、インバウンドは追い風。今後の動きに注目していきます。

漆原輝アナウンサー

この城泊が「自分たちの街の価値を再発見するきっかけになる」
多くの人が話していたことが印象的でした。

私は18歳まで丸亀で過ごし、
地元にはなんちゃないな~と感じることも時々ありましたが、
いつも眺めていた丸亀城、伝統工芸品の丸亀うちわ
そして、個性豊かな讃岐うどん
私自身にとっては当たり前すぎて、
その価値を知ろうとしていなかったのだと感じました。
身近にあるのものの価値を改めて見つめて、
その付加価値を見いだしていくことが、
今後の丸亀、香川の観光の盛り上がりにつながると思います。

城泊が始まったら、富裕層の観光客がインフルエンサーとなって、
SNSで丸亀の体験を拡散し、外国人観光客が増えることを願っています。

ちなみに、5月1日から公式ホームページで予約を受け付けていて、
5月21日の時点で、海外からの2組を含めて7組の問い合わせがあり、4組が調整中だということです。

  • 漆原 輝

    高松放送局 アナウンサー

    漆原 輝

    香川県丸亀市出身。
    窓から丸亀城が望める場所に住んでいました。何百回、いや何千回と足を運んだ、思い入れのある場所です。

  • 山下 遥香

    高松放送局 ディレクター

    山下 遥香

    2024年入局の新人ディレクター。香川県高松市出身。
    香川に根差し、一人の生活者としての目線を大切にした番組をつくりたい!

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