展示 4

地上放送高度化に向けた映像・音声符号化技術

視聴環境に応じた映像・音声再生のために

展示概要

地上放送高度化に向けた映像・音声符号化技術を研究しています。ここでは、ご家庭のテレビやタブレットなど各デバイスに適した複数の映像を効率的に圧縮するマルチレイヤー符号化に対応したリアルタイムVVC※1デコーダーと、オブジェクトベース音響に対応したMPEG-H 3D Audio (3DA)※2デコーダーを展示しています。

マルチレイヤー符号化の動作原理

研究の目的

ご家庭のテレビやスマートフォン、グラス型デバイスなど、さまざまな視聴スタイルに適した映像サービスや、パーソナライズされた音声サービスを実現するための技術です。

課題

視聴スタイルごとに映像・音声を個別に伝送することは非効率です。限られた伝送帯域の中で、多様なニーズに適した映像・音声を効率的に伝送できる映像・音声符号化技術が必要となります。

どんな技術?

技研では、地上放送高度化の実現に向けて映像および音声の符号化技術の研究を行っています。
地上波では送ることのできる情報量は限られているので、4K/8Kなどの超高精細映像のサービスには、より効率的な圧縮符号化技術が必要不可欠です。

ご家庭の大画面テレビとモバイル端末のような小画面のデバイスとでは、画面サイズや処理能力が異なるため、それぞれのデバイスに適した解像度の映像を伝送する必要がありますが、それらの映像を個別に圧縮して伝送すると多くの伝送帯域が必要になってしまいます。

2020年に策定された映像符号化の国際標準方式VVCでは、解像度の異なる複数の映像を効率よく圧縮するマルチレイヤー符号化という機能があります。モバイル用の2K映像と家庭用の4K映像との相関を利用して効率的な圧縮を行うことで、個別に圧縮した場合と比較して、20%程度効率的に圧縮が可能となります。また、レイヤー状に複数のコンテンツを符号化する特性から選択可能な付加サービスの実現が可能となります。

今回、技研ではマルチレイヤー対応のリアルタイムVVCデコーダーを開発しました。4K/8Kのマルチレイヤー符号化により圧縮されたストリームをリアルタイムデコード可能です。
また、地上放送高度化では、音声の新しい仕組みとしてオブジェクトベース音響による放送を検討しています。MPEG-H 3DAによるオブジェクトベース音響に対応した符号化技術については展示番号9番オブジェクトベース音響による次世代放送システムで詳しく説明しています。

映像の符号化技術について岩村研究員が分かりやすくご説明します。

詳しい解説

マルチレイヤー符号化の原理や可能となる視聴者サービスの例の詳細を研究員が説明します。

これらのマルチレイヤー符号化の研究開発用に開発したVVCマルチレイヤー符号化コーデックのソフトウェア※3を以下リンクで公開しています。

過去の技研公開での展示

  • Versatile Video Coding (ISO/IEC 23090-3, ITU-T H.266)
  • ISO/IEC 23008-3:2019に準拠
  • このソフトウェアはVVenC(https://github.com/fraunhoferhhi/vvenc)として公開されているVVCソフトウェアエンコーダーを機能拡張してマルチレイヤー符号化をサポートしたものです。