展示 10

ラインアレイスピーカーによる音場合成技術

画面から飛び出す音の実現を目指して

展示概要

より臨場感・没入感を高い音響体験を目指し、テレビ画面から飛び出す音を実現するための研究を進めています。まるで音源がスピーカーから飛び出して、空間上を動き回っているかのような音のコンテンツを楽しみいただけます。

ラインアレイスピーカーによる音場合成の概要

研究の目的

将来、テレビの画面から飛び出す映像が実現したときに、音も一緒になって画面から飛び出させるための研究です。

課題

これまでは、遠くから音が鳴っているかのように音の強さや音色を変えることで遠近を表現しており、スピーカーよりも手前から音が鳴っているように聴かせることは困難でした。これを実現するためには、たくさんのスピーカーを細かく並べ、再生する音を個別に調整する必要があります。また、より臨場感を高めるために、テレビ画面から飛び出しながら移動や回転をするなど、より複雑な表現方法の開発が課題でした。

どんな技術?

技研では、テレビの前に置くことを想定して、直線状にスピーカーを並べたラインアレイスピーカーを使用した研究を進めています。

ラインアレイスピーカーを構成する多数のスピーカーから再生される音の強さやタイミングを個別に調整することで、音波の広がりをコントロールします。空間上に音の焦点(仮想音源)を作り出すことで、その位置で音が鳴っているかのように感じるため、まるでテレビ画面から音源が飛び出してくるかのような体験を味わうことができます。

詳しい解説

音場合成技術では、音波の物理的な挙動を数学的に表現し、アレイスピーカーを用いてその挙動を再現します。音源が飛び出したかのような効果を生み出すために、仮想音源の位置から放射される音波の広がりを合成できるようにラインアレイスピーカーを構成する個々のスピーカーから放射される音波を制御します。

ラインアレイスピーカー前方の特性をキャンセルするとともに、実現したい音波の広がりの特性を乗じることで、上記の効果を実現できます。

さらに、実際に存在する音源は、指向性を有し、移動や回転をするため、それらを考慮した音場の動的な特性を数学的に表現することで、より複雑で実物感のある音場を再現することができます。

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