【報道資料】 2022年5月19日
「技研公開2022」で展示

CMAF・マルチレイヤー対応VVCデコーダーを開発

NHK放送技術研究所(技研)は、映像符号化の国際標準方式H.266|VVC※1に準拠した、リアルタイム映像復号装置(デコーダー)を開発しました。

本装置は、複数の解像度や補助的な映像などを階層化して、効率よく圧縮したVVCの映像符号化信号から、表示デバイスの解像度に適した映像や、必要に応じて補助的な映像を取り出すことができます。通信の動画サービスで利用が進むメディアフォーマット(CMAF※2)に対応していることも特徴です。

NHK技研では、映像符号化技術など周波数利用効率を向上させる技術の研究開発とともに、さまざまな表示デバイスの普及による視聴スタイルの多様化に対応し、放送と通信を融合させて、視聴者が多様なサービスを享受できるようにする技術の研究開発を進めています。

テレビやタブレットなどのさまざまな表示デバイスに向けて、それぞれに合った解像度の映像信号を個別に伝送するのは効率的ではありません。開発したデコーダー(ソフトウェアにより実現)は、1つの信号から、表示デバイスに適した複数の解像度の映像を取り出すことができます。また、補助的な映像がレイヤー化されている場合は、受信側で自由に映像を選択することができます。

また、通信で利用が進み、地上デジタルテレビジョン方式の高度化でも技術検討されているCMAFによって伝送されたVVC符号化信号を、本デコーダーは受信することができます。

今回、4Kと8Kの2つの解像度の映像をマルチレイヤープロファイル※3により圧縮符号化し、CMAFで伝送した信号を本装置でリアルタイムに受信・復号して、4K、8Kそれぞれのディスプレーに適した品質で出力できることを初めて確認しました。今後は、実用化に向け、国内標準化の取り組みを進めていきます。

写真1. 4K映像と8K映像のマルチレイヤー符号化信号(ストリーム)を受信・復号して、4Kと8Kのディスプレーに表示している様子(左の装置がデコーダー)
※技研公開2022では、2K映像と4K映像のマルチレイヤーストリーム、および4K映像と4K補助映像(例えば解説用CG映像など)のマルチレイヤーストリームの復号デモをご覧いただきます。
表1. 開発したリアルタイムVVCデコーダーの諸元
符号化方式 VVC(ISO/IEC 23090-3|Rec. ITU-T H.266)
対応プロファイル Main 10、Multilayer Main 10
対応レベル(最大) 6.3
インターフェース 入力 RJ45 (1000base-T)
出力 3G/12G-SDI×8
入力信号フォーマット CMAF(ISO/IEC 23000-19)/MMT(ISO/IEC 23008-1)
出力映像信号
(代表的なもの)
解像度 1,920×1,080、3,840×2,160、7,680×4,320
フレーム周波数 [Hz] 59.94、119.88
レイヤー数 (最大) 3

※1 Versatile Video Coding: 2020年7月にISO/IECとITU-Tで策定された映像符号化の標準方式。新4K8K衛星放送で用いられている方式(H.265|HEVC(High Efficiency Video Coding))よりも圧縮効率が高い。

※2 CMAF (Common Media Application Format): 通信による動画配信サービスで標準的に使用されているメディアフォーマット。本装置では、新4K8K衛星放送で用いられている多重化方式MMT (MPEG Media Transport)による伝送に対応しています。

※3 マルチレイヤープロファイル: VVCに規定された機能セット(プロファイル)。複数の異なる映像を層(レイヤー)状にして1つに符号化した信号を、選択した層(映像)の組み合わせで再生できる。代表的な例は、異なる解像度の映像の再生(低階層:低解像度映像、上位階層:高解像映像)、異なるコンテンツ(低階層:メインコンテンツ、上位階層:補助コンテンツ)など。