NHKスペシャル

金メダルへの道 “一糸乱れぬ”挑戦
女子団体パシュート

ピョンチャン五輪で金メダル最有力のスピードスケート「女子団体パシュート」。
今シーズンのW杯で3戦3勝、すべて世界記録を塗り替えるという快進撃を続けている。
3人が隊列を組んで、空気抵抗が大きい先頭を交代しながら2400m滑るパシュート。
金メダル争いは、日本とスケート王国オランダとの一騎打ちだ。オランダは個人種目トップ5の選手が並ぶ。一方、日本は個人種目でもメダルが期待される髙木美帆選手(23)以外は世界トップ10にすら入っていない。この実力差を覆す日本の武器は2つ。年間約300日帯同するチーム練習で培った「一糸乱れぬ隊列」。空気抵抗を極限まで抑えるため、時速50kmで選手の間隔は1mを切る。そしてオランダの半分の距離と時間で行う「高速の先頭交代」だ。
番組では、日本チームの戦略・滑りをVRや、最新のコンピューターシミュレーション技術などを駆使して徹底解剖。
今シーズン、金メダル獲得の秘策を練って賭けに出た日本チーム。悲願への道のりを記録する。

放送を終えて

知れば知るほど奥が深い。パシュートを取材して最も強く感じたことです。日本チームは、より速く滑るために独自の戦略を磨き、戦略の変更を駆使することで、次々と世界記録を更新していきました。その過程に、ここまで突き詰めることが必要なのかと驚くとともに、これが世界の頂点を極めるということなのだと感じました。番組ではパシュートの魅力を伝えるともに、突き詰めて高みを目指していく姿が、皆さんの心に訴えることがあればと思っています。
この文章を書いているのは、パシュートのレース前。まだ結果はどうなるかわかりません。ライバルであるオランダも上り調子です。しかし、ここまで突き詰めて挑戦を続けてきた日本チームの挑戦が実を結び、多くの人たちの心に残る大会になることを心から願っています。
スポーツ番組部 中川直樹 

取材の始まりは2009年、中学3年生の髙木美帆選手との出会いでした。男子に混じってサッカーの大会に出場しながらスピードスケートでオリンピックを目指していた15歳は「五輪はスケート人生の中で絶対に行く大会」と力強く話してくれました。その数ヶ月後、競技史上最年少でバンクーバー大会に出場。団体パシュートでは控えとしてエントリーされます。出場機会はありませんでしたが、先輩たちが獲得した3つの銀メダルを髙木選手にかける光景が強く印象に残っています。その姿を見たときに、いつか将来自らの力で輝く色のメダルを下げる日が来ると信じて8年間取材を続けてきました。スピードスケートの中でも日本のお家芸とされる500mと比べ、決してメジャーな種目ではありませんが、取材を深めれば深めるほど奥が深く、面白い「団体パシュート」。この魅力を伝えたいと、選手やコーチ、科学スタッフなど競技に関わる多くの方々に協力していただきながら取材を深めてきました。最大のライバルに打ち勝つために、仲間やコーチたちとともに「世界で最も厳しいトレーニング」に挑み続け、大きな壁を乗り越え続けてきた日本の女子団体パシュート。オリンピックの大舞台で4人の輝く笑顔を見せて欲しいです。
映像取材部 近藤健太