NHKスペシャル

未解決事件 File.02 オウム真理教
「オウム真理教 17年目の真実」「オウムVS警察 知られざる攻防」 

荻原聖人さん、豊原功補さん

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日本中に大きな衝撃を与えながらも「迷宮」入りしてしまった数々の未解決事件。戦後のエポックとなりながら、いまなお真相は未解明のまま、時代の病理となった難事件。「未解決事件」は、日本中に大きな衝撃を与え、今も生々しい記憶を残す「事件」を実録ドラマとドキュメンタリーで徹底検証し、未来へのカギを探るシリーズ。大きな反響を得た「File01グリコ・森永事件」の放送後、NHKにある要望が届いた。「オウム真理教の事件を取り上げてほしい」。地下鉄サリン事件の遺族からだった・・・。
1995年3月20日、首都直下で起きた世界初の化学兵器・サリンによる無差別殺人。通勤ラッシュの時間帯を狙った犯行は、6000人を超す死傷者を出した。実行犯として逮捕されたのは「オウム真理教」の幹部たち。元医者や科学者といったエリートたちによる犯罪に、社会に大きな衝撃が走った。事件を首謀したのは「オウム真理教」の教祖だった麻原彰晃、本名・松本智津夫死刑囚。松本死刑囚は事件の2か月後に逮捕され、坂本弁護士一家殺害など 13の事件で殺人や殺人未遂に関与して死刑が確定した。一連の事件に関する裁判は16年にも及び、1つの組織としては戦後最多の13人が死刑を言い渡されたが、多くの謎や課題が残されたままとなった。今年明け、特別手配中の平田信元幹部が出頭し、事件は再び注目を集めている。
番組では、NHKが独自に入手した教団内部の700本を超す音声テープと元幹部たちの証言をもとに、教団の暴走への軌跡を初めてドラマ化。さらに死刑判決を受けた元幹部との手紙のやりとりや、警察関係者への徹底取材によるドキュメンタリーで、世界初の化学テロ「サリン事件」がなぜ起きたのか明らかにする。国内外から今なお注目を集め続けるオウム真理教の事件。その「闇」に光を当て、後世への教訓を導きたい。

放送を終えて

6月3日午前に再放送を無事終え、安堵(あんど)したその夜、「菊地直子容疑者逮捕」の一報が入ってきました。番組中で菊地容疑者の当時の映像と肉声も流れたため、あまりのタイミングに驚きを隠せないまま、取材班の記者やディレクターはニュース対応に追われることになりました。その後、高橋容疑者も逮捕されましたが、番組の放送直後に、17年間膠着(こうちゃく)状態だった事件がここまで急速に動くとは誰1人として予想していませんでした。しかし、番組ホームページ上にオウムの特別手配犯の写真を掲載し、目撃情報を募るなど、「未解決事件」を取り上げる以上、「番組が事件解決の一助にならないか」というのが取材班に共通する願いでした。
番組では、「オウムはなぜ暴走したのか」「教団が関わったとされる事件がいくつもありながら、なぜ化学テロを止められなかったのか」を解明しようと取材を続け、新たな事実を伝えました。そんな中、平田信、菊地直子、高橋克也容疑者の逮捕によって、再びオウム裁判が始まることになります。これまで以上の真実が明らかにされるのか。事件を風化させないためにも、また事件の教訓をすくい取るためにも、「未解決事件」の取材班はその行方を注視していきたいと思います。

ディレクター 葛城豪