NHKスペシャル

終戦60年企画 赤い背中
~原爆を背負い続けた60年~

背中を真っ赤に焼かれ、うつ伏せで横たわる少年のカラー写真がある。原爆被害の悲惨さを物語る一枚として有名なこの記録写真を、長崎市に住む谷口稜曄(すみてる)さん(76歳)は名刺に印刷し、核廃絶を世界に訴え続けている。写真の少年は60年前の谷口さん自身だ。
16歳の夏、谷口さんは郵便配達中に原爆の熱線を浴び、背中を激しく焼かれた。1年9か月間、うつ伏せのまま地獄の苦痛に耐える。奇跡的に生き残ったものの、未だに背中の傷は完治せず原因不明の肉塊が繰り返し出現する。だが谷口さんにとってはキリキリ疼(うず)く背中の痛みこそ、平和を訴える原動力となってきた。
その不屈の歩みを、妻・栄子さん(75歳)が支えている。二人は長崎の街を見下ろす山の中腹に小さな家を建て、戦後を生きてきた。結婚、出産、子どもの成長、そして孫の誕生…。夫婦に訪れる喜びには常に、放射能への不安が背中合わせのようにつきまとう。
癒えることのない背中の痛みを抱えながら訴え続ける谷口さんの戦後を見つめる。

  • 写真を掲示して自らの体験を語る谷口稜曄さん
  • 谷口さん夫妻(妻・栄子さんに薬をぬってもらう夫・稜曄さん)