NHKスペシャル

大アマゾン 最後の秘境 第1集
伝説の怪魚と謎の大遡上

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「誰も見たことがない大河のさらに奥へ」をコンセプトに、地球最後の秘境とも言われる世界最大の川、アマゾンの奥深くにNHKのカメラが分け入り、これまで撮影されたことのない未知の世界を描く4本シリーズの第1集。テーマは、年に一度、数百万匹の魚たちが大遡上する様子と遡上する魚を追いかける幻の巨大魚の姿をとらえること。濁流渦巻くアマゾン川の本流では、水中にどんな生物がいるのか見ることは不可能。取材チームは、およそ一年のリサーチを費やし、ついにアマゾンの真ん中に、透明な水が湧き上がる「神秘の泉」を探し当てた。そして、そこで繰り広げられる怪魚たちの驚きの生態を高画質の4Kハイスピードカメラで撮影することに成功した。中でも、デンキウナギが自ら発電する電気を使って捕食する克明な映像は、世界で初めて、学術的にも貴重な映像だ。また、魚たちの大遡上を追ってアマゾン最上流のアンデス山脈へと向かい「奇跡の瞬間」の撮影に挑戦、下流域では魚の群れを襲うアマゾンカワイルカや体長2メートルの幻の巨大魚、ピライーバの姿を捉えることにも成功。川や魚と密接に関わって暮らす人々の暮しも描きながら、これまで誰も見たことのないアマゾン川の水中世界を描く。

放送を終えて

2016年8月に開催されるリオデジャネイロオリンピック。そのオリンピックイヤーで注目されるブラジルにある、世界一の大河アマゾンを舞台に、未だ見たことのない秘境を描き出す大型シリーズ「大アマゾン」。その第1集では、濁流の中に渦巻く魑魅魍魎、魚たちの世界を紹介しました。

アマゾンは、民放でも何度も取り上げられているので、生半可な映像ではNHKスペシャルの視聴者に満足していただけないと考え、自然番組の原点である、「誰も見たことのない映像」、濁流の中に潜む怪魚たちの生態と数百万匹の魚たちが繰り広げる大遡上の撮影にこだわりました。

しかし、その撮影は、簡単なことではありません。魚の生態を撮るためには、10m以上は透明度がないと難しいのに、アマゾンの水は、基本的に泥水か紅茶色で、水中では1mも見えれば御の字なのです。
本業は熱帯魚屋という異色のコーディネーターが持つアマゾンネットワークをフルに使って見つけてもらった、透明度30m以上ある泉を初めて見た時は、これで撮影できると本当にホッとしました。
こんなに透明な水でアマゾンの魚たちの自然な生態をとらえた映像はこれまで世界でも例が無く、特にデンキウナギの捕食シーンのハイスピード撮影は、間違いなく世界で初めての映像です。
他にも、アンデス山麓で起きる魚たちの一斉遡上の様子や、ピンク色のアマゾンカワイルカが魚を追いかけ、逃げ惑う大量の魚が水面から飛び出すシーンなど、現場で見た興奮をそのまま番組に詰め込みました。
その映像を盛り上げてくれた佐藤正治さんの素晴らしい音楽と松田龍平さんの怪しげなナレーション。何が起きるかわからないアマゾンの奥深さと「大アマゾン」のシリーズとしての世界観が作り上げられ、理屈抜きに見ていただける異色のNスペに仕上がったと思います。

アマゾンに初めて行ったのは2001年。この15年間に、その環境は確実に変化しています。ネグロ川という大きな支流には橋が架かり、各地で活発になっている経済を支える発電をするために沢山のダムが作られました。1年で10m以上変動する川の水位は、毎年のように「今年は異常だ」という声が聞かれます。30年ほど前は、普通に見られたと言う魚の大遡上も、ダムや乱獲の影響でブラジル国内では、ほとんど見られなくなりました。日本の20倍の面積を誇るアマゾンでも、その環境は目に見えて失われてきているのです。
番組を見ていただいた方に、失われつつあるアマゾンの自然の奥深さと美しさが伝わっていれば、これほど嬉しいことはありません。
(ディレクター 岡部聡)