NHKスペシャル

ホットスポット 最後の楽園 第1回
謎の類人猿の王国 
~東アフリカ大地溝帯~

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アフリカ大陸の東部を南北に縦断する巨大な谷・大地溝帯(グレート・リフト・バレー)。幅35-100km、総延長は7,000kmにおよぶ大地の裂け目だ。その西側が赤道と交わるアルバタイン地溝の一帯は、生物多様性の豊かさや人類が誕生した舞台として注目されている。ダイナミックな地殻運動が、周囲に氷河を頂く高山からサバンナ、広大な湖、そしてうっそうとした熱帯雨林という多種多様な環境を生み出した。標高5,000mの高山には、高さ3mを超える巨大植物が林立し、ふもとの湖の湿地帯では恐竜のような姿をした怪鳥が大きな獲物を狙う。この地域はまたゴリラやチンパンジーなど人類の親戚とも言える類人猿たちが進化し今も暮らしている貴重な場所だ。番組ではナビゲーターの福山雅治が巨大なマウンテンゴリラと遭遇、類人猿たちの進化の足跡を探りながら、ヒトに近いという謎に包まれた類人猿ボノボの驚きに満ちた素顔にも迫っていく。

放送を終えて

福山雅治さんがナビゲーターとなり、2011年に放送し、好評を博した「ホットスポット最後の楽園」。第2シリーズをスタートさせるにあたり、最初にどこを取り上げるのか、それはスタッフの間で議論となりました。「東アフリカ大地溝帯」に決定した大きな要因は、「私たち人類に近い大型類人猿たちが暮らしていること」と「マウンテンゴリラ」の存在でした。マウンテンゴリラは、世界最大の霊長類。大きなものだと体重は300キロにもなります。福山さんがマウンテンゴリラに遭遇する、想像しただけでワクワクしませんか?
さらに人類進化に結びつくような壮大な進化が起こった舞台を1本目で紹介することが、一段とスケールアップした第2シリーズの口火を切るにはふさわしいと考えたからです。

自然番組のディレクターに求められるもの、それは「忍耐」です。相手は自然の生きものたちですから、「何時にどこそこに行きますからよろしく」「この道をカメラに向かって歩いてください」などの打ち合わせすることは出来ません。ですから、撮影にはどうしても日数がかかってしまいます。しかし、今回私たちに与えられた時間は10日間。番組ではサスライアリとチンパンジー、ゴリラにハシビロコウと福山さんとの出会いをご紹介しましたが、通常だと、これだけのものを撮影しようとすると、1ヶ月はかかります。しかも、「ゴリラはきっと藪の中に隠れてほとんど出てこない」、「ハシビロコウなんて発見するのも難しいうえに、運よく見つけられてもずっと立っているだけ」、現地から入る情報は何とも悲観的なものばかり。

さて、どうしたものか・・・。現地在住のコーディネーターに何度も現場へ足を運んでもらい、専門家とも連携して、生きものたちがいつ頃どこに現れるのか、撮影直前まで徹底的に調査しました。福山さんが持っている「引きの強さ」や、スタッフの「念」も大いに味方し、結果的には想定以上のものを撮影することが出来ました。

そして今回幸運だったのは、福山さんが単に生きものと出会うだけでなく、チンパンジーの攻撃的な一面をかいま見たり、ハシビロコウの捕食の瞬間を目撃するなど、生きものたちが辿って来た進化の道筋を実感出来るような行動を観察することが出来たことです。この番組をご覧になって、生きものたちに興味を持っていただくのはもちろんのこと、進化の不思議に思いをはせていただけたなら幸いです。


(ディレクター 北 誠)