NHKスペシャル

中国文明の謎 第3集
始皇帝 "中華"帝国への野望

中井貴一さん

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世界の古代「四大文明」の中でも、唯一つ中国文明だけは、数千年にわたってほぼ同じ地域で同じ文明を維持してきた。その理由を文明誕生の歴史に探るシリーズ。第3集は、始皇帝が生み出し、その後現在の中華人民共和国にまで継承された「中華」という世界観に迫る。
紀元前770年頃に始まる春秋戦国時代は、群雄が割拠した激しい戦乱の時代だった。その戦乱を終わらせ、初めての統一王朝を築いたのが「秦」の始皇帝である。最近の研究で、「秦」が力を伸張させた理由は、軍事力や経済力だけにあるのではないことがわかってきた。「秦」は、様々な民族を支配するにあたって「夏」王朝の権威を巧みに利用していたのである。始皇帝の統一はどのようにして成し遂げられたのか?そして、そのとき「中華(中夏)」という世界観はどのような役割を果たしたのか?近年発掘された鮮やかな色彩の兵馬俑、秦の起源を物語る遺跡など、最新の考古学の成果を通して、始皇帝の統一帝国の秘密に迫っていく。

放送を終えて

日中問題が紛糾し激しい反日デモが始まったのは、長期の中国ロケを終えて帰国した当日でした。取材期間中には予想もしなかったような日中関係の変化の中、古代中国の歴史をどのように伝えたら良いのか。ヒントとなったのは、番組のナビゲーター役として参加していただいた中井貴一さんが、7月の現地ロケの際に語った言葉でした。
「西洋の人と接する時は、日本人と見た目が違うから価値観も違うだろうと思って接するんだけど、中国の人は見た目が同じだから、同じ価値観を持っているだろうと思って最初に入ってしまう。そこにギャップが生まれてしまったりする。でも過去の国の成り立ちとか歴史を探ることで、ここに違いが生まれたんだってことが理解できれば、お互いに理解できるかもしれない。それは日本人として誇りを持って生きることにもつながると思う。」
中国には、広大な大地で言葉も文化も違う人々が常に接触しぶつかりあってきたという、日本とはまた異なった歴史があります。地理的に隣国であることを避けられない中国。その歴史を振り返ることで、互いに違うところと似ているところをきちんと認識しあうことから始める、今回の番組が少しでもそのとっかかりとなればと願っています。

ディレクター 渡辺由裕