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海老名のNPO パレスチナ・ガザで子どもの心の支援始める

  • 2023年12月18日

激しい戦闘が続くパレスチナのガザ地区。多くの子どもたちが犠牲になり、生き残った子どもたちも過酷な状況に置かれています。
こうした中、避難所で子どもたちの歓声があがりました。
海老名市にあるNPOが新たに初めた支援の中での出来事です。
日本から集まった寄付で、子どもたちを笑顔にするための活動が始まりました。

20年間ガザの子どもたちを支援

桑山紀彦さん

医師の桑山紀彦さんです。
心療内科が専門で、海老名市のNPO 「地球のステージ」の代表をつとめています。
20年前から、ガザ地区南部で、心に傷を負った子どもたちの支援にあたってきました。
現地スタッフの育成も行い、2021年にはガザ地区南部のラファに支援センターを設けました。
毎日現地のスタッフと連絡を取り合っています。(10月に取材した記事はこちらから)

現地スタッフとオンラインミーティング(12/9)

現地のスタッフからは、「トラウマを抱えていて、家族を失った子どももいる。孤独だし、他の人に対して反応できなくなっている」という報告も上がりました。

こども5000人が死亡 心の傷も

撮影:モハマッド・マンスールさん

パレスチナの保健当局によりますと、武力衝突が始まってから、ガザ地区ではこれまでに1万8787人が死亡し、多くが子どもや女性とされています(12月16日時点)。
生き残った子どもたちは深刻な心の傷を負うのではないかと懸念されています。

授業は休止 生きるために働く

撮影:モハマッド・マンスールさん

地球のステージによりますと、ガザ地区南部のラファ市内の学校は避難所となっています。
授業は行われておらず、現地スタッフでジャーナリストのモハマッド・マンスールさんが撮影した写真には、子どもたちが食料や水を運んだり、太陽光パネルを使ったスマートフォンの充電を手伝ったりしている様子が写っています。

撮影:モハマッド・マンスールさん

電気が来ない中、電動ミシンを動かすために足でペダルをこいで、父親の仕事を手伝う子どもの姿も見られます。

撮影:モハマッド・マンスールさん

NPOによりますと、子どもたちは常に空爆や飢え、それに病気の恐怖にさらされているため、落ち着きがなかったり、夜眠ることができなかったりと不安な様子が見られるということです。

天井のない監獄

撮影:モハマッド・マンスールさん

高い壁に囲まれるガザ地区は「天井のない監獄」といわれ、子どもたちは今回の武力衝突前から、大きなストレスを抱えているとされています。
国際的なNGOセーブ・ザ・チルドレンが2022年に行った調査では、子どもの8割が恐怖や緊張、悲しみといった苦痛を感じていたほか、半数以上が自殺を考えていると回答しました。

子どもの心の支援を

桑山さん

桑山さんは、このまま放置すると将来重いPTSD=心的外傷後ストレス性障害になる可能性が高まるとして、一刻も早い支援が必要だと判断しました。

桑山さん
爆弾を落とされる、空爆を受けるというのは、『あなたは死んでもいい存在なんだよ』というものすごいマイナスのイメージ を突きつけられることになります。これ以上何もしないで過ごしてしまうと、多くの子ども達が将来、重い心の病になる可能性があります。ハンユニスの侵攻は気になりますが、今やらないと手遅れになってしまう。

桑山さんたちは、新たな支援のプログラムを企画しました。
「心理的応急処置」と呼ばれる、子どもたちのPTSDの予防や軽減につなげるプログラムです。
必要な費用は、国内各地から寄せられた寄付をあて、実際の支援は、現地スタッフが担うことになりました。

桑山さん
外国人が入れる状況じゃないのは残念です。僕らは見ているだけで何も出来ないという苦しみを感じてきた。でも20年かけて人が育ってきて、その人達がいま心のケアをやれると判断したので、応援して、資金を送り、集まる機会をつくるというのが日本人の役割です。実際やるのはパレスチナ人で、彼らが一番わかっているので、 うまくやってくれると思います。本当に頼もしい仲間達です。

「今までで一番良い日だった」

そして今月10日からガザ南部のラファ市にあるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の学校で、支援を始めました。

学校は現在、避難所になっています。
11日に訪れた学校では、子ども約3800人を含む約9000人が避難生活を送っていて、多くの子どもが支援を希望しました。
この日は6歳から15歳までのおよそ150人を対象に支援を行いました。

まず始めに行ったのは、現地で親しまれている民謡に合わせて、膝を叩いたり、手を挙げたりする遊びです。
狭くて寒い避難所での生活で凝り固まった体を少しずつほぐしていきます。
最初は硬い表情の子どももいましたが、音楽に合わせて体を動かすことで、どんどん元気になっていきます。

孤独やわらげ連帯感持って

 

続いて行ったのは、輪になって音楽に合わせて回るゲームです。
音楽が止まったら子どもたちも止まる、椅子取りゲームに似たゲームだといいます。
みんなで同じ動きをしたり、協力したりすることで、連帯感を持ち、孤独感を和らげる狙いがあるといいます。

支援の終盤行われたのは、みんなの前で歌を歌うプログラム。
他の人の前で自分らしさを表現することで、自尊心を取り戻してもらおうというねらいです。
子ども達の笑顔に包まれて終わったこの日の支援。
終了後に、たくさんの子ども達が現地スタッフのモハマッドさんのカメラに向かって今の思いを語りました。

北部から避難してきた女の子
いろんなところに避難する度に、ミサイルの音がしてすごく怖かったし、生活がすごく大変。もう空爆の音は聞きたくないです。広場で遊ぶ時もミサイルが来るかもしれないと思って怖くて遊んでいません。
だから今日はすごくうれしいです。遊んで、楽しんで、生きていく
元気が出ました。毎日こんな風だったらいいな。私たちが遊べるようにしてくれた日本人のみなさんに感謝します。今日はすごく楽しかったです。本当にありがとうございます。

戦争には芯から疲れました。食べ物も飲み物もありません。戦争が終わって欲しいです。空爆が怖くて夜は眠れずに、ずっと起きています。きょうはすごく楽しかった。いっぱい遊んでくたくたです。

避難した先でも、近くのモスクが攻撃されました。すごく怖くて、ラファに来ました。
きょうはすごく面白かった。今までで一番いい日でした。避難してきた人と一緒に遊んで、今日はすごく楽しかった

モハマッド・マンスールさん

活動を終えたモハマッドさん
避難所の状況は非常に悪く、水を得るのも困難で、食べ物も非常に乏しくて、子どもたちはまさに健康面、栄養面、精神面の支援を必要としています。そうした中で今日のこの活動は非常に素晴らしいものでした。 子どもたちはこの活動で嬉しさを表現していました。

NPOはラファ市内の4つの学校を毎週1回ずつまわり、今後3ヶ月に渡って支援していきたいとしています。

日本からの関わり持ち続けて

「地球のステージ」桑山代表
外側には苦しいことばかりですが、心の中に火をともすことで、それがエネルギーになると信じています。子どもの心に火がともって笑顔になると、今度は大人が元気を得て、もう1日、もう一週間生き延びていこうという頑張る力を得ていきます。そして、ガザの子どもたちが必死に生き抜こうとして希望を捕まえようとする姿を見た人が、『休戦や停戦を』って、『もうやめよう』って、動いてくれるんじゃないかといういちるの希望も持っています。
われわれが遠い国日本から応援している、それだけでも彼らがまた頑張って生きて
いこうという気持ちの原動力につながると思う。だから、日本人の関わりというのは、いつも求められているし、これからも必要とされると思います。

取材を終えて

現地では、水も食料も乏しく、電気も通らず、インターネット環境も非常に悪い状況が続いています。そうした中で、モハマッドさんが支援活動を進める傍ら、太陽光発電で機材の充電行い、映像を送ってくれることになりました。
当初、映像が送られてくる予定だった日、インターネット回線が切れて映像が途中までしか送れませんでした。翌日、8時間もかけて映像を送りなおしてくれました。
戦地でそれを行うことがどれだけ大変な作業だったかと考えると、モハマッドさんの「1人でも多くの日本人に届けたい、届けて欲しい」という強い思いを感じました。
「世界から忘れ去られることが最も怖い」と話すモハマッドさん。
いつか実際に顔をみて話が出来る日まで、決して忘れずに関心を持ち続けたいと思います。

地球のステージのホームページはこちらです(※NHKのサイトを離れます
寄付についても受け付けています。

  • 佐藤美月

    横浜放送局 記者

    佐藤美月

    2010年入局 川崎市を担当。「すべての子どもが生き生きと暮らせる社会」をテーマに取材を続ける

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