共働きの家庭が増え、日中に子どもと離れて暮らす機会が増えています。子どもと離れ離れになっているときに子どもの安全を守るには、普段、家族でどのような備えをしておけばよいのでしょうか。
(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)
子どもとママに特化した防災情報サイト「いつもしも」。子育て中の女性スタッフが中心となり、子どもが楽しみながら防災について学べるコンテンツや、ママたちが実践しやすい防災術などを紹介しています。東京・練馬区でWEB広告事業を手掛ける会社が4年前に始めました。
「一般的な防災情報は万人向けの情報で、世間のママたちにはハードルが高かったり、自分の子どもの事情や年齢に合っていなかったりするものも多いと感じていました。それならば、子育て中のママさんでも取りかかりやすい防災情報を発信できたらと思い、サイトの運営を始めました。」
(防災情報サイト編集部 えるふさん ライターネーム)
サイトが特に大切にしているのは、ライターみずからがとことん検証することです。実際に試してみることで見えてきたリアルな意見を記事にしています。これまでの固定観念にとらわれないママ目線の情報が共感を得ているといいます。
ライターのトコさんは災害用の手回し式の充電ラジオを試しました。実際に使ってみると、レバーを回すのに意外に力が必要なことがわかったと言います。ただでさえ気力や体力を消耗する災害時には、手回し式よりも乾電池式のラジオを備えておいたほうが安心だとトコさんは感じました。
さらに、災害時に予想されるのが停電です。明かりがない環境での生活は子どもにとって大きなストレスになります。頼りになる防災グッズとしては懐中電灯やランタンが一般的ですが、トコさんは光や音を出すおもちゃも有効だと考えています。おもちゃで遊ぶことで、暗闇での子どもの不安を少しでも減らしたいというママならではの発想です。
「災害時に命を守るということは大前提として大切ではあるんですが、ママ目線で防災を考えたときには、子どものメンタルケアや、日常に戻るまでの生活を少しでも快適に過ごすことができる方法を考えることも、すごく大事なことだと考えています。」
(防災情報サイト編集部 トコさん ライターネーム)
また、子どもが大きくなると処分してしまうことの多いベビーグッズも防災グッズとして使えるといいます。吸水性の高いオムツは携帯用のトイレとして、また、ベビーカーは避難生活が長期化した際のキャリーカートに代用できます。
ママ目線の防災情報サイトを見て、備えをはじめた家族がいます。町田市で暮らす飯田麻美さん。働きながら中学2年生と小学6年生の子どもを育てています。
「通勤中に災害が起きて、すぐに家に帰れる場所にいればいいんですけど、もしも帰ることができなかったらと思うと、子どものことがすごく心配で不安です。」
(飯田麻美さん)
麻美さんは、防災情報サイトを参考に、次男の類翔(るか)くんと一緒に避難場所までのルートを歩いてみることにしました。災害を想定して歩くことで、これまで気づかなかった危険を見つけようというのです。
まず注目したのはマンホールです。地震の影響でフタがずれていた場合、つまずいてケガをするおそれがあります。災害時には電柱や建物などの倒壊に目が行きがちですが、足元にも注意が必要なことを確認することができました。
次に麻美さんが注目したのはバス停でした。一見、大きな危険にはつながらないように思えますが…。
「バス停が倒れてきたときに、ママならおさえられるけど、類翔が1人だったら下敷きになってしまうから、ちゃんと周りをよく見て歩くんだよ。」
(飯田麻美さん)
実際に親子で歩いてみると、大人にとっては危険とは思えなくても、子どもにとっては危険で不安に思う場所が多いこともわかりました。
さらに大切になるのが家族との連絡手段の確保です。携帯電話や固定電話は通信規制などの影響で災害時には使えないことが予想されます。
このため、災害時に強い公衆電話の使い方も確認しました。類翔くんが公衆電話を使うのはこの日が初めてです。類翔くんは麻美さんに教わりながら、災害用伝言ダイヤルを体験し、お父さんに伝言を残しました。
「パパ、大丈夫?元気?僕はいま元気だよ。」
(類翔くんのメッセージ)
実際に子どもと一緒に災害への備えを考えることで、今まで気づかなかったこと見えてきたという麻美さん。子どもの好きなカレーや体調が悪いときに食べているおかゆなど、普段、子どもが食べ慣れたレトルト食品を非常食に加える工夫も始めたそうです。
「お母さんじゃないと気づけない点がたくさんあったので、日ごろから子どもとよく話し合って、備えておいたほうが、より安心感を得られるなと感じました。」
(飯田麻美さん)