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  • 2024年5月24日

長期金利上昇 住宅ローンや生命保険 プラス面とマイナス面 今後の見通しは

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国債は価格が下がると、金利が上昇するという関係にあります。5月22日の債券市場では日本国債を売る動きが強まり、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りが午後2時すぎ、およそ11年ぶりに1%台をつけました。長期金利の上昇でどんな影響が考えられるのかや、今後の見通しなどについてまとめました。

大規模な金融緩和策 マイナス金利政策

長期金利は2000年以降、1%から2%程度で推移していましたが、2013年4月に日銀が当時の黒田総裁のもとで「黒田バズーカ」とも呼ばれた大規模な金融緩和策に踏み出したことを機に大きく低下しました。さらに2016年1月に日銀がマイナス金利政策の導入に踏み切った影響で、この年の7月には過去最低のマイナス0.3%まで低下しました。

金融緩和策の修正 日本の国債を売る動き強まる

日銀は2022年12月の会合で金融緩和策の修正を決め、さらに2023年7月の会合では長期金利の上限を、事実上、1%まで上昇を容認する方針を示しました。
こうした日銀の対応によって債券市場では日本の国債を売る動きが強まり、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは5月22日、およそ11年ぶりに1%台をつけました。

長期金利上昇 プラス面とマイナス面

〇マイナス面
長期金利の上昇で家計への影響として考えられるのは、長期金利に連動する住宅ローンの固定金利の引き上げで、その場合、新たにローンを組む人の負担が増えます。
また企業にとっては、金融機関から中長期で借り入れる資金の金利の負担が増えることになり、多額の費用がかかる設備投資などが控えられることも予想されています。

〇プラス面
一方、プラスの影響としては、金融機関の定期預金の金利が引き上げられる可能性があります。また生命保険では、契約者に約束する利回りである「予定利率」が引き上げられることも見込まれ、その場合、契約者が受け取るお金が増えたり保険料が安くなったりします。

住宅ローン固定金利 徐々に引き上げの動き

長期金利が基準となっている住宅ローンの固定金利は、上昇が続けば連動して引き上げられる可能性があります。渋谷区にある大手住宅メーカーのモデルルームでは、住宅の購入を検討している人からさまざまな声が聞かれました。


「金利は上がってほしくないが受け入れるしかない。ほかのところで家計の工夫をするしかない」


「家計には厳しいが考えてやりくりするしかない。固定金利ではなく変動金利でローンを組むつもりだ」

住宅ローンの固定金利は去年後半以降、大手銀行などを中心に徐々に引き上げられていて、この住宅メーカーでは、このところ、住宅ローンを組む顧客のおよそ9割が変動金利を選んでいるということです。

オープンハウス営業本部 赤塚晴大部長
「長期金利が動き始めてお客様は住宅ローンの金利により敏感になっている。ファイナンシャルプランの相談にもしっかり対応して、安心して住宅を購入できるようにしたい」

保険商品 予定利率の引き上げの動き

長期金利の上昇を背景に、保険会社などの間では「予定利率」を引き上げる動きが出ていて、契約者が受け取るお金が増えるなど、プラスの効果も期待されます。

複数の保険商品を比べながら相談を受け付け、販売する保険代理店によりますと、去年の後半以降、保険各社の間で▼保険料を分割して支払う「平準払い」の個人年金保険や▼子どもの教育資金を積み立てる学資保険、▼一時払いの終身保険などの一部で予定利率を引き上げる動きが出ているということです。これにより、契約者が受け取るお金が増えたり、保険料が安くなったりします。

さらにこうした動きが広がれば、今後、保障の幅を広げるなど、商品設計の見直しも進む可能性があるということです。

「保険見直し本舗」菊池健史マネージャー
「予定利率が上がれば運用が有利となるので、消費者にとってメリットがある。金利の上昇は住宅ローンの引き上げなど、家計への影響が大きいので、保険についても見直しを検討する方が増えている」

長期金利の上昇 専門家の見方

長期金利の上昇による影響について、みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストに聞きました。

〇プラス面とマイナス面
長期の固定のローンの金利が上昇すれば、家計の負担を上昇させることにも繋がるし、企業からしても社債の調達コストが上昇するということでコスト上昇になる。生命保険の予定利率が上昇するなどの影響が出れば、消費者のマインドを刺激して金利の上昇がポジティブに働く可能性もある。

〇長期金利の見通し
当面は、日銀の追加利上げや国債買い入れ減額に対する期待が残るため、1%前後、あるいは1%をちょっと超えた水準で推移することはあり得る。長期金利の先行きは日銀がどこまで利上げをしていけるのかに左右されるので、追加利上げが難しいということになれば1%を割り込むことになる。

〇外国為替市場への影響
日本の長期金利の上昇は日米の金利差が縮小することになるので、基本的には円安を抑制する要因になる。一方で、今は日米の金利差が非常に大きく、日本の金利が多少上がっても、影響は限定的だ。

国債の利払い 国の財政へ影響も

債券市場で金利が上昇すると、国債の「利払い」にあてる費用の増加につながり、国の政策に必要な経費を圧迫するおそれがあります。財務省によりますと、昨年度の利払い費は7兆6000億円で、ここ数年は、日銀がマイナス金利政策を続けていたことから、7兆円台で推移してきました。

しかし、ことし2月に公表した試算では、長期金利が上昇して来年度以降、1.9%で推移すると仮定し、今年度と同じ30兆円余りの新規国債を発行し続けると、3年後の2027年度予算では利払い費は14兆5000億円まで膨らむとしています。

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