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国立科学博物館のはく製「ニホンオオカミ」では?“東京都内の中学生が最初に気づく『ピピッときました』”

  • 2024年2月28日

「これはニホンオオカミだなとレーダーみたいな感じでピピッときました」

そう語るのは、東京都内の中学1年生、小森日菜子さんです。

国立科学博物館で「ヤマイヌの一種」として保管されてきたはく製が、現在では、絶滅したニホンオオカミとみられることがわかりました。

最初に気づいたのは小森さんで、専門家とともに研究を進めてこのほど発表しました。

国立科学博物館のはく製 “ニホンオオカミ”か 都内の中学生気づく

論文を発表したのは都内の中学1年生、小森日菜子さんと国立科学博物館などの研究チームです。

小森さんは、小学4年生だった4年前(2020年)、茨城県つくば市にある国立科学博物館の収蔵庫の特別公開イベントを訪れたときに保管されている動物のはく製標本1点が、図鑑などで見たニホンオオカミと似ていることに気がつきました。

このはく製は「ヤマイヌの一種」として博物館に保管されてきたものでしたが、小森さんが専門家とともに詳しく調べた結果、▼体の大きさや▼はく製のラベルに基づく過去の記録などから100年以上前に現在の上野動物園で飼育されていたニホンオオカミの可能性が高いことがわかり、2年がかりで論文にまとめて今月(2月)発表しました。

研究チームによりますと、ニホンオオカミはかつて日本に広く生息していましたが、およそ100年前に絶滅したとされ、はく製や毛皮の標本は国内外でわずかしか残っていないということです。

小森さんと研究を進めた国立科学博物館動物研究部研究主幹の川田伸一郎さん
「標本の正体がわかって管理する立場としてはうれしいし、未来のために標本を残していくことの大切さを改めて感じた」

小森日菜子さん
「このはく製はニホンオオカミだと思ってきたので、論文にして皆さんに知ってもらえてすごくうれしいです。今後も研究を続けてニホンオオカミの真の姿を解明したいです」

“これはニホンオオカミだな ピピッときました”

小森さんは、小学2年生のころにニホンオオカミに興味を持ち、国内で保管されているはく製を見学したり、図鑑や学術書を調べたりしてその特徴について学んできたといいます。

4年前(2020年)、小学4年生のときに国立科学博物館の収蔵庫を訪れた際に、保管されている動物のはく製標本が目に留まり、図鑑などで見たニホンオオカミと特徴が似ていることに気がついたということです。

当時の心境について小森さんは次のように振り返りました。

小森日菜子さん
「額から鼻にかけての形が平らになっていることや、前足が短く、背中に黒い毛があるといった特徴を見つけて、これはニホンオオカミだなとレーダーみたいな感じでピピッときました。すごい頭の中で、踊り出したいというか、舞を始めるというかそんな感情でした」

その後、このはく製は「ヤマイヌの一種」として扱われ、よく調べられていなかったことを知った小森さんは、専門家に相談しながら博物館などが公開している過去の記録を調べ上げて考えをまとめていき、5年生の時、自由研究で博物館で見つけたはく製はニホンオオカミではないかとレポートにまとめて発表しました。

このレポートは、図書館振興財団が主催するコンクールで文部科学大臣賞を受賞したほか、相談していた専門家の1人で、標本の歴史に詳しい千葉県にある山階鳥類研究所の研究員の小林さやかさんから「この調査結果をぜひ学術論文として世に残してほしい」と提案を受けることにつながり、論文の作成を目指すことになったということです。

論文として客観的な根拠をもった考察を行うため、さらに2年にわたって分析や検討を重ねて執筆を進め、専門家による査読を経たうえで今月(2月)22日に国立科学博物館が発行している電子ジャーナルで論文を発表しました。

論文を発表する原動力になったのは探究心だったということで、小森さんは次のように話していました。

小森さん
「調べていくなかで新たな謎が出てきて、そこをさらに調べて解くことが大変でしたが楽しかったです。ニホンオオカミはたくさん研究されていますが、真の姿は分っていないので、色々な謎が残されています。真の姿を知りたい、解明したいというのがやっぱり一番です」

論文発表勧めた共著者 “日菜子ちゃんはすごい観察力”

論文で発表することを勧めた共著者の1人で、千葉県にある山階鳥類研究所の研究員の小林さやかさんは、次のように話していました。

山階鳥類研究所の研究員 小林さやかさん
「最初にレポートを見た時から、かなり研究になるなと思っていたので、論文にまとまってよかった。日菜子ちゃんはすごい観察力というかそういう面で才能があるなと思っています。わたしは手法を教えただけなんですが、好きなことを極めて、最終的にニホンオオカミの可能性が高いというところまで近づけたのはすごいよかったです」

そして、「興味を持ったことを1つ調べてみると、その先にどんどん広がる世界があると思うので、自分が関心を持った分野をどんどん深めていってほしいと思います」と小森さんにエールを送りました。

国立科学博物館の担当者 “これからが楽しみです”

また、論文の共著者の1人で、国立科学博物館動物研究部研究主幹の川田伸一郎さんは、小森さんが小学生の時に発見して中学1年生で論文を書いたことは「すごいことだと思います」と評価しています。

そして「ちゃんと学んでいくプロセスを歩めば、研究というのは小中学生でも高校生でもできるのだと思います。小森さんは今後もいろんな発見をするだろうなとこれからが楽しみです」とエールを送っていました。

国立科学博物館には、今回のニホンオオカミとみられるはく製をはじめ、100年以上前の歴史的に貴重な標本が保管されているほか、新たな標本や資料も毎年増え続け、その数は500万点以上と国内最大規模です。

貴重なコレクションの管理に充てるため、国立科学博物館は去年(2023年)8月、クラウドファンディングを行ったところ、5万人以上から支援が寄せられ、目標額を大幅に上回る9億円あまりが集まりました。

川田さんは、博物館に保管されている膨大な動物のはく製を管理する立場でもありますが、今回の発見を通じて貴重なコレクションを未来に引き継いでいくことの大切さを再認識したといいます。

川田さん
「100年前の標本を調べて今回の成果が得られたわけですが、ニホンオオカミに限らず素性がわかっていない標本は結構あります。できるだけ未来につないで、これから新しい技術の発達でもっと別の方面から調べていくことも可能になってくると思うので、未来のために標本を残していくことが大切なんだなと改めて感じました」

今回のはく製はバックヤードで保管しており公開する予定は当面ないということですが、別のニホンオオカミのはく製は東京・上野にある博物館で展示されていて、見ることができるということです。

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