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能登半島地震 新潟などで広範囲に発生の液状化 復旧の障壁に 被害が大きかったのは「砂丘」

  • 2024年2月2日

能登半島地震では、建物の倒壊や火災、津波、寒さによって多くの命が奪われましたが、広範囲で発生した液状化による被害が生活再建の大きな障壁となっています。専門家の分析では、今回の地震で被害が大きかった場所は、砂が堆積した「砂丘」に集中していることがわかりました。

東西300キロ・震度4でも

液状化による被害を分析したのは、地盤災害のメカニズムに詳しい防災科学技術研究所の先名重樹 主任専門研究員です。現地調査や航空写真などから状況を分析しました。

その結果、液状化が確認された範囲は新潟市中央区から富山県、石川県、そして福井県坂井市にかけての東西およそ320キロの範囲に及んでいました。
中には富山県魚津市などこれまで液状化があまり確認されてこなかった震度4程度の揺れでも被害が発生していました。今回の揺れの継続時間が長かったことが影響したとみています。

被害大は“砂丘の陸側”に集中

今回、液状化が発生した地形にも特徴があることがわかりました。東日本大震災では液状化による大きな被害は埋め立て地やかつて川だった「旧河道」を中心に発生していました。
一方、今回の能登半島地震ではこうした地形に加え、風によって運ばれた砂からなる「砂丘」でも発生し、特に被害が大きかった場所が日本海に面した側ではなく、陸側に集中していたことがわかりました。

石川県内灘町(2024年1月)

例えば、震度5強を観測した新潟市西区や5弱を観測した石川県内灘町。これまで考えられてきた液状化の被害に比べても大きく、液状化によって建物が傾いたり、道路が大きく変形したりする大きな被害が出ています。これは地盤が横に大きくずれ動く「側方流動」といわれ、建物だけでなく、地下の構造物も壊れることがあります。
こうした場所は地形的に砂丘に分類されていて、このうちなだらかになっている低地の部分、さらに、海側ではなく、陸側にあたります。

なぜ陸側なのか

なぜ陸側なのか。先名主任専門研究員によりますと海側は日本海からの季節風の影響で液状化が起きやすい細かい砂が吹き飛ばされたとみられる一方、陸側は風が遮られるほか丘陵地から細かな砂が堆積したとみられます。海側に比べると地盤が緩くなっていたと考えられるのです。近くに川や沼などがあると地下水の水位も高くなり液状化が発生したと考えられています。
さらに、今回の地震で揺れの時間が長かったことが被害の深刻化につながったとみて、分析を続けることにしています。

防災科学技術研究所 先名重樹 主任専門研究員
「砂丘は日本海側に多く、液状化が起きることはわかっていたが埋め立て地や旧河道に比べるとあまり注目されてこなかった。今回被害が出たところは再被害のおそれもあるほか、その周辺部や類似の地形では、今後の地震で液状化被害が大きくなる可能性もあるので対策を考えていく必要がある」

健康への影響や自宅を離れるという人も

地形的に砂丘に分類されている、新潟市西区の寺尾地区に住む石黒忠雄さん(77)は、自宅が傾き、玄関の扉が外れるなどの被害がありました。生活の再建には公的な支援が必要だと思っていますが、り災証明書では「準半壊」でした。
自宅が大きな被害を受けた世帯に対する被災者生活再建支援金(基礎支援金)を受け取るには基本的にはそれより被害程度の大きな「半壊」以上と判定される必要があります。 
また、自宅の裏の擁壁には、大きな亀裂が入り、いつ崩れてもおかしくない危険な状況だと
いうことです。
石黒さんは近くのアパートに引っ越すことを決め、少しでも節約しようと、自力で引っ越しや家財の処分などを行いました。家賃は貯金を取り崩して工面しています。生まれ育った土地を離れたことに未練を抱えながらも前を向くしかないとしています。

石黒忠雄さん
「地震の前の生活を思い出してもどうにもならない。新しい生活に慣れるしかない」

一方、地形的に「旧河道」に分類されている新潟市西区の善久地区に住む橋立敬さん(54)です。
自宅が傾く被害が出て、健康への影響を懸念しているほか屋根にひびが入り雨水がしみこんでくるようになりました。また、車庫が沈下したことから雨水がたまるようになり、ポンプを使って定期的に排水せざるを得なくなりました。橋立さんは、公的な支援を受けるのに必要なり災証明書が交付されておらず先が見通せないということです。

橋立敬さん
「り災証明書がまだ交付されていないので、再建に向けて動きだせない。この家にこのまま住むのか、直して住むのか、引っ越しをするのか、どれくらい支援を受けられるのかわかってからでないと決められない」

液状化の起きやすい地形は確認

砂丘のほか、埋め立て地や旧河道など液状化の起きやすい地形は防災科学技術研究所が運営している「JーSHIS」=地震ハザードステーションなどで確認することができます。また、東京都や千葉県など液状化ハザードマップを作成して公表している自治体もあります。

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