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千葉科学大学 “公立大学”移行の検討 「当面見合わせ」方針 委員会を開催できず なぜ?背景は?

  • 2024年01月25日

千葉県銚子市にある「千葉科学大学」。定員割れが続き、2023年10月、「大学の存続のため」として公立大学への移行を市に要望しました。

しかし市は、移行への検討を行う委員会の開催を当面見合わせる方針を固めました。委員会が開催されない状況のままでは移行は難しく、市は大学側と協議を続けることにしています。

なぜ、市は移行に慎重な態度を取るようになったのか。詳しくお伝えします。

(千葉放送局銚子支局・岡根正貢)

市が資金支援で誘致「千葉科学大学」

千葉科学大学は、銚子市が地域活性化のための基盤として誘致し、岡山県の学校法人「加計学園」が2004年に設置した私立大学です。

市が大学の敷地を無償で貸与するとともに、設置費の一部の77億円あまりを負担しました。

大学には現在、危機管理学部薬学部看護学部の3つの学部が設けられています。このうち看護学部は、市が設置を要望し、県の補助金も受けて2014年に開設されました。

今年度は大学院も含めて約1500人の学生が通っていますが、定員の7割程度にとどまっています。定員割れは2009年から続いていて、大学単体で見ると収支が厳しい状況になっています。

「公立大学」移行を要望

こうした状況を受けて、大学を運営する「加計学園」は、2023年10月、「千葉科学大学の公立大学法人化に関する要望書」を市に提出しました。

千葉科学大学を取り巻く社会環境の変化に対し、大学が銚子市を中心とした東総地区の知の拠点として存続し、地域活性の一翼を担う役割を果たすため「千葉科学大学の公立大学法人化」を実現していただきたくお願い申し上げます。(要望書より抜粋)

要望を受けて市は、2023年12月、公立大学への移行が可能かどうか検討する、有識者などによる委員会の設置を定めた条例案を議会に提出。市議会では、全会一致で可決・成立しました。

銚子市議会での条例案の採決(2023年12月21日)

委員の人選などを進めた上で、年明けにも委員会を開催し、市の財政への影響などについて議論を行うとしていました。

越川信一 銚子市長

千葉科学大学は市が誘致した大学で、存続を強く望むが、市に財政負担が生じないことが基本になる。速やかに委員の人選を進め、専門的な見解をいただきたい。(市議会での発言より)

一転!委員会開催「見合わせ」なぜ?

ところがその後、市は「委員会の開催を当面見合わせる」という方針を固めたことが分かりました。

銚子市役所

背景には、市と大学側の思惑のズレがありました。

関係者によりますと、委員会に向けて大学側が示した今後の見通しでは、現在定員の7割程度の学生数が数年後には定員近くまで増加し、黒字を確保できる見込みだとしています。

銚子市役所に掲げられている垂れ幕

しかし市では、▼少子化の中で学生数の確保には不安があり、▼財務状況の改善には不確定要素が大きいなどとして、「赤字になって財政負担が生じかねないのではないか」という懸念が拭えず、今回の慎重な姿勢につながったということです。

岡根記者

財政状況が苦しい市としては、公立大学への移行に伴って財政負担が生じないという「確約」が欲しいのが本音です。

しかし、大学側が現在示している内容では、「確約」までは至っていないと考えているものとみられます。

このまま委員会が開催されなければ移行に向けた検討は進まず、現状のままでは、移行は難しい状況です。市は協議を継続するとしています。

千葉科学大学

市は、こうした方針をすでに大学側に伝えています。大学を運営する「加計学園」は、NHKの取材に対し、「情報を把握していない。銚子市で検討していることなので、推移を見守りたい」としています。

公立大学化を目指すには国などとの調整も必要で、2025年度から移行を行う場合には、近く結論を出す必要があるとされています。

今回の方針を受けて、今後、市と大学側がどのような対応を取るのか、注目されます。

  • 岡根正貢

    千葉放送局銚子支局

    岡根正貢

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