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地域通貨が再ブーム?市川はICHICO 渋谷 世田谷 長岡市なども

  • 2023年05月31日

千葉県市川市が新たな地域通貨「ICHICO」(イチコ)の実証実験を開始しました。
「地域通貨のブームはもう終わったのではないか?」と思い調べてみると、東京都渋谷区や新潟県長岡市など、この1年で導入した自治体が相次いでいることがわかりました。いずれも「デジタル」タイプの地域通貨です。
なぜ、地域通貨が「再ブーム」になっているのでしょうか。

(千葉放送局記者 金子ひとみ)

市川市のデジタル地域通貨 ICHICO

「ICHICO」のスマートフォンアプリのイメージ(提供:市川市)

千葉県市川市は、5月22日から9月30日までの間、市内の加盟店で使えるキャッシュレスのデジタル地域通貨「ICHICO」の実証実験事業を行っています。

【「ICHICO」実証実験のポイント】
▼実証実験中は八幡エリアの約170店舗で使用可能。実証実験に参加できるのは市民のみ
▼1ポイント=1イチコ=1円。チャージ金額(上限3万円)の30%がイチコポイントで付与される(3万円チャージで3万9000イチコ)。
▼スマートフォンの専用アプリか、市から専用カードを受け取ってチャージして使う。
ボランティア活動などへの参加でイチコポイントを入手したり、歩数や血圧を記録してためたポイント(通称アルコ)をイチコポイントに交換したりして使うことも可能。

市川市 田中甲市長

コロナ禍で、商店街が疲弊した時期が続いた。商売を回復させる弾みをつけなくてはいけない。都内で買い物をする市民も多いが、地元でたくさんの買い物をして、お得感を味わってほしい。健康管理でためたポイントを地域通貨に交換して買い物に使えるというのもセールスポイントです。

金子記者

最近、同じようなデジタル地域通貨の導入事例が相次いでいます。たとえば・・・
▼2022年11月 東京都渋谷区「ハチペイ」、新潟県長岡市が「ながおかペイ」開始
▼2022年7月 滋賀県など「ビワコ」開始
▼2021年2月 東京都世田谷区「せたがやPay」開始

15年ほど前、いったん下火となった地域通貨

特定の地域だけで使える地域通貨。
地域通貨に詳しい専修大学経済学部の泉留維教授(いずみ・るい)に、地域通貨をめぐる最近の動きなどを聞いてみました。

ラッカ星人

地域通貨は、日本銀行が発行する1000円などの紙幣や政府が発行する100円などの硬貨とは違うのはわかるラッカ。でも地域通貨は、最近ではなく、少し前に流行したという印象があるけどナ?

泉留維教授(写真:本人提供)

私たちは国内の地域通貨の稼働状況の推移を調べてきました。1999年は全国で数えるほどだったのが、2001年から2002年にかけて急増し、2005年12月ごろがピークで、国内で300を超える地域通貨が使われていました。その後、減少傾向となり、2007年から2008年にかけて、曲がり角をむかえたと言えるでしょう。

なぜ、地域通貨ブームは、いったん下火となったの?

2001年から急増した際は、「地域経済やボランティアの活性化のためによいのではないか」と地域通貨に夢を抱く団体が多く、国などの補助金や助成金の活用も相次ぎました。ただ、当時は、地域通貨の導入が売り上げの向上やボランティアの活性化などにどのぐらいつながっているのか、成果が目に見えにくく、新聞紙上で取り上げられることも減り、補助や助成も切れるうちに、参入者が減りました。
使用する側も、地域通貨の紙をずっと財布に入れておいたり、使う際にサインをしたりするのが煩雑だったという事情もあったと考えられます。

ポイントは「キャッシュレス普及」

その地域通貨がまた脚光を浴び始めた時期やその理由は何ですか?

専修大 泉留維教授

2020年がターニングポイントでした。コロナ禍でキャッシュレス決済への関心が高まり、スマートフォンやQRコード決済が浸透したことにより、「デジタル」の地域通貨が急激に増えていきました。先駆けは岐阜県飛騨地域で導入された「さるぼぼコイン」です。田園部よりも大都市部やその近郊に導入が多いのが最近の特徴です。デジタル地域通貨の決済システムを提供する企業が複数あり、自治体も導入しやすくなっています。デジタルだと、換金作業や紙券の印刷・保管の手間は大きく減ります。

2021年末時点で、183の地域通貨が稼働しているのを確認しています。

千葉県内の「デジタル地域通貨」としては、君津信用組合・木更津市・木更津商工会議所が普及に取り組んでいる「アクアコイン」や、大多喜町の「chiica」があります。大多喜町は2021年末に政府が打ち出した18歳以下への10万円相当の給付について、千葉県内で唯一、5万円を現金で給付し、残る5万円分は地域通貨で給付しました。

「デジタル田園都市国家構想」も後押し

国の動きはどうなのかナ?

岸田総理大臣が「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、2021年度と2022年度は、デジタル地域通貨を進める約40団体に国の交付金が出ています。

地域通貨でしか生み出せない価値とは?

木更津市内では「アクアコイン」の普及が広がっている。

デジタル地域通貨は、アナログに比べて、集めたデータをマーケティングなどに活用しやすい印象だけど、一方で、どんな課題があるラッカ?

専修大 泉留維教授

短期的には利用者の増加が見込まれますが、日本円との違いが不明瞭になると、わざわざ地域通貨を導入する意味もなくなり、結果として地域通貨不要論が起きやすくなります。そのため、地域通貨でしか生み出し得ない価値を創出する仕組みが必須となってきますが、そこまでデザインされているデジタル地域通貨はあまり存在していないのが実情です。 

デジタル地域通貨は導入の初期費用、広告宣伝費、委託費など多額の費用が必要で、財源がある自治体等によるトップダウン型の導入になりがちです。地域通貨導入ありきで議論を進めるべきではないと考えます。 一過性になりやすく、導入にどういう意味があるのか、丁寧に説明して、住民や市民団体、商店などに細かく理解してもらう必要があります。

交付金、助成金を活用して導入したり、プレミアムポイントをつけて「お得感」を出したりするのは話題作りのために悪くないですが、それだけだと長続きしません。

長続きさせるためにはどのようなことが重要なの?

地域通貨でしか生み出し得ない価値、お金では測れない価値をどのように作っていくか。自治体だけで創出することは難しく、いろんな人を巻き込んで議論する必要があると思います。

どこで何を買うかは個々の自由のため、仕組みの導入だけで購買行動を変化させることは難しいです。BtoCだけでなく、BtoBといった個店の仕入れにも使って、地産地消を促すなどして、地域通貨で「閉じる」という考え方があると思います。

利便性を求めていくと日本円と変わらなくなるので、日本円との違いを意識し、地域の共感を得られるもの、地域を応援したいと思わせることができるものにしていくことが重要でしょう。関わっている人たちが、明らかな効果を感じ取ることができるかどうかも重要ですね。

しばらくは導入自治体が続く?

今後も導入する事例は増えそうなのラッカ?

専修大 泉留維教授

選挙公約に「地域通貨導入」を掲げる候補者をよく目にします。岸田総理大臣の肝いり構想のもとで、政府の補助金もあります。また、大手から中小まで多くの企業がシステムを提供していて、選択肢も幅広い。当分の間は、「やってみよう」という自治体が増えていくのではないでしょうか

一方で、「木の駅」プロジェクトというデジタル化していない地域通貨も各地で導入されています。不ぞろいの間伐材などを買い取り、地域の商店だけで使える地域通貨券で代価を支払うものですが、独自に健闘されている取り組みだと思います。

ネット通販で買い物をする人も多く、競争が激しいですが、「地域通貨」を長続きさせるために、いろいろ工夫をこらしてほしいナ。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    市川市担当。子どものころはベルマークやどんぐりを集めていました。

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