10月7日から さいたま市内で開かれている「さいたま国際芸術祭2023」。パンフレットの表紙になっている独特なタッチの写真は、実は さいたま市内で撮影されたもの。ほかにも市内で撮影した たくさんの写真が会場に展示され、地元を見慣れた人にも新鮮な気づきを与えているといいます。撮影した写真家の白鳥建二さんに話を聞きました。
暗闇に光の線がうごめく写真。
風景の中に人々が揺らぐ写真。
撮影したのは、白鳥建二さん。全盲の写真家です。
白鳥さんが撮影するのは、歩いているとき。
カメラの揺れを気にせず次々とシャッターボタンを押していきます。この独自の撮影方法が、独特の世界観を作り上げています。
歩いているだけです、見た目には。歩くと撮れるって、そういうしくみみたいになっているので。
写真を撮るために歩くんじゃなくて、歩いていると写真がたまるっていう感じなんですよ。
さいたま国際芸術祭のメイン会場「旧市民会館おおみや」では、白鳥さんが今回さいたま市内で撮影した3,000点以上の中から、芸術祭スタッフが選び抜いた作品が展示されています。
白鳥さんの写真を見た人に感想を聞きました。
車が通ってる道路なのかなって思ったんだけど
“もしかしたらここを撮ってるのかな”とか自分の中で想像が出来るのが楽しくて
ブレているような感じも、それはそれでとてもきれいだと思います
今回のさいたま国際芸術祭を演出しているディレクターたちは、白鳥さんの作品にほれ込んで、水戸に住んでいる白鳥さんに撮影を依頼しました。
画角や構図にとらわれないことが作品の魅力につながっている と言います。
白鳥さんの写真は強烈、強いですね。ただ“撮る”ってことが いちばん人間の網膜に焼き付いてくるっていうか、それくらいの迫力をいつも感じてますね。
幼少期から弱視で、20代のときには光も感じなくなった白鳥さんが撮影を始めたのは18年前のことです。信頼する友人に「白鳥さんが写真を撮ったらおもしろいのでは」と言われたことがきっかけでした。
(スタッフ)写ったものを見ないわけじゃないですか。その時点で不安は無かったですか?
まったく不安は無いですよ。だって、友達との話題のひとつ、それくらいだったので。
白鳥さんが写し出す独特な写真は、国内外の芸術関係者に新鮮な印象を与え、注目されます。日常的に撮影を続けるうちに、これまで撮った枚数は45万枚にもなりました。
日常の歩くときにひざをどれだけあげるかっていうくらい。自分でもほとんど意識せずにボタンを押してるっていう。
既成概念にとらわれない白鳥さんの写真。
見る人の心に、自分自身のありようを見直すきっかけを与えています。
ねらいとか、こういう意味をつけたいとか、そういうことが一切ない世界があるってことに気づいたので、自分自身が取り繕おうとしたりとか、こういう風に思われたいとかっていうことが見透かされてるような感じがするんですよ。
白鳥さんが我々に見せてくれているのは、見ている我々が見られないこの世界のありようってことだと思うんですよね。
おもしろがってくれる人がいるっていうのがいちばんのポイントだったので、そこはずっと同じですね。これで写真家かよ、みたいなそういう反応が来るとおもしろいんじゃないかなと思ってます。
さいたま国際芸術祭2023メイン会場の旧市民会館おおみや(さいたま市大宮区下町3-47-8)で、さいたま市内で撮った白鳥さんの作品が展示されています。芸術祭の会期は12月10日(日)までで、月曜は祝日をのぞいて休館です。