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色で伝えたい 一目千本桜の染め物

岩間瞳キャスターが取材
  • 2024年04月22日

大河原町と柴田町を流れる白石川沿いの「一目千本桜」。
県内有数の桜の名所で、ことしも花見客でにぎわいました。
大河原町のまつり会場で、人気を集めたお土産の一つが
一目千本桜のせんていされた枝を使った染め物・「桜染め」です。
その色に込められた思いを取材しました。

(NHK仙台放送局 キャスター 岩間 瞳)

「一目千本桜」の地元・大河原町の桜まつりの会場です。
取材に訪れた4月5日、まだ見ごろには早かったのですが
花見を楽しむ人でにぎわっていました。

売店をのぞいてみると、
本物の桜のような色合いをした染め物「桜染め」が並んでいます。
ストールやタオル、イヤリングやコサージュなど。
桜染めは、一目千本桜が植えられて100年となった去年から販売されています。

買い求める人も興味津々のようです。

女の子「きれい、さくらっぽい色をしている」
母親「4月から新1年生なので、入学式につけたらかわいいと思いました」

つくっているのは、大河原町に住む押野知子さん。
原料に使っているのは、もちろん一目千本桜です。

制作の拠点は、町にあるアトリエスペース。
仙南地域などから、アーティストが自由に集まって活動しています。

東京出身の押野さんは、20年前、結婚を機に大河原町に移り住みました。
その時に見た一目千本桜が、忘れられないといいます。

押野知子さん
「青い白石川と白い蔵王連峰の残雪、青空、そこに映えるピンク色の桜が
 ずーっと続いているんですよね、すごいなと思いました。映画のセットみたい」

大河原町が大好きになった押野さん。
一目千本桜・100周年の盛り上げに一役買おうと
独学で取り組んだのが、「桜染め」でした。
はじめは手探りだったそうです。

押野知子さん
「落ちている枯れ枝を拾うところから染め物をスタートしたのですが、
 その時は全然色が出ませんでした」

それでもあきらめずに続けていると、出会ったのが
“冬に、地元の人の手でせんていされた、つぼみつきの枝”。
春を待っていたはずの枝。捨てずに生かしてみたいとも考えました。

さっそく煮出してみると、こんなに鮮やかな色が。

押野知子さん
「感動します。不思議ですよね。
 桜の命の色、生きている色を私たちは使わせてもらっているんだなと感じます」

こうして作った染料に染めたいものを漬け、水で洗う…
これを繰り返します。
ストールなら、2時間ほどの作業で桜色になります。
原料の枝によっても、染める素材によっても、風合いが変わるのが魅力です。

できあがった桜染めはすごく優しい色で、
一目千本桜の美しさ、あたたかさが感じられるようでした。
見る人の心をふわっと和ませてくれるような色です。

この桜染め。
押野さんは、町の子どもたちに体験してもらう活動もしています。
一目千本桜を誇りにしてほしいと考えているからです。
この春は、小学校で、桜染めのコサージュを一緒に作り
卒業式で着けてもらいました。
町内のアトリエスペースでも、事前に申し込めば体験することができます。

押野知子さん
「桜は1週間くらいで散ってしまうけれど、ストールやコサージュになることで
 1年中楽しんでもらえたらうれしいです。
 これからの100年、新たに桜染めが愛されて
 皆さんの力を借りて桜の魅力を広め、伝えていけたらいいなと思います」

押野さんの一目千本桜への愛は、これだけではありません。
押野さん、本業はイラストレーターで
実は大河原町の観光PRキャラクター「さくらっきー」の原作者です。
「あの桜の魅力を伝えたい」と描いたところ
偶然、町の観光の担当者の目に留まって、採用されたということです。

押野さんが惚れ込んだ一目千本桜。
元気に生きられる年数を超えて弱っている木も増えていて、
桜染めの売り上げの一部は、新しい木を植えるなどの保全活動に
役立てられることになっています。

優しいピンク色に込められた押野さんの思いを聞いて、
大河原町出身の私も、改めて桜の魅力に気づくとともに
ふるさとのことが誇らしくなりました。
町の宝が永く残るようにと願っています。


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  • 岩間瞳

    仙台放送局 キャスター

    岩間瞳

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