未来への証言 親を亡くした子どものそばに

(初回放送日:2024年3月7日)
※NHK仙台放送局では震災伝承のため被災者の証言の音源を保存・公開しています。

震災で親を亡くした子どもの支援を行う、あしなが育英会・東北レインボーハウスの職員・山下高文さんの証言です。震災当時は宮城県内の大学に通う3年生でした。かつて父親をがんで亡くした山下さんは、震災で親を亡くした子どもの力になりたいと考え、震災直後から今までおよそ330人の子どもたちの声を聞き続けてきました。

▽証言はこちらから(音声が再生されます)▽

小倉)震災当時の子どもたちはどんな様子でしたか?

山下さん)子どもたちはあまり悲しむ様子がなく、というかいまいち状況が分かっていないような感じだったのかなと思います。亡くなった人について、地震含めて何も話したくないという子もいれば、涙ぐみながら、言葉にならずに過ごされているという子もいました。私は特別何かこうプラスになるものを提供できると思っていなかったので、そのまま隣にいることで、言葉が出てきたときにそれをまず受け止めてあげることができることかなと思っていたので、そういうことに注力していました。
子どもたちの話を聞くと、たとえば授業参観であったりとか、父の日・母の日であったりとか、3.11当日であったりとか。というのが、悲しかったりとか怒りだったりを感じたと教えてくれたことがあって。一緒に住んでた親が亡くなって、授業参観のときに自分だけ父親も母親も来なくておじいちゃんおばあちゃんが来る。周りとの違いに「なんでだろうね」って苦しむ。3.11についても、地震が起きた2時46分、帰りの会の時に黙とうしましょう、その時に、何も教えてもらってないけど自分が親を亡くしたことを学校のクラスのみんなの前で先生がお話しする。自分の経験を大切に扱われていない気がして嫌だったという子とか、亡くなった人だったりとか震災というところに絡めて子どもたちはいろんな思いがこみ上げてくるのかなと思います。そして子どもたち自身が持っている自分を癒やすための力がうまく働く子と、手助けをしないと自分を癒やす力っていうのが発揮できない子がいて、そういうなかなか自分を癒やす力が発揮できない子に対して手助けができればいいのかなと思っています。

小倉)3.11については特に家族を亡くした子どもたちにとってはすごくデリケートな問題だと思いますが、周りの接し方ということに関しては、どういう風に接していけばいいと山下さんは思いますか?

山下さん)子どもたちはまず素直だなというところが一番最初にあって、どんな話を誰にするのかみたいなところはやっぱりその子自身が安心と安全を感じないと表現してくれないんだなというのがあるので、一緒にいる私自身もそうですし、その子にとって安心な人、安全な人であることで子どもたち自身は素直に表現をしてくれるのかなあと。
できることは、子供たちをかわいそうな人として見ないということであったりとか、子どもたちが話すこと、やることに対して大人の価値観で止めたりとか、評価したりせずに、まずは子どもたちの言ってることやってることに耳を傾けたりとか、受け止めたりっていうことをすることがその子たち自身にとって安心できる、安全な場所、人になるのかなと、それが大事なのかなと思っています。