GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

  • 小6
  • 社会

座標軸を使って、自分にできる国際協力を考える!
活発な意見交換を盛り込んだ実践授業

授業者
渋谷区立加計塚小学校 主幹教諭 三戸大輔
使用した学習支援ツール
Microsoft OneNote(ワンノート)

今回は、渋谷区立加計塚小学校6年生の授業の様子をお届け!子どもたちが考えやすいような発問のアレンジや、活動が活性化するヒントの出し方についてもご紹介します。

「考える授業」の流れ

6時間目

ステップ(1) つかむ 課題を設定する

まず、本時の学習テーマ「世界の人々のために、日本がどんな国際協力をしているか。自分にできることを考える」を板書し共有しました。そのうえで、このあとの授業の流れを「1.動画 2.座標軸 3.自分のアイデア 4.話し合い」の4ステップで伝えます。この時、ワンノート上の記入シート①(座標軸)を見ながら、「これはなんて言うんだっけ?」と簡単におさらいをしていました。

ステップ(2) 調べる 情報を収集する

課題の設定を終え、動画①(番組全体)を視聴するステップです。視聴前には、見終えた後の活動について伝えていました。「動画に5つの国際協力の活動が出てきます」、「それを、動画を見た後に座標軸に位置付けてもらいます」。配布シートを示しながらていねいに確認をする先生。動画の視聴中は、静止画を座標軸に並べながら見る様子や、「ユニセフ募金やったよね」と動画の内容について話す様子も見られました。

ステップ(3) 考える 整理したことを分析する

番組視聴後は、記入シート①(座標軸)の記入に移ります。まずは、番組に出てきた国際協力活動が座標軸【将来的にできそう】【すぐにできそう】【国内で行う】【世界で行う】のどこに位置付けられるかを考えます。この作業は各々でスムーズに進められているようでした。

終わった人から次の作業を始めます。「自分ができる国際協力」について考え、アイデアを「黄色のカード」に記入、座標軸に足していく作業です。

先生は、「思いつかなかったら周りと話しながらでもいいよ」と声をかけていました。数分経ったところで、一人の児童から「全然わからない」という声が。先生は「じゃあ聞いてみようか」と、1枚でもカードが書けた人に発表してもらう時間を設けました。「箱を作って募金を呼びかける」、「エコバッグを持っていく」などの意見が出ました。出た意見は〈皆のアイデア〉として、考えるヒントとなるよう板書していきます。いくつかアイデアが出たところで、再び個人での作業に戻りつつ、「思いついた人はどんどん言って」とさらに発言を促し、意見を板書していました。

黄色のカードへの記入が一段落したところで、次の作業に移ります。先生が特に力を入れたかったという「青のカード」への記入です。やるキットでは「さらに考えたこと」を記入することになっているカードですが、先生は内容をアレンジ。「もとからある5枚のカードや黄色のカードに書いたことは、〈どうやったら実現できるか?〉または、〈実現にあたっての課題は?〉」と、発問を具体的に決め、伝えていました。児童からは「なるほど」の声。周りと話し合いながら記入に取りかかります。

しばらくして、記入が進まない様子を見た先生は、記入が進んでいる児童の記入シートをモニターで全員に見せました。「例えば、〈経験をつむ〉はどの活動と言える?」と、全体に発言を促しながら、理解を深めさせていました。「そういうことか」と納得する子どもたち。「世界ですぐにできそうなことなんてある?」という児童には、「じゃあ実現にあたっての課題を書いてみよう」とアドバイスしていました。「煮詰まってきたら周りの人と話したり、他の人が書いたカードを自分の座標軸に位置付けたりしても良いよ」と伝え、交流を促す先生。グループやペアになるのではなく、発言したいタイミングで発言する子がいれば、それに対してさらに意見を出す子もいました。中には、動画の内容について考えを深め「その国で生産されたものをどう売るかが課題」という意見も。考えを活発に交換しながら、シートへの記入を進めます。

ステップ(4) まとめる 自分の考えをまとめる

残り10分のところで、まとめに入ります。座標軸に書き込んだ内容をもとに、考えを文章にまとめるステップです。ここでは、記入シート②(考えまとめシート)を使用します。筆が進まない児童には、「今日のことを踏まえて書くと良いよ。世界にはこんな人がいるが、自分ができることはこんなことだと思う、みたいな書き方もできる」と声をかけていました。それぞれが記入を進め、提出を終えたところで終了の時間になりました。

実践した先生から

やるキットを使うのは今回が初めてだった三戸先生。特に重視したという「青のカード」への記入についても工夫を伺いました。

「やるキット」を活用した三戸先生の感想

初めてやるキットを使ってみてまず感じたのは、すごく準備がしやすいということです。画像がコピーできたり、ほしいパーツごとに分かれていたりして、素早く準備ができました。また、記録が残るため、後から見返して授業改善にもつなげられそうです。全ての教科書に完全対応しているわけではありませんが、それぞれの教科書の内容と近いやるキットを選ぶと、社会科が専門でない先生でも使いやすいのではないでしょうか。

子どもたちは、手元が良く動いているように見えました。座標軸を使って分類することで、「何ができるのか、何はまだ難しいのか」がはっきりしたのではないかと思います。右下の「すぐにできそう、世界で行う」の枠は書くのが難しく、「無理です」とまとめた児童もいました。しかし、そこで終わりにせず、「将来はこんなふうにできるかもしれない」というように一歩先まで考えてもらうことが大事だと感じました。予想外だったのは、「青のカード」を記入する際に、動画の内容について記入している児童がいたことです。想像以上に、動画をよく見て考えているのだと驚きました。タブレットへの打ち込みに集中する子が多く、いつもと比べると、個人で考える時間が多くなったかなと思います。

加計塚小学校の実践から「やるキット」アレンジのアイデア

●「青のカード」の記入に時間を使うための時間配分に

今回のやるキットを見て、ステップ(2)で出てくる「青のカード(さらに考えたこと)」の記入に重きを置きたいと考えました。早めに青のカードの記入に移れるよう、ステップ(1)で国連やODA、NGOなどの確認はしませんでした。前時の授業で既に国連やSDGsを扱っていたこともあり、子どもたちは理解できていたように見えました。

●発問を明確にして伝える

「青のカード」が重要だと感じつつも、懸念していたのは、書くのが難しいのではないかということです。「黄色のカード(自分ができる国際協力)」と区別できるのかが心配でした。そこで、青のカードを書くタイミングでは、「どうやったら実現できるのか?または、実現にあたっての課題は何か?」と、明確に発問を決めて伝えるようにしました。

●行き詰まっていたら、児童の記入シートを活用してヒントを示す

それでも、「青のカード」を書けずに迷っている様子が見られました。その際には、書き進められていた児童のシートをモニターに映し出し、全体で確認しました。その後は、書き進められている手ごたえがあったので、そういった時間を設けてみても良いのかなと思います。

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