第17弾

パラアーチェリー × うしおととら

岡崎愛子選手インタビュー

最初から“できない”と決めつけない ~試行錯誤を重ねたアーチェリー~

『うしおととら』とコラボして自分がキャラクターとして描かれると聞いた時どのように感じましたか。

岡崎:最初聞いた時はすごくびっくりしましたし、漫画が好きでタイトルも知っていたのでうれしかったです。

アーチェリーを引くためにどういう工夫をしているのか、お話しいただけますか。

岡崎:弓自体が重いので、まず弓を構えたときに体がブレないよう車いすに体を固定するため、肩と脚にベルトを巻いています。あとは、指が動かせないので手を弓に固定するためのベルトとか、あとは指を使わなくても矢を放てるような「リリーサー」を使って競技しています。

試行錯誤の過程があったのですね。

岡崎:そうですね。始めた時はまず弓を持つことができなかったので、どうやったら弓を持てるか。次は、弓を引くことができないので、どうやったら引くことができるかっていうのを1個ずつクリアして、やっと矢を前に飛ばすのに何か月もかかりましたね。体が前に倒れないようにおもりを入れたリュックを背負ってみたりとか、海外の障害のある選手はどうやって矢を射っているのか、過去の大会映像を研究し、アイデアや工夫を取り入れて、今のスタイルに行き着きました。


岡崎選手は19歳の時、JR福知山線の脱線事故に巻き込まれ、けい髄を損傷。
首下にまひが残り、車いす生活となります。2013年、母からのすすめでアーチェリーに出会いました。


アーチェリーを始めた経緯や始めた時の心情を教えてください。

岡崎:事故に遭ってしまって、上半身も下半身にもすごいまひが残ってしまって、自分のやりたいことにすごく制限が出てきてしまったんですけど、体を動かすことが好きだからやっぱりスポーツはやりたいっていうのは前から思っていて。それで、母から「アーチェリーやってみたら?」って言ってもらって、母も経験者だったので、最初、「2人で始めようか」っていうので始めたんですよね。2人で弓買って始めたんですけど、私のほうがあっという間に抜かしていきました(笑)。

最初やってみていかがでした?

岡崎:いやぁ、私はもう全然、矢を前に飛ばすことすらできなかったんで、「本当にできるのかな?」っていうのはあったんですけど。やっぱり今のスタイルにもっていくまでがすごく時間かかりました。

「できないからやめよう」とはならなかったんですか。

岡崎:思ったんですけど、ちょうど東京パラリンピックの開催が決まったので、「やれるところまでやってみよう」って。そこがあったから今までやってこられたなというのはあります。

「できることを見つける」という風に思えるようになったのはどういった心境の変化だったんですか。

岡崎:今までやっていたフリスビーとかができなくなったりして、学校に通うのもできるのかとか日常生活においても不安だらけで。例えば復学をして就職活動して東京に引っ越してとか、その1つ1つのことがすごく大変だったんですけど、母とかいろんな周りの方のサポートのおかげで1つ1つクリアできていって、それが成功体験みたいに積み重なって今につながっているかなと思います。いろいろな工夫とか、「できない」って最初から決めるんじゃなくて、「こうやったらできるんじゃないか」っていうふうに考えながらやってきました。それがあったからアーチェリーも続けてこられたかなと思います。

アーチェリーの魅力についてどう感じますか。

岡崎:まず、何かスポーツをやりたいなと思って探し始めたんですけど、私の場合、障害の程度が重いので、なかなかできるスポーツがなくて、やっとたどり着いたのがアーチェリーだったんです。アーチェリーも、最初弓が引けるのか、自分でできるのかってすごく不安だったんですけど、実際に試合の映像とか見ると、選手たちがいろいろな工夫をしていて、腕のない選手もいれば、視覚障害の人もアーチェリーやっていたりして、「これだったら自分にもできるんじゃないか」と思って始めたんです。やっぱり、障害の種類が違ういろいろな方が取り組めるのがアーチェリーの魅力だなと思います。視覚障害の人がアーチェリーやるのを最初見た時、すごくびっくりしました。どうやって的に当てるんだろうと思って。


2021年、東京パラリンピックに最も障害の重いW1というクラスで出場。初出場ながら、女子個人で5位に入賞しました。


東京パラリンピックは今振り返ってどういう大会だったと思いますか。

岡崎:結果だけで見たらめっちゃ悔しい大会でしたね。ふだんの実力通りのことは出せたので、そこは納得はしているんですけど、もうちょっと上に行きたかったっていうのはあります。ただ、やっぱりアーチェリー始めた時に「東京パラを目指す」という目標があったので、まずは出場を目指してやって、出場が決まって目標を「メダル」に持っていって。だから、東京パラに向けて頑張れたことは「自分をすごく成長させてもらったな」と思います。

東京パラを経て、何か身近で変わったことや実感はありますか。

岡崎:変わったこと……そうですね。身近なところでいうと、街に出ると車いすユーザーの人がすごく増えたなっていうのは思いました。あとは、車いすのままでも乗れるタクシーが増えたとか、そういう細かいところで、昔に比べたら暮らしやすくなったなというのは感じています。障害者がいてもあまり違和感を感じないっていうんですかね。社会がそういうふうになっていってるのかなっていうのは肌で感じています。

最後に、今回の「アニ×パラ」を見た方にどういうことを感じてほしいですか。

岡崎:強大な敵に立ち向かう強さ、あきらめない強い思いを「うしおととら」から感じていて、勝手に東京パラを目指していた自分と重ね合わせてしまいました。この5分のアニメの中にそのシンプルな要素が詰まっているので、そういうところを感じてもらえたらいいなと思います。

ありがとうございました。