第16弾

パラカヌー × 君と

声優座談会 佐倉綾音×加隈亜衣×井上麻里奈

和気あいあい! アフレコの様子、ご紹介します

実在する人物を演じる難しさ

井上麻里奈さん(以下、井上):ただいま「アニ×パラ」第16弾、パラカヌーの収録が終了いたしました。お疲れさまでーす。(拍手)

佐倉綾音さん(以下、佐倉):じっくりこだわって収録しましたね。

井上:そうだね。原作の『君とぐ』の世界と実在するパラカヌーのモニカ選手がコラボレーションする新たな短編アニメーションでした。今回、綾音はモニカ選手のお声を当てたわけじゃないですか。実在する人を演じるのはプレッシャーが大きくなかった?

湧別恵梨香役 井上麻里奈さん

佐倉:大きかったです。2次元と現実世界の融合みたいな作品で、実在する人を演じる緊張感が…。「似てねーよ」って言われたら「そりゃそうだ」って(笑)。

井上:どういうふうに役づくりしたの?

佐倉:モニカ選手の資料やしゃべっている映像を拝見したり…。でも、それをそのままアニメーションに持ち込んだら声優がやる意味がないと思うので、もう少しモニカ選手の人生のドラマチックさを立たせるように演じられたらいいなって。

瀬立モニカ役 佐倉綾音さん

加隈亜衣さん(以下、加隈):私、以前この作品を朗読したことがあるんですが、リアルな悩みを持った女の子たちの努力や葛藤がすごく丁寧に描かれている作品ですよね。きっとモニカ選手もそういう悩みを持ちながらも向き合い、努力を続けられている。今回、その背中を見せてくれたっていう意味では、原作の世界観にぴったりだったし、輝いて見えてすごくかっこよかったです。

鶴見希衣役 加隈亜衣さん

佐倉:ありがとうござい…いや違う、私じゃなくてモニカ選手か!

井上:自分がモニカみたいな(笑)。

佐倉:勘違いするところだった~。自分がめちゃめちゃカヌーできるっていう錯覚を起こすところでした(笑)。

「君とぐ」 キャラの魅力

井上:実際原作でも(加隈さん演じる)希衣ちゃんは悩んだりしていくの?

加隈:そうでしたね。努力するけどすぐには形にならなかったり、(井上さん演じる)後輩の恵梨香ちゃんのほうが秀でていたり、劣等感や挫折が代表して描かれやすい子ではありますね。

アニ×パラ「君と漕ぐ」登場人物
オールを持つ瀬立モニカ選手から時計回りに天神千帆、鶴見希衣、湧別恵梨香、黒部舞奈

佐倉:恵梨香ちゃんも(原作では)もっといろいろ描かれているんですよね?

加隈:恵梨香ちゃんは、口数は少ないけれどよくよく見るとすごく自分の中に熱い思いを秘めている子だったり…。

井上:恵梨香ちゃんは、今回はあまりセリフがなかったから物静かでクールで、でもすごく実力がある子なんだろうなっていう思いで臨ませていただいたけれども。これはぜひ、さらに描いたものも見てみたいなと思うし、今回のアニメをきっかけに原作も読んで深めていただけるといいよね。

加隈:うんうん、そうですね。

パラカヌーと声優 意外な共通点とは

井上:今回の作品内で、印象的なシーンやセリフはあった?

加隈:モニカ選手のセリフで『事故で車いすの生活になって、カヌーどころじゃなくてね』と言ったあとに、それでもまたカヌーに乗ることを応援してくれた周りの人たちの存在があって乗ることができた、『だから好きなんだよね、カヌー』という流れがステキ過ぎて…。その言葉に感化されて、希衣も自分自身と向き合い始める。好きなものに対してひた走る背中ってかっこいいですよね。

『だから好きなんだよね、カヌー』

佐倉:私は、モニカ選手の『水の上ってさ、自由だよね』。

井上:わかる。

佐倉:『足が動かなくたってこんなふうにみんなと一緒に前に進むことができるんだもん』。

井上:ここは今回のキーゼリフだよね。“みんな一緒に”なんだよね。

『水の上ってさ、自由だよね』

佐倉:そう。カヌーってソロの競技でもあるけど、「一人で頑張るだけじゃなくて、みんなと一緒にやることが選手にとってはモチベーションだったりするんだな」と思ったときに、私たち(声優)も一人で収録してるときとみんなとこうやって収録ができるときは、意識の持ち方やテンションが全然違うので、「みんなと一緒に何かを突きつめることの楽しさって、フィールドが違えど、きっと同じなんだろうな」と思って。とてもすてきだなと思いながら演じてました。

井上:このセリフは本当に胸に響くよね。モニカ選手のセリフで水面を進む感覚を『まるでアメンボになったみたい』って表現していて、私はカヌーに乗ったことないけど、きっと水面間近をこぐわけじゃない? 想像してみたら「確かにそういう感覚になるんだろうな」ってすごくビジョンが浮んでくる。

佐倉:乗ってみたいですよね。

井上:乗ってみたいよね。だって、普通の手こぎボートをこぐだけでもさ…。

加隈:大変ですよね。

佐倉:私、やったことがあるんですけど、なんかね、前と後ろが逆になったりするんですよ。崖みたいなところにガーンって当たってはじかれたりとか、普通に進むのにも大変なのに本当にすごいなと思います。

声優初挑戦! 元日向坂46・渡邉美穂さん

井上:さっき綾音が「みんなで作ること」の楽しさを言ってたけれども、今回、声優初挑戦ということで、舞奈ちゃん役に渡邉美穂ちゃんが参加してくれました。ちゃんとした声優のアフレコ現場としては今回が初めてだったらしいのですが、お二人、いかがでしたか?

加隈:初々しかった。

佐倉:初々しかった。自分まで若くなった気がしましたもんね。撮影中にぐんぐん上手になって。

加隈:すごかったね、あの成長。本人にも「スポンジみたい」って言っちゃったんですけど、テストと本番も何回も撮ったじゃないですか。そんな中で、最初と最後の差が別人というぐらいちがくて。

井上:最初のひと言なんてさ、テストが始まろうとしているんだけどおそらくそれが分からなくて…。

佐倉:「えっ、始まるんですか?」って。

井上:みんなで「マイク前に立っていいよ」って。

佐倉:「しゃべって、しゃべって」って。でも、本当にポテンシャルが、たぶんもともと高いんだろうなと。わからなくて恐る恐るだったのが少しずつ剥がれていって。私たちも褒めて伸ばして…。

井上:でも、褒めるところしかなかったもんね。

佐倉:そう。ほんとにそうなんですよ。だから、「いいよ。どんどんよくなってる」って。

井上:ご本人も最初は「緊張します」「本当に合ってるんですか?」みたいなアワアワしてるところから、回を重ねて自分が思っているお芝居ができるようになってきたのが「楽しいです」って言ってたね。

加隈:(渡邉さんが演じた)舞奈ちゃんも、カヌーは初めてだけど楽しんでる子だから(渡邉さん自身と)リンクして「すごく舞奈ちゃんぽいな」って。あと、髪型も舞奈に合わせて「ふわふわっとしてみたんです」って話してくれたりとか、世界観に溶け込もうとしている姿勢もすてきで、ひたすら「かわいい」って…。

井上:かわいい。この一回だけにとどまらず、もうちょっとやってほしいな。なんだったら、これで第2弾とかね、作っていただいてもわれわれは一向にかまいませんよ(笑)。

佐倉:確かに。

加隈:また会う気満々なので(笑)。

視聴者へのメッセージ

井上:それでは最後に、この作品をご覧くださってるみなさまに一人ずつメッセージを、ということで私から…。今回初めてパラカヌーに触れて、モニカ選手と出会い、この競技のおもしろさ、楽しさ、そして選手のみなさんの前向きな姿勢に本当に勇気をいただきました。壁にぶつかったときや投げ出したいものがあるときに、みなさんの勇気になる作品だと感じています。そしてこの作品を通して、パラカヌーという競技に触れ、知っていただき、広がっていったらいいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。


加隈:私は以前、朗読をしながら「この子たちはこんなふうに動くのかな?」と映像を思い描きながら時間を過ごしていたので、こうやって形になって、声を担当できて本当にうれしく思っています。そして、モニカ選手が向き合い、乗り越えてきた尊い時間と結果に触れて、パワーをいただきました。私自身この作品に関わることで、ほんの一部ですが、パラ競技を見させていただき、みなさんと一緒に応援させていただければと思いました。


佐倉:自分の歩む道が果たしてこれでいいのか、立ち止まって迷うことって誰しもあると思うんです。そんな中で、「いや、これでいいんだ」って自分を肯定してあげられる何よりの原動力は、やっぱり自分の「好き」という気持ちだと思うんですよね。「これが好き。これをやりたい」という気持ちはいちばんシンプルで強い原動力だと、今回『君と漕ぐ』のキャラクターたちとモニカ選手から改めて教えていただいたなと思います。私自身はお恥ずかしながらパラカヌーというものをこの作品を通して初めて知ったんですけれども、きっと画面の向こうにもそういう方がいらっしゃるのかなと思います。ぜひ今後は、パラカヌーを見かけた際はこの作品のことも思い出して興味を持っていただけたら、この作品の存在が意味あるものになるのかなと思います。引き続き、瀬立モニカ選手とともにこの作品もよろしくお願いいたします。