第9弾

ボッチャ × ひうらさとる

ひうらさとるさん(原作)×武井壮さんインタビュー

“ボッチャが、健常者と障害者の未来を考えるきっかけに”

原作のひうらさとるさんが「武井壮のパラスポーツ真剣勝負」でMCを務め、アニ×パラの応援団長でもある武井壮さんと対談しました。

武井さんは番組収録で、ひうらさんはアニメ制作の取材でボッチャを体験されました。どんな競技だと感じましたか。

武井 白い球(ジャックボール)の近くにボールを投げたほうの勝ち、というシンプルなルールなんですけど、6球ずつ投げられるので戦術の幅が広くて楽しいですね。相手のボールにぶつけて邪魔をしたり、ボールの塊の上に乗せたりするプレーもあって、奥が深いなと思います。

ひうら 今回、選手たちの練習試合を解説付きで見せてもらい、投球ごとの意図が分かって面白かったです。実際にプレーも体験したんですが、まぐれでいい投球ができると、さらに楽しくなっちゃって(笑)。

武井 投げたボールがジャックボールにピタッとくっついたりすると、もうやめられないですね。

ひうら それくらい身近なスポーツなんですよね。ボッチャはパラスポーツとして生まれたけど、障害の有無を問わずプレーできる。しかも、ボールがあればどこでもできる。全ての人が気軽にできるスポーツなんだと、今回のアニメで描きたいと思いました。

アニメでは、結衣(CV:花澤香菜)たち健常者が、障害のある選手にボッチャを教わる形で一緒に楽しんでいますね。

ひうら 普通のOLさんである結衣がボッチャに触れて、ダイバーシティーについて考えるお話になりました。そして、しっとりとしたボールの感触から、小学生になって距離をおいてしまった、脳性麻痺の友達のやわらかな手を思い出す……。結衣が、過去の自分とも向き合う構成になっています。

武井 ボールの感触と手の感触を重ねるのは、面白い表現だなと思いました。幼稚園のころに仲良くしていた子が、小学校にあがると特別支援学級に入って、学校生活を送るうちに距離ができていた。障害者だと意識しちゃって、関わり方が分からなくなった感じなのかな。結衣はそれをちょっと悔いているんですね。

ひうら 実は、私自身にも脳性麻痺の幼なじみがいて、同じように長いこと会っていないんです。その子に会いたい気持ちもあるので、そういう心情をリアルに描いてみたいと思いました。

武井 アニメのラストでは、結衣が幼なじみの子に電話をかけていますよね。ダイバーシティーに絡んだ仕事を担当するうえで、彼女のアイデアを聞きたい、そして「未来の話をしたい」という終わり方。健常者と障害者が同じ世界で生活をしていることや、同じ楽しみを共有したいという気持ちが表現されていて、いいなぁと思いました。結衣は第一歩を踏み出しましたね。

ひうらさんご自身も、今回を通じて障害のある方との関わり方に変化が?

ひうら 取材に行く前は、選手の方々とどう接したらいいんだろう、何を聞けばいいんだろうと思っていたんです。でも、「武井壮のパラスポーツ真剣勝負」のボッチャ編を事前に見て、すごく気が楽になりましたね。武井さんが、すごく無邪気に選手と張り合っていて、悔しくて転げ回っていたので(笑)。気楽に一緒に楽しめばいいんだって思えました!

武井 「パラスポーツで真剣勝負する番組をやります」と最初に聞いたときは、僕もどうしたらいいのか分からず悩んでいましたね。でも、現場に行くと毎回、障害者の皆さんに「これができないんだな」ではなく、「こんなにできるんだ!」「こんなことができるんだ!」って感じるんですよ。常に驚かされるので、全く気を遣わない武井壮が出てきて、「ぶっ倒してやる!」とか言っちゃうようになりました(笑)。

ひうら すばらしいと思います(笑)。

武井さん、いつもコテンパンに負けていますよね……。

武井 はい(笑)。どのパラスポーツも、僕が今まで経験してきたスポーツにない技術や感覚が詰まっているんですよ。僕が見ていたスポーツの世界、スポーツの可能性が、2倍くらいに広がりました。

ひうら なるほど~。

武井 これって、スポーツに限らない話だと思うんです。例えば、車いすの方は僕らのように階段を上れないけど、僕らは彼らのように直線をスーッと速く進めないですよね。僕ら健常者ではできないことも彼らならできる、という可能性を節々で感じています。

ひうら 障害のある方と一緒に過ごすと、そういう気づきが得られますよね。その意味でも、気軽にプレーできるボッチャはいいかも。健常者と障害者の方が一緒にやったら、自然と気持ちに変化が生まれると思います。

武井 ボッチャは本当に楽しい遊びでもあるので、健常者にも広まってほしいですね。健常者と障害者の方が一緒にプレーできる大会もあるので、混成チームを組んで世界一を目指すのもいいかもしれません。

ボッチャをきっかけに、世の中全体のダイバーシティーが改善されるといいですね。

武井 東京パラリンピック後には、そんな世の中が少しは実現しているんじゃないか、という希望は感じています。そのためには、大会が終わったあとも大事。メダルを取ってスターになれることがかなわなかった選手にも、活動できる場がもっと増えたらいいなと思います。例えば、テレビ業界でも普通の街ブラ番組とかにも出られるようになったらいいなぁ。継続的に活動を見てもらえる環境ができたら、選手の人生が充実して、競技が盛り上がり、バリアもなくなっていくんだと思います。
まずはパラリンピックですね! ぜひ一緒に観戦していただいて、ボッチャの日本代表“火ノ玉ジャパン”の選手たちに声援を送りましょう!

本日はありがとうございました。