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佐賀 第70回日本伝統工芸展 染織 新人賞 鈴田清人さん

ニュースただいま佐賀 いまサガ インタビュー
  • 2023年09月13日

    今年で70回目を迎えた日本伝統工芸展の染織部門で新人賞を受賞した、鹿島市の鈴田清人さん(30)。受賞したお気持ちや、どんな思いで作品作りに取り組んでいるのか、猪原アナウンサーが聞きました。

    第70回 日本伝統工芸展 新人賞受賞!

    日本伝統工芸展は、日本の伝統工芸を現代に継承し今日の生活に即した新しいものを築き上げるために昭和29年以来、毎年開催されています。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門があり、これまで数多くの優秀な作家を輩出してきた国内最大規模の公募工芸展です。

    猪原アナ

    鈴田さん、新人賞受賞、おめでとうございます!

    鈴田清人さん

    とてもうれしいです。今後の制作の励みになります。

    (受賞作を)早く多くのみなさんに見ていただきたいです。

    日本伝統工芸展 新人賞受賞作 木版摺更紗着物「蒼晶」

    こちらが、新人賞を受賞した木版摺更紗着物「蒼晶(そうしょう)」です。つわぶきの葉をモチーフにしています。青とグレーを基調に、涼しげな色合いに仕上げられています。9月から始まっている巡回展で全国10の会場で展示されることになっています。

    木版を押すのは、着物一枚で3,000回!

    鈴田さんが作った木版と型紙

    木版摺とは、木版と型紙を自分で作って柄や色を付けていく技法です。鈴田さんは、今回の作品「蒼晶」制作にあたって、木版5個、型紙80枚を作りました。着物一枚に押す木版は、なんと約3,000回!しかもミリ単位で調整します。型紙での色付けは、その何倍もかかるそう。鈴田さんは、数えたことはないそうですが、ざっと計算すると、色付け作業はおそらく1万回は越えているとのこと。なんという気の遠くなるような作業でしょう・・・。

    鈴田清人さん

    木版摺更紗の制作には ちり や ほこり は禁物。

    床に置いた物は作業場には入れません。

    猪原アナ

    繊細で緻密な作業なんですね。

    つわぶきをモチーフにした柄

    今回の「蒼晶」は、型紙の特徴をいかして色の濃さの変化に挑戦。こういった独自の工夫が、新人賞受賞に結びつきました。

    染色の材料は、大豆など自然由来の物も使っているので、材料が変質しないうちに仕上げます。「蒼晶」の判押しと色付けは10日で仕上げました。時間との戦いでもあるんです。

    鈴田家に伝わる貴重な秘伝書

    鈴田さんの祖父が残した秘伝書

    鈴田さんの家には、鈴田さんのおじいさんが書き残した秘伝書があります。佐賀に伝わっていた鍋島更紗を木版摺更紗として復活させた、貴重な資料です。

    「比類ナキ秘法ニ付 口伝ニ譲ル」

    「比類ナキ秘法ニ付 口伝ニ譲ル(貴重な技法であるため、口伝えでのみ受け継ぐ)」と書かれてあります。古くから佐賀藩に伝えられていた伝統工芸「鍋島更紗」は、廃藩置県によって途絶えていました。それを鈴田さんの祖父 照次さんが、資料をもとに研究を重ねて、この秘伝書を書き残したのです。そして「木版摺更紗」として復活させ、人間国宝である父 滋人さん、清人さんと受け継いでいます。

    棕櫚竹(しゅろちく)をモチーフにした作品
    猪原アナ

    きょうは貴重な作品の一つを持って来ていただきました。

    鈴田清人さん

    庭に植えてある棕櫚竹(しゅろちく)をモチーフにした作品です。

    棕櫚竹(しゅろちく)の柄

    緻密な木版、幾度も重ねられた色付けによって、葉の茂みや葉っぱらしさが表現されています。

    柄を手作りで一つ一つ描きながらもミリ単位で調整するため、手描きのような風合いを残しながらも、機械で柄を付けたような連続した規則的な絵柄を描くことができます。

    鈴田さんのデザインの原案

    鈴田さんが作品にするのは、身近な草花。四季によって違う花々を見た時にきれいだなと思ったら、メモ帳やポストカード、スケッチブックなどに書き残して、デザインのアイデアにしています。植物をモチーフに選んでいるのは、工房兼自宅がある鹿島市が自然豊かな土地であること、そして身近にあるものが季節によって変わっていく所に面白さを感じているからだそう。

     

    猪原アナ

    一番のやりがいはどんな所ですか?

    鈴田清人さん

    着物を着る人に美しくなってもらいたいですし、現代のライフスタイルに合わせて、更紗の魅力をもっと伝えていきたいです。今後、自分が次の作品でどんな柄を作れるんだろうとわくわくしますね。

    鈴田さん、貴重な木版摺の制作風景を丁寧に教えて下さって、ありがとうございました。
    鈴田さんが新人賞を受賞した木版摺更紗着物「蒼晶」は、全国10の会場で行われる巡回展で展示されます。九州では来年2月7日(水)~12日(月・祝)に福岡市の福岡三越で開かれます。また、日本工芸会公式ウェブサイトでも見ることができるほか、9月17日(日)午前9時から放送の「日曜美術館(Eテレ)」でも紹介される予定です。お楽しみに!

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