勝俣には、朝の日課がある。それは、30分かけて園内を一周し、19種類85頭の様子を観察する「回診」。瞳の力強さ、人への関心、陸に上がる速度など、動物のどんな些細(ささい)な行動にも、「サイン」が隠されていると、勝俣は言う。人間の患者と違って、動物は自らの症状を語ってはくれない。しかも、自然界では具合が悪いことが外敵に知られると、狙われやすくなるため、本能的にその症状を隠そうとする。海獣医師として、どこまで気づいてあげられるか。しかも、水中で生活する海獣は、ひとたび細菌に感染すると、あっという間に命を落としてしまう。いかに早い段階で病気を見つけ、手を打てるか。その毎日は時間との「競争」だ。