カマイルカ「キララ」のその後
2006年12月14日 ディレクター:あらかわ

12月14日放送の海獣医師・勝俣悦子さんを取材したディレクターのあらかわと申します。
番組の後半で紹介したカマイルカの子ども「キララ」について書きたいと思います。

「キララ」が急激にやせ始めたのは、9月末のことでした。岐阜に出張していた勝俣さんも急遽、鴨川に戻り、緊急処置が始まりました。何しろカマイルカの子 どもは国内では13カ月以上生きたことがありません。現場には沈鬱な空気が流れていました。そこへ勝俣さんが魚を丸ごと与える「さし餌」を提案。思い切っ た決断で、突破口を開いたのでした。

あれから2カ月。当初、飼育係が総動員で「キララ」を捕獲し、強制的に口を開けて、魚を押し込んでいたのですが、今では「キララ」から飼育係のもとに近 寄ってきて、口を開けるようになったということです。まだ、自力で魚を食べるまでには至ってないようですが、体重は毎日100gずつ増えて、今では 28kgになったそうです(9月末は約20kg)。勝俣さん曰く、「半歩半歩、しっかり歩んでいますよ」とのことでした。

正直に打ち明けさせていただきますと、取材中、「キララ」がここまで回復するとは想像していませんでした。それほど「キララ」は危ない状況にありました。 それが、自ら飼育係のもとに寄ってきて、餌を食べるようになるとは…。早朝から深夜まで「キララ」の様子を見守りつづけた飼育係の皆さんの真摯な姿勢には 本当に心を打たれました。そして、勝俣さんの決断力、行動力。追い込まれたときこそ、思い切って前に打って出る勇気。それに応えた「キララ」の生命力。一 生懸命な現場が、そこにはありました。

何事にも全力で立ち向かうこと。当たり前だけど、大切なことを教えていただいた取材でした。

写真左が母「スピカ」、右が「キララ」