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第11回 2006年4月13日放送

心地よい家はこうして生まれる 建築家・中村好文


楽しまなければ 心地よいものは 生み出せない

 中村のオフィスは常に笑いがある。机の周りには古今東西で買い求めてきたおもちゃが並ぶ。そしてスタッフとの打ち合わせ中にも中村は、冗談を言うことを忘れない。しかめ面をしていてはいいものは作れない、「遊び心」が大切だというのが、中村の基本姿勢。
 その遊び心が、自由な発想を生み、常識にとらわれないさまざまなくふうを生み出す。

写真中村のお気に入りのおもちゃ


どんな家が欲しいのか、依頼者にはわからない

 中村は、依頼者との最初の打ち合わせで、希望する間取りや部屋の広さなど、家についての具体的な要望は、ほとんど尋ねない。なぜなら依頼者が本当に求めている家は、依頼者自身には分からないと考えているからである。心地よさは人によって千差万別、狭い部屋を心地よいと思う人もあれば、息苦しくて落ち着かない人もいる。
 ゆえに中村は、打ち合わせの席で、生活についての雑談を重ねていく。その中から、依頼者にとってどんな家が心地よいのか、探っていく。

写真 依頼者と打ち合わせをする中村


主人公は『家』

 中村の口癖は、「これからできる家に仕える」。中村は施主という言葉は使わない。主従関係ではなく、対等でありたいと考えるからである。施主が望むことを望むように作れば、それでも済む。しかし主人公は「家」と考えれば、そうはいかない。建築家も、職人も、いい家を作るために、知恵や技術を惜しみなくつぎ込む。そうすることが結果的に、施主のためになるという。

写真 現場にたって家作りのヒントを探す中村


悪条件にこそ突破口あり

 狭い土地、予算の制限、日当たりの悪さなど、住宅建築には悪条件はつきものである。
 中村は、悪条件は必ずしも家にとって悪く働かない、むしろ良い方に働くことが多いという。その悪条件を克服するために、くふうにくふうを重ねていった先にこそ、家をよりよいものにするアイディアが生まれることが多いという。

写真 設計にあたる中村


プロフェッショナルとは…

あるタンゴダンサーが「どうしてあなたはタンゴを選んだんですか」って言ったら「僕がタンゴを選んだんじゃない。」と「タンゴが僕を選んだんです」って答えたんですよね。それを聞いていて…プロフェッショナルというのは、ある特定の職業を選んだ人じゃなくて、ある特定の職業から選ばれた人の事をいうんだと思うようになりました。

中村好文

The Professional’s Tools

自作のスケッチボード

多忙な中村、移動中にも設計やデザインができるよういつも自作のスケッチボードを持ち歩く。台紙は厚紙、四隅にひもをつけ、紙を固定する。ボードの真ん中には、仕込み杖(づえ)ならぬ仕込み定規。これまで何度もくふうを重ねて使いやすさを追求した。物への愛着が強い中村、仕込んである定規は、中村が小学校の時から愛用している竹定規だ。使いやすいように細く割いて、薄く削って使っている。「一生一定規」と中村は笑う。

写真スケッチボードに仕込まれた愛用の定規


巻き尺

建築家・中村の仕事に欠かせないのが、巻き尺。物持ちが良い中村、20年以上前に、海外に出かけた際に購入したドイツ製のものを今でも愛用している。水平、垂直を調べることのできる水準器、そしてコンパスもついているという優れものである。現場で、寸法を測るのはもちろんのこと、テーブルといすの高さの関係など、レストランでも気になることがあれば、人目も気にせず、すぐに取り出して採寸する。若いころから訓練を続けており、今では習慣化しているという。

写真スタジオでテーブルを測る中村


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