<配布 1>
2005 年 6 月 30 日
「デジタル時代のNHK懇談会」初回会議への参加にあたっての所見メモ
早稲田大学教授
山野目  章夫
※所用により中途退席しなければなりませんため、下記のとおり所見を書面にて提示させていだきます。
1)  質の良い放送番組を社会に提供するということの重要性に鑑み、商業的な利潤計算に依存しない放送部門としての公共放送を健全な仕方で育成し、維持してゆくことは、社会的要請であると考えられる。
 
2)  このようなものとしての公共放送は、その運営について適切な民主的コントロールが確保される必要がある一方において、その経済的基礎を確立するために、その十分な運営資金の調達手段が用意される必要がある。いうところの資金調達の方法としては、市場から調達する方法と、かならずしも市場的でない回路を通じて調達する方法とを想定することができる。
 
3)  市場から資金を調達する、という手法については、そのようにして調達される資金の量ないし割合が運営資金の全体のなかにおいて占めることが相当であると認められる程度が、公共放送であるという性格に照らして、問われるであろう。また、資金を調達するにあたり反対給付として市場に提供する役務の具体的な態様ないし性質もまた、公共放送機関の性格との関係で論議しておくべき問題があると考えられる。
 
4)  非市場的な資金調達をめぐっては、どのような指標に着目して(どのような役務を受けることが指標とされるか、また、負担の単位は個人ごとであるか、世帯などそれ以外の単位であるか、など)社会構成員に対し負担を求めるか、また、資金調達の具体の方法をどのようなものとするか(強制的徴収であるか契約関係の擬制とするか、それら以外の形態であるか、また、調達は公共放送を担う組織自身によりなされるのか、それとも税の徴収などの形式を借用してなされるのか、など)が考究される必要がある。非市場的な手段であるからには、多かれ少なかれ報償性が希釈されてよいものの、一般的報償性と個別報償性の中間に位置することとならざるをえないことの説明の難しさ(特殊な負担金が、どのように特殊であるかの所以の説明の難しさ)を克服してゆかなければならないことは、資金調達を円滑に遂行するうえで、実際上も重要な課題となる。
 
5)  これらの諸点に留意しつつ、この懇談会においては、現行の受信料制度の制度的前提や運用実態などについて、認識を共有したうえで、今後において改善を検討するべき事項について、さらに論議を発展させるべきである。その際には、現代社会における公共放送の役割とそれへの国民的理解を確保するための方策などと関連させながら、さらに、さまざまの新しい先端的な提供役務の出現に対応した合理的な受信料体系の再構築ということなどが論点とされてよい。
TOP page へ戻る