しあわせニュース

2023年03月24日 (金)

白血病元患者が届ける"命のバトン"

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献血によって集められた血液は病気やけがの治療で使われることから、“命のバトン”とも言われています。

血液は人工的に造ることができず、長期間保存もできないため、献血でしかまかなえません。

そして、一度でも輸血を受けたことがある人は、献血に協力することはできません。

かつて急性リンパ性白血病を患い、輸血によって命を救われた男性が、献血以外の方法で患者のもとへ“命のバトン”を届けています。

(大阪放送局 しあわせニュース取材班 小野田真由美)


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大阪・城東区にある「大阪府赤十字血液センター」は関西各地の献血ルームなどで集めた血液を管理し、府内、約2000の医療機関へと届ける“大阪の心臓部”です。

供給課に勤務する2年目の長束凌さん(23)さんは、特別な思いで、仕事に向き合っています。

長束さんが、高校1年生の時に書いたTwitterです。

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長束さんのTwitter
「この抗がん剤、ほんま恐怖でしかない。これ、ほんま副作用キツすぎやねん。地獄が始まるー」


当時、長束さんは“血液のがん”と言われる「急性リンパ性白血病」を患っていました。

抗がん剤を使った治療で血液を造ることができなくなったため、「輸血」が欠かせませんでした。

入院中、輸血を何度も受けるたびに、体調はよくなったと言います。

長束凌さん
「抗がん剤治療とセットで輸血をしました。闘病生活は、想像していたものよりはるかにしんどくて。血液がなかったら、何らかの合併症で、たぶんその時に人生を終えていたんじゃないかなと思います」


献血に協力はできないけれど

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2016年 闘病中の長束さん

2年を超える治療でがんはなくなり、以前と変わらない生活を送れるまでに回復します。

病院に血液があることは、当たり前ではない。

献血に感謝して、自分が手にした幸せを、次の誰かにつなぎたい。

そう思うようになったと言います。

しかし、「輸血」を一度でも受けたことがある人は「献血」をすることができません。

“自分にできる献血”は、患者さんのもとに血液を届けること。

献血には協力できないけれど、命をつなぐ“バトンの走者”になると決めました。

長束凌さん
「献血でつなげてもらった命なので、赤十字で働くことが自分にとって運命でもあり、使命でもあるんじゃないかな。血液がめちゃめちゃ力になることを知っているので、他の誰よりも1番無事に届けたいという思いが強いんじゃないかなと自負があります」


命をつなぐバトンの走者

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長束さんは、職場で、病院からの発注にすぐに応えられるよう、在庫の調整や配送の手配などを担当しています。

出荷前には、血液の状態を確認します。

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血小板

例えば、白血病などの治療に使われる「血小板」の黄色い液を電灯の下で揺らしてみると、写真のような“モヤモヤ”が現れます。

この状態が、細胞が呼吸をして、元気な証だということです。

「血小板」の有効期間は、わずか4日間で、管理が特に難しいので、毎回、一つ一つ厳しくチェックして送り出しています。

長束凌さん
「この仕事をできれば一生続けたいし、人生そのものになるんじゃないかなと思ってます」


献血 80%以上はがんなど重い病気の治療に

献血で集められ、病院に運ばれた血液は、どういかされているのでしょうか。

ケガの治療や手術に使われるイメージが強いと思いますが、それは全体のごくわずか。

日本赤十字社によると、全体の80%以上は、がんや白血病などの重い病気の治療に使われているそうです。

血液を待っていた立場から、血液を届ける立場となった長束さん。

今後は、「献血」を広める仕事にも力を入れたいと考えています。

『生きたい!』と願う誰かのために。

これからも、“命のバトン”をつなぐ力走を続けていきます。