しあわせニュース

2023年03月20日 (月)

口笛吹いたら桜が咲いた

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「口を守る」という意味を込めて、毎朝、口笛を吹き続けている人たちがいます。
そんなメンバーが大切にしているのは1本の桜。
口笛を吹くとなんと桜が…

(大阪放送局 しあわせニュース取材班 小野田真由美)

オリジナルの“口笛体操”

朝日が街を照らし始めた、午前7時。
大阪・守口市の「大枝公園」のベンチに置かれたスピーカーから、こんな声が聞こえてきます。

「誰もが持ってる楽器。口笛を一緒に楽しみましょう!」

流れる音楽に合わせて口笛を吹き、体を動かし始めるのは「守口大枝口笛の会」の皆さんです。

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約30人のメンバーの平均年齢は、70代後半。
ストレス解消やリラックス効果があるとされる「口笛」と一緒に、体を動かすオリジナルの体操を行っています。

何よりの“しあわせ”は、毎朝、仲間に会えること。
取材した日、ちょうど誕生日を迎えたという女性は、85歳に。
楽しい気分で吹けば、心にも太陽が昇ります。

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「元気よ!みな元気!口笛体操をして1日の始まりや。ここに来たら、みんな“しあわせ”になれるの!」

リーダーの山下裕さんは、この“健康口笛体操”がスタートした12年前から、毎朝のように口笛を吹いてきました。

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「守口市で始めたのは“口を守る”という意味から、身を持って、この体操で健康を維持しています」

守ってきた健康と桜

口笛で守ってきた健康。
もう1つ、同じ公園内で守ってきたものがあります。
福島県で、樹齢1000年を超えると伝わる「三春滝桜」です。

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その“子孫”が公園に植えられたのは、東日本大震災の翌年、2012年のことでした。

震災が発生してからの2年間。
「口笛の会」のメンバーは福島県を訪問して口笛を披露したり、共に合唱したりするなど被災地との交流を深めてきました。

その証として植樹したのが、鉛筆のように細い「滝桜」の苗木でした。

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滝桜のように1000年先も震災を語り継ぐ桜であってほしい。

大切に育てること3年。2015年、ついに花が咲きました。
その後は、毎年、花が咲くと、みんなで花見をしたり、口笛を吹いたりしています。

口笛で咲く「滝桜」

ことし3月11日昼過ぎ、最初の1輪が開花しました。
リーダーの山下さんは、メンバ-を前に、ある提案をします。

「口笛の吹ける人は口笛を吹いてください。それが私らの黙とうのやり方かなと思ってる、心を合わせて頑張りましょうよ」

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東日本大震災の発生時刻の午後2時46分。

仲間のハーモニカに合わせ口笛で演奏したのは、童謡「ふるさと」
「ふるさと」を思い、手を合わせるすべての人へ、鎮魂の口笛です。

すると…

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奏後に、2輪目の桜が開花しました。

「口笛の会」にも、笑顔の花が咲きます。

「すごい!すごい!ええ声やったから、滝桜に届いたんやなぁー」

リーダー・山下裕さん
「まず元気を持ってないと人は救えない。こんなんで救えるとは思っていませんが、1000年咲き誇る親の滝桜に負けないくらいに守口の桜が成長すると信じて、皆さんと一緒に口笛を続けていきたいと思っています」

“桜守”の思い

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 思いが届き、1週間後、桜は満開になりました。

メンバーが欠かさずに続けてきたことがあります。
福島県で被災し、守口に「滝桜」を植樹した女性へ、桜の写真を届けることです。

来年も1輪でも多くの花が咲きますように。
口も健康も桜も守る守口市の“桜守”。
祈りを乗せた口笛に、きょうも滝桜は耳を澄ませています。