2022年08月24日 (水)
戻ってきた"当たり前の夏"
もう夏休みも終わりですね。楽しい夏を過ごされましたか?
ふるさとへの帰省、花火大会に、夏祭り。
行動制限を伴わないお盆、各地で「3年ぶり」となるイベントも数多くありました。
これまでは“当たり前”だったいつもの夏の光景。
大阪・岸和田市の山あいの町にも、そんな“当たり前の夏”が戻ってきました。
(大阪放送局 カメラマン 寺岡祥平)
伝統の踊りがふるさとの夏の“当たり前”
8月初旬の大阪・岸和田市塔原町。およそ130人が暮らす小さな集落に、夜な夜な響く太鼓の音。
お盆に披露する地域伝統の「葛城踊り」の練習です。
練習を取り仕切るのは、ここで生まれ育った吉田正さん(60)です。
子どもの頃から50年あまり、毎年欠かさずふるさとの踊りに参加してきました。
「自分がやったのは小学校2年か3年だったと思うんです。ずっと続いているから、やっぱり“当たり前”の行事」
踊りでみんなが一つになれた夏…コロナで一転
塔原町に江戸時代から伝わる「葛城踊り」
お盆の時期に、子どもから大人まで地域が総出で豊作を祈願します。
代々受け継いできたこの踊りは、年に一度、町が一つになれる大切な行事でした。
(昭和60年)
しかし、少子化で年々担い手は減り、さらに、新型コロナウイルスの影響で、おととし、去年と中止を余儀なくされました。
このままではふるさとの日常が失われてしまう。
吉田さんは、行動制限のないことしのお盆の機会を逃すまいと、みんなと話し合い葛城踊りの再開を決めたのです。
「行動制限も出ていないし、屋外やし、やれるんやったらやっていったほうがいい。ずっと続いてきている行事なんで」
もういちど あのふるさとの夏を
再開に向けて動き出した吉田さん。
練習日程を知らせるチラシを配ったり、町内放送で練習の時間を知らせたり。
練習場には誰よりも早く来て道具を準備し、参加者が安心して練習できるよう、消毒などの感染対策も入念に行いました。
踊りの再開を心待ちにしていた人たちが続々と集まり、3年ぶりの練習が始まりました。
大人から子どもへ、踊りの所作を一つ一つ伝え、みんなで心ひとつに踊りを作り上げていく姿。
慣れ親しんだふるさと、塔原の夏を吉田さんは思い出していました。
戻ってきた それぞれの心の中にある“当たり前”
いよいよ迎えた葛城踊り当日。
会場にはこの日を楽しみにしていたお年寄りや久しぶりに帰省した人が集まりました。
練習を重ね、踊りきった子どもたち。会場は笑顔でいっぱいになりました。
準備に奔走した吉田さんも確かな手応えを味わっていました。
「できてうれしいというか、みんなの年中行事になっているんだな、また来年も続けていけたらと思っています」
3年ぶりに再開した葛城踊り。
そこには、待ち望んでいた“当たり前”がありました。
決して特別なことではない、どこにでもあった夏の風景。
久々の友人との再会、地元のお祭り、お墓参り。
ここ数年はコロナの影響で、いつも通りの夏が難しい状況が続いてきました。
でもそんな“当たり前”の中にこそ、日常の中の幸せも確かにあったと実感しました。