2019年03月14日 (木)
国立民族学博物館教授 寺田 吉孝さん
チャルメラの音色と言えば、ラーメンの屋台を思い浮かべる方も多いと思いますが、古くからアジアやヨーロッパの各地で、演奏されてきた楽器です。
国立民族学博物館教授の寺田吉孝さんにお話しを伺いました。起源は西アジアで、筒状の胴の先が朝顔型に広がる形をしていますが、大きさは数十センチから1メートルのものまで、国や地域によってさまざまです。
日本には安土桃山時代にポルトガルの宣教師が伝えたと言われています。東南アジアでチャルメラを使った布教活動が行われ、日本でも儀礼に使われたという記録が残っています。ポルトガル語の「チャラメラ」が、日本で「チャルメラ」と呼ばれるようになったそうです。
チャルメラは長年、世界各地の人々の暮らしの中で息づいてきました。寺田さんが最初に研究したのは南インドの宗教儀礼です。1メートル余りの長さの「ナーガスワラム」と呼ばれるチャルメラは、ヒンドゥー教の寺院の儀礼に欠かせない楽器です。音色は神様に届ける音でもあり、住民には、神様が今何をしているか知らせる音でもありました。
寺田先生が東アジア、カンボジアのキックボクシングの試合で目にしたのは、試合が終わるまで続く躍動感のあるチャルメラの音でした。40センチほどの長さのチャルメラがテンポを変えながら演奏を続けます。観客を高揚させる要素とともに、選手が集中力を高める効果もあります。
他にも、スペインのヴァレンシア地方の聖母マリアの祭りでは、教会の広場に人が集まり「人間の塔(ピラミッド)」という六段ほどのタワーを作るのですが、周りではチャルメラをメインにした演奏が行われます。愁いを帯びた調子で、人々の気持ちを盛り上げていきます。
多くの国や地域で、強い発信力や伝達力のあるチャルメラの音色は、今も人々の暮らしの中で息づいています。
インターネットでも放送と同時に番組を聞けます。