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2023年03月15日 (水)

選挙ポスター 同じように見えるの なんでなん?

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選挙期間中、あちこちで見かける選挙ポスター。
でもよく見ると、全部同じように見えるという声も。
この写真って、明らかに若いころの写真では…
4年に一度の統一地方選が来月に迫る中、選挙をめぐる疑問、調べました。

(大阪放送局なんでなん取材班 木村光佑 清水大夢 秋吉香奈)

 

選挙のギモンを尋ねると

「選挙ポスター、いつも注目しています」(60代)
「全員同じようなことを書いてるなって」(20代)
「ポスターが町なかにあふれすぎてて、逆に目が行かない」(10代)

大阪の街で選挙についての疑問を尋ねたところ「選挙ポスター」を挙げる人が何人もいました。

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どの候補者に投票するかを選ぶ判断材料の1つになりますが、どれも同じように見えるといった声も。
いったいなぜなのでしょうか?

選挙ポスター作ってみた

選挙ポスターはどうやって作られているのか。
実際に、私(木村)が新人候補という想定で、選挙ポスターを作ってみることにしました。
訪れたのは、選挙ポスターやチラシの制作、選挙カーの準備などを専門に行う会社。
今回の統一地方選挙では200件のポスターを制作しているといいます。
早速、写真館で撮影。

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せっかくなので、いろんなポーズで撮ってもらいます。

生き物が大好きな私。
公約は「生き物も人間もどんな立場の者も安心して暮らせるような社会」です。

そこで、ハムスターと一緒に撮ることにしました。

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寛容性や優しさが伝わるはず。
しかし、出来上がった写真について意見を求めると…

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選挙専門会社 鳥嶋浩延さん
「こういうのもおもしろいんですけど、あまりにも動物をかわいがりすぎている部分は、有権者からするとちょっと心が離れるかもしれないですね」


「個性を打ち出すか」それとも「多くの人に伝わるようにするのか」

ポスター作りの難しさを感じました。

選挙専門会社 鳥嶋浩延さん
「候補者の自己満足で終わらないのが大事なのかなと。いかに有権者の目線をむいてポスターを作れているか。多くの方がそんなにいやな気が起こらず、見た感じ好印象のものってなると、どうしても同じ構図になってしまう」

より多くの人から共感が得られるポスターにしたい。
その結果、オーソドックスなデザインが選ばれることが多いのかもしれません。

選挙ポスターの決まりって?

ところで、選挙ポスターに決まりはあるのでしょうか?
大阪市の選挙の担当者に尋ねると…

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大阪市行政委員会事務局選挙部 浜田和幸 選挙課長
「記載内容につきましては、虚偽事項でありますとか利益誘導とか罰則に触れるようなもの以外は基本的には自由に記載できると考えております」


選挙ポスターの掲示場所やサイズなどは公職選挙法で決められています。

記載内容については、うそなどはいけませんが、基本的には自由だということです。

いろんなポーズを撮ったり、複数の写真を使ったり、イラストを使ったり表現の可能性は広がっています。

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しかし、過去にはポスターの古い写真をめぐり議論になったこともあるそうです。

大阪市行政委員会事務局選挙部 浜田和幸 選挙課長
「実は平成16年に、国会の方で候補者本人の写真があまりにも古くて、虚偽事項にあたるんじゃないか、みたいな質問主意書がでまして、そのときに内閣総理大臣名で『写真が古いのは虚偽事項に当たらない』というような答弁書がでています。虚偽じゃなければ基本的には問題はないのかなと思いますね」

私たちがパスポートや運転免許証に使う写真は、6か月以内に撮影されたものと規定されています。

当時の質問主意書では「公職選挙法が許容する候補者本人の写真は、選挙執行時より所定の年数以内に撮影されたものとするべきだと考えるが、政府の見解を答弁されたい」と尋ねていました。

それに対しての回答は「写真の撮影時期に関し規制を行うことについては、選挙運動の在り方にかかわる問題であり、各党各会派において十分議論していただく必要があるものと考えている」というものでした。

選挙ポスターに変化も

一方、最近は選挙ポスターに変化も出ているそうです。
QRコード付きのポスターが増えているそう。

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自分の活動を紹介するWEBサイトやSNSへと誘導するのがねらいです。

また、若い候補者のポスターでは、明るい色をより多く使ったり、躍動感のある字体や写真を取り入れたりする傾向も出てきているといいます。

選挙ポスター費用は公費負担の対象も

気になるのは、選挙ポスターの費用。

大阪府知事選挙や府議会議員選挙の場合、条例で選挙ポスターの作成費用は公費で負担するとしています。

ビラの作成や選挙カーの関連経費も公費負担の対象です。ただし、いずれも上限や条件があります。

票が少ないとお金が没収されるんです

ポスター代など選挙の費用を出してくれるならば、自分も選挙に出てみたい。そう思う人がいるかもしれません。

ただ、実は立候補する時に、お金を用意しないといけません。
「供託金」です。

立候補の届け出を正式に受け付けてもらうためのお金で、あらかじめ法務局に預けることになっています。

知事選挙の場合、300万円です。
でも、いったいなぜこんなに必要なのでしょうか?

大阪市の選挙事務を担当する職員に尋ねると…

「総務省のホームページには、供託は、当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐための制度と記載されています」

「お金が用意できない人が立候補する権利を妨げる可能性があるという声もあるとは思いますが、そういった声も踏まえて、国会で議論され、公職選挙法で定められていると思います」

供託金は選挙の結果、一定の票数を取れば返ってきますが、届かないと没収されます。

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知事選挙の場合、投票の10分の1をとらないと没収。
100万人が投票したら10万票をとらないと、自治体のものになります。

大阪府知事選挙では、前回は没収された候補はいませんでしたが、前々回、8年前は3人の候補のうち1人が。その前、12年前は7人のうち5人が没収されました。

こうした仕組みは、額に違いはありますが、他の選挙も同様です。

ポスターを入り口にして考えて

まもなく始まる統一地方選挙。各地でさまざまな選挙が行われます。

ただ、選挙ポスターはあくまで入り口。
有権者の投票行動に詳しい専門家は、投票する前にぜひ候補者について自分で調べてほしいと話しています。

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関西学院大学社会学部 稲増一憲 教授
「ポスターは重要な面をもっているというのはあると思うんですけど、第一印象は参考にしたとしても、そこから気になった候補者についてぜひ情報を調べて、政策等について調べてもらえたらなと思います」


4年に一度の統一地方選挙。皆さんは誰にその思いを託しますか?