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2022年05月11日 (水)

大阪はモータープール なんでなん? 東京では消えた?

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「モータープール」という言葉をご存じですか?
駐車場を指す言葉ですが、大阪以外ではあまり見かけません。

なぜ、大阪ではモータープールというのか。

そのルーツを調べていくと、
70年以上前の出来事へとつながり、さらには東京と大阪
との違いも見えてきました。

(大阪放送局 なんでなん?取材班 吉田幸史)

 

 大阪はモータープールだらけ

大阪・中央区のビジネス街。
10
分ほど歩いただけで、4か所のモータープールが見つかりました。

大阪出身の私にとってモータープールは身近な言葉でしたが、他の県ではあまり見
かけた記憶がありません。

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大阪の人たちにも聞いてみました。

80代女性
「わたしの家の近くでも何か所かある。当たり前みたいな感じ」

しかし、でも、なぜモータープールと呼ぶのか聞いてみると・・・

「それは知りません」

それならば、モータープールで働いている人はどうでしょうか。

mo02.jpgモータープールで働く男性
「由来なんて気にもしたことがない。朝ご飯食べるようなもんよ。考えへんでしょう、皆さん」

ただ、大阪の人にとっては当たり前に使っている言葉でも、他の地域の人にとっては、違うようです。

名古屋から大阪に来た女子大生
「名古屋では絶対に見ないです。普通にプールだと思っていて、プールないじゃんって。なんだろう、モーター?プール?分からない」

 

モータープール 全国の3分の2が大阪に 

なぜ大阪にはモータープールが多いのか?

同じような疑問を持って調べた人がいました。
大手地図会社のゼンリンのSNS担当者です。

会社の膨大なデータから全国にあるモータープールという言葉がつく物件を抽出して調べていたのです。

その結果がこちら。

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青い点がモータープール。大阪湾や淀川の形がくっきり分かります。
全国の3分の2のが大阪に集中していました。

やはり大阪にはモータープールが多かった。

しかし、その理由を担当者に聞いてみると、それは分からないということでした。

ゼンリン SNS担当者
「ここまで地域に集中して名称が固まっているものはそんなに多くないと思います。きっとなにかの歴史があってと思うところはありますが」

モーター プール アメリカの俗語

地図のプロも知らなかったモータープールの歴史。

なにか手がかりはないか。
調べていると、モータープールについて書かれた一冊の本が見つかりました。
「俗語百科事典」
さっそく、著者の米川明彦さんのもとを訪ねました。

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これまで何人に聞いても分からなかったモータープールの由来について、米川さんはじょう舌に語り始めました。

梅花女子大学 米川明彦名誉教授

「これアメリカの俗語でね、これは戦争終わって日本がアメリカ軍中心の占領軍に支配されるでしょう。そのときの軍用車・乗用車の置き場のことです。それをモータープールと言う」

米川さんによると、モータープールは「モーター=車」「プール=水たまり」という意味を組み合わせた言葉だそうです。

mo05.jpg戦後、国内に駐留した連合軍の駐車場のことを、軍関係者がモータープールと呼んだのが始まりで、それを聞いた日本人も使い始めたというのです。

こちらは終戦直後に、連合軍の本部が置かれた東京・皇居周辺の当時の地図です。

mo06.jpgモータープールがあちこちに点在していたことが分かります。

米川さんによると、大阪でも終戦直後からモータープールが置かれ始めたといいます。

あの小説家の本にも「大阪でのモータープール」という言葉が登場しています。

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梅花女子大学 米川明彦名誉教授
「三島由紀夫がね。小説に書いてるんですよね。昭和25年だった1950年。舞台が阪急百貨店なのでその辺のことを書いてるんですよ。まだ進駐軍がいた頃のモータープールって出てくるんですよ」

東京では姿を消していったモータープール

東京でも大阪でも使われていたモータープール。
でも、なぜ東京では見かけなくなったのでしょうか?

米川さんによると、当時、東京でモータープールとして使われた土地は都心の一等地が多かったといいます。そのため、商業ビルなどとして開発が進み、モータープールは姿を消していきました。

一方の大阪。モータープールはそのまま民間の駐車場として活用されることが多く、そのまま残ったといいます。

さらに、大阪の人たちがモータープールという言葉を受け入れ、駐車場を意味する言葉として広めていったのではないかと推測しています。

梅花女子大学 米川明彦名誉教授
「大阪人の気性でしょうかね、新しいものを取り入れて、モータープールを民間の駐車場の意味で使うようになったと思います。関西では、抵抗なく使われた言葉と思います」

モータープールがパーキングに...

今回モータープールについて取材するなかで、多くが個人の経営で、管理人などが駐在していることに気づきました。管理人は高齢の方も多く、後継者などの課題を抱えていると話す人もいました。

一方、最近では、大手の駐車場運営会社による無人のコインパーキングが急増しています。日本パーキングビジネス協会によると、2007年は3万5200か所だった数が2020年には9万9620か所と、およそ2.8倍に拡大。

大阪でも「パーキング」と表示するところも多く見かけるようになり「モータープール」が徐々に減っていく可能性もあります。

長い歴史のあるモータープールという言葉。この先どうなっていくのか、引き続き見守っていきたいと思います。

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