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清水がおじゃまします!太鼓芸能集団・鼓童 研修所

  • 2023年12月11日

    コーナー「清水がおじゃまします!」。 
    地域密着リポーターの清水まどかが、県内のみなさんのもとに直接おじゃまして 
    地域で地道に頑張る人や魅力的な取り組みなどをお伝えします。

    放送した動画はこちら

    佐渡を拠点に世界各地で活躍する、太鼓芸能集団・鼓童。
    そのメンバーになるには、2年間の研修制度があるんです。
    研修生たちは全国から集まってきますが、たとえ研修制度を終えても、
    メンバーになれるとは限らない厳しい世界。それでも研修生たちは、日々バチを振り続けています。
    その現場に、おじゃましました!

    佐渡市柿野浦に、鼓童文化財団研修所があります。
    廃校になった旧岩首中学校を再活用しているんです。

    メンバーは18歳から24歳まであわせて10人。
    共同生活をしながら、太鼓の練習を積み重ねています。
    多い日は一日で10時間近く太鼓をたたくこともあるんだとか!
    研修生たちの体力の源は、どこからくるんでしょうか?

    あさ5時半。研修生の一日の始まりです。
    起床の合図は、拍子木の音。鼓童の研修制度が始まった38年前から受け継がれています。

    研修所に拍子木の音が響き渡ります

    起床したら、まずは体操。そしてすぐに掃除にとりかかります。
    この日の気温は8度。手で雑巾をしぼり、練習場である体育館の床を磨いていました。

    そして、毎朝欠かさないトレーニングであるランニング。
    研修所から海岸沿いの道を、およそ7キロ走ります。

    研修所の所長である石原泰彦さんは、この佐渡に研修所があることに意味があると言います。

    研修所・所長 石原泰彦さん
    「周りの自然と人に、この研修所は育てられている。豊かなものが佐渡にはあって、
     研修期間の2年間でそういうものを体にあびるように日々(過ごす)。
     それをいかしていろんな表現が生まれていくと思っています。」

    研修生のお部屋にもおじゃましました!

    2人か3人の合同部屋。部屋にはテレビも暖房器具もありません。
    年月を経た建物のため窓はぴったり閉まり切らず、部屋の中にいても、外の風を感じました…。

    研修生たちは携帯電話も持っていないので、家族や友人と、手紙でやり取りしているんです。
    もらった手紙を見返して元気をもらうと言います。

    食事時にもおじゃましました!
    食事はみんなで手作り。地元で採れた旬の野菜や魚をとるように心がけています。

    太鼓を上達させるための努力は食事中にも。
    右手と左手で同じ音を出せるように、利き手の逆の手で箸を持つのです。

    「わざとこっちを使って左手をどうやって
    指とか腕とか動かしてるかというのを考えるために」

    地域の人たちの支えで太鼓の魅力に改めて気づかされたという研修生がいます。
    笹原未紅さんです。

    幼いころから太鼓を始めた未紅さん。
    大学3年生のときに鼓童の舞台を見たことが、メンバーを目指すきっかけでした。

    研修所にはいってすぐに、研修生が参加するのが地域のお祭り。

    佐渡の民俗芸能「鬼太鼓」を、地元の人と2週間一緒になって稽古をするのです。
    パワフルに鬼太鼓を演じる地元の人たちの姿に、未紅さんは心を動かされたと言います。

    笹原未紅さん
    「まだ何もここ(佐渡)のことを知らない中でも(地元の人たちが)すごく受け入れて
     下さって。自分たちの持っている夢をすごい支えてくれる。とても温かい、皆さんが。」

    しかし、体調を崩し体を整えるために、先月(10月)1か月間地元の山形に帰ることに。

    笹原未紅さん
    「ここの生活に戻ってきたい気持ちはあるのに、なかなか戻れるタイミングに体がならなくて、
     気持ちもどんどん沈んでいって。
     自分が立ち止まっちゃっていることを受け止めきれないみたいな。」

    そんなとき、未紅さんの心のよりどころになったのは、研修所・所長の石原さんでした。
    未紅さんが地元に帰っていた間も連絡を取り、励まし続けたと言います。

    研修所・所長 石原泰彦さん
    「ふだん自分自身が生活して暮らす中で、いろんなものにぶつかる。
     それでもなんとかふんばって頑張ろうとしている、その中で太鼓の音を出し続ける。
     そういう(経験を重ねた)音が体の中まで響いてくるんじゃないかなと。」

    今月(11月)、研修所に戻ってきた未紅さん。
    未紅さんが楽しみにしていた日がやってきました。
    入所したばかりのころ、自分を奮い立たせてくれた地元の人たちとの交流です。

    年に一度の「収穫祭」。地元の人たちを招き、手づくりの料理と舞台でもてなします。
    料理は60人分!この日のために、数日前から仕込みを始めていました。

    魚もまるまる一匹解体するところから!
    研修生は魚のさばき方を地元の人から習います
    全員さばけるようになるそうです

    収穫祭に来る地元の方も、研修生と会えることを楽しみにしていました。

    「研修生との関わりが十何年前にあって、それで毎年交流しながらやってるので、
     みんな我が家の子みたいな感じです。」

    笹原未紅さん
    「恩返しというか、日ごろの感謝を伝えるのもそうですし、
     ここの環境で私達が楽しく生きてるということを、お見せ出来たらいいなと思います。」

    練習を重ねてきた太鼓の舞台。最高の舞台を、地元の人たちに届けます。

    イベントの最後を飾るのは、あの「鬼太鼓」。
    地元の人たちと一緒に舞台を作り上げます。

    笹原未紅さん
    「一日ずっとお祭りで、体力が限界でもそれでも鬼を打つ姿は、見ていて心打たれる。
     うまくできているかどうかではなくて、気持ちがこもってないと心まで届かないので、
     ここぞっていうときにとにかく力を出す。」

    笹原未紅さん
    「鼓童のメンバーとして世界中で太鼓を叩くのが夢です。(昔も今も)変わらないです。」


    取材が終わったとあと、車に乗って帰っていると、なぜか太鼓の音が…。
    振り向いたら車を追いかけてきてくれる研修生たちの姿が!

    地元の人たちはもちろん、関わる人たちを楽しませたいーーー
    そんな研修生たちの心意気に、感動しました。

    携帯電話もテレビもない研修生活の中で、調べものは辞書、家族とのやり取りも手紙。
    ひとつひとつのことに時間はかかりますが、その分、自分と向き合うからこそ
    人の心に響く太鼓の音色が生まれるのだなと感じました。

    おじゃまさせていただいた研修所のみなさん、ありがとうございました!!

     

    ディレクター(牧陽子)のひとりごと
    いざ、佐渡へ!
    研修所は、1947年に建てられた旧岩首中学校。私達も、研修所に宿泊させて頂き、夜、
    練習場になっている体育館で震えながらも、研修生たちの太鼓の音を聞いて熱くなった。
    「ドンドドン!!!」 荒々しくて純朴ーー想像をはるかに超えてすごい!!

    次の日の朝、5時に起きて、研修生たちが起きるのを待ち構える。
    7キロのランニングは・・・とても追いつくことが出来ず、鼓童メンバーの男性に車を出して頂いて、ほっ。
    水平線からのぼる朝日、美しく大きな虹。トキにカマキリーー
    大自然に包まれて、心がほぐれていくのを感じることができた。
    携帯電話もテレビも、暖房もない中、ひたすらバチを振る若者たち。
    それでも、一緒に夢を追う仲間がいて、信頼できる指導者・先輩たちがいて、地元の人からの温かなエールも!
    佐渡で、技も心も磨きがかかり、人間味のある深い音を出すことが出来る様になるんだと納得。
    「大切なものは、目に見えない」という星の王子様の言葉を思い出してじんときた。

    なりたい自分になるには、“今”“ここで”出来る事を見極めて、粛々と努力を積み重ねるしかないと感じているが、
    目の前で実践している若者たちの姿は、本当に美しかった。
    将来、舞台で輝く研修生たちに、再び取材させて頂ける日が楽しみで仕方ない。

     

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